[完結]クミホの恋はつづくよ～天狗の恋は神さえ惑わす時～

第2章：結婚適性試験スタート！

27話：結婚試験、最終問題！

天狗界の神聖なる
試練の場——。

大天狗が静かに告げる。

「最後の試練だ。これは
“結婚試験”であり、
同時にお前たちの覚悟を
問う試練でもある」

くみほとくらまは、
厳かな空気の中で向かい
合った。

「俺たちの覚悟……？」

くらまが眉をひそめる。

「天狗と人間が共に生きる
には、相応の覚悟が必要だ。
だが、それを言葉で語る
だけでは意味がない」

大天狗の目が鋭く光る。

「お前たちは相手のために
“何か”を犠牲にできるか？」

⸻

試練の始まり

「犠牲……？」

くみほは思わずつぶやく。

「そうだ」

大天狗は厳かに告げた。

「くらま。お前には“自由”
を捨てる覚悟があるか？」

「……！」

くらまの目がわずかに
揺れる。

「お前は昔から自由を
愛する天狗だ。しかし、
婚姻とは契約。相手と
共に生きるということは、
無限の自由を捨てると
いうことだ」

「……」

くらまはゆっくりと
息を吐く。

「俺は……」

答えようとした瞬間、
大天狗は次にくみほへ
と目を向けた。

「そして、くみほ」

「……はい」

「お前は“人間であること”
を捨てる覚悟があるか？」

「……え？」

くみほの心臓が、
大きく跳ねた。

⸻

人間であることを捨てる？

「ど、どういうこと
ですか？」

「天狗と人間の婚姻には、
大きな問題がある。
お前は人間である限り、
くらまと同じ時間を
生きることはできない」

「……！」

「だが、もし——」

大天狗は意味深に
言葉を区切る。

「お前が“妖仙”として
覚醒すれば、この問題は
解決する」

「妖仙に……？」

くみほの脳裏に、
以前の会話がよぎる。

（私の中に、
何か“違うもの”
がある……？）

「お前が本当にくらまと
生きることを望むなら——
人間であることを捨て、
妖仙の道を歩むことも
できる」

⸻

それぞれの選択

くみほは拳を握り
しめる。

くらまと一緒にいたい。
そのためにできること
なら……

「……私は」

覚悟を決めかけた、
その瞬間——

「それだけはさせない」

くらまが遮った。

「え……？」

「お前が人間であること
を捨てるなんて、そんな
選択を俺は許さない」

くらまの瞳には、
強い意志が宿っていた。

「お前はお前のままで
いい。無理に妖仙になる
必要なんてない」

「でも、私は——」

「お前が犠牲を払う結婚
なんて、俺は望んで
ない！」

くらまの叫びに、
くみほの胸が痛くなる。

「くらま……」

「俺は、自由を捨てること
なんて惜しくもない。
でも、お前が自分自身を
捨てるのだけは嫌なんだ」

⸻

愛の形

しばしの沈黙の後、
くみほはゆっくりと
微笑んだ。

「……ありがとう、くらま」

その言葉に、くらまは
驚いたように瞬きをする。

「私は、くらまといるため
なら何でもできると思っ
てた。でも、それは
間違ってたのかもしれない」

「……？」

「“犠牲”じゃなくて、
“二人で一緒に生きる方法”
を考えたい」

「……！」

くらまの目が見開かれる。

「私が人間であることも、
くらまが自由を愛する
ことも、全部大事なこと。
その上で、一緒にいられる
方法を探したい」

くらまはその言葉を聞いて、
ふっと微笑んだ。

「お前らしいな」

「……うん！」

大天狗は二人の様子を
じっと見つめ——
やがて、静かに頷いた。

「合格だ」

⸻

試練の合格

「えっ？」

「試練の本質は、“犠牲”で
はなく“選択”だ」

大天狗の声が、穏やかな
響きを帯びる。

「自分を捨ててまで相手に
尽くすのは、愛とは言わぬ。
お前たちは“共に生きる道”
を選ぼうとした。
それこそが本当の答えだ」

「……！」

くみほとくらまは、
顔を見合わせて笑った。

「よくやった、くらま。
そして、くみほ」

大天狗の厳しい表情が、
わずかに緩む。

「しかし——
試練は終わりではないぞ」

「えっ？」

「次は、くらまと中天狗
の兄弟対決だ」

「ええええっ！？」

くみほが驚愕する中、
大天狗は静かに告げた。

「“天狗の次期当主”
として、くらまが本当に
ふさわしいか……
その答えを出す時だ」

•*¨*•.¸¸☆*･ﾟ•*¨*•.¸¸☆*･ﾟ•*¨*•.¸¸☆

お気に入り( ｡･ω･｡)ﾉ 凸ﾎﾟﾁｯ
お願いします。