[完結]クミホの恋はつづくよ~天狗の恋は神さえ惑わす時~

桃源 華

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第2章:結婚適性試験スタート!

26話:大天狗と三狐神様の密談

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舞台は天狗界の奥深く、
神々の領域——。

静寂に包まれた広間に、
重々しい空気が流れて
いた。

そこに対峙するのは、
天狗界を統べる大天狗と、
狐の神々である三狐神様。

この二柱が顔を合わせる
ことは、滅多にない。

つまり——
今、語られる話は、
それほど重要なもの
だということだ。



大天狗の懸念

「……さて、
本題に入るとしよう」

大天狗は鋭い目を光らせ
ながら、三狐神様を
見据えた。

「くらまが、
人間の娘を愛して
しまった」

「ふふっ、
それがどうしたの?」

三狐神様は頬杖をつき、
微笑んだ。

「妖仙の恋愛は自由で
しょう? 何をそんなに
深刻に考えているの」

「妖仙の恋愛は自由だ。
しかし、天狗と人間
では話が違う」

大天狗の声は低く、
威圧感を帯びている。

「そもそも、人間は
寿命が短すぎる。
くらまが彼女を選んだ
として、その先に待つ
のは悲劇だ」

「まぁ、それは確かに」

三狐神様はくすくすと
笑いながら、扇子で
口元を隠す。

「でも、それだけが
理由じゃないでしょう?」

「……」

大天狗は一瞬、
言葉を詰まらせた。

三狐神様はその沈黙を
見逃さなかった。

「あなたが本当に恐れて
いるのは、“彼女の正体”
ではなくて?」

「……」

大天狗の眉が僅かに
動く。

「気づいているんで
しょう? あの娘が、
ただの人間ではない
ことに」



くみほの秘密

「……確かに、あの娘に
は妙な気配を感じる」

大天狗は目を閉じ、
思案するように口を
開く。

「表向きは、ただの人間。
しかし、時折ふと見せる
仕草や勘の鋭さ……
それは、普通の人間には
ありえぬものだ」

「ふふ、さすがね」

三狐神様は満足げに
微笑んだ。

「あなたはまだ確信が
持てていないので
しょう? でも、私たち
は知っているわ」

「……何を知っている?」

「くみほは——
九尾の狐の血を
引いている」

大天狗の目がわずかに
見開かれる。

「まさか……」

「ええ、
確かに彼女自身は
知らないでしょう。
でも、彼女の魂には
九尾の力が眠って
いるの」

三狐神様の声は
どこか楽しげだった。

「くみほが“覚醒”すれば、
彼女はただの人間では
なくなる。妖仙の世界に
生きる存在になるのよ」



大天狗の決断

「ならば、
我々はどうすべきか」

大天狗の問いに、
三狐神様は意味深な
笑みを浮かべた。

「決まっているじゃない。
試してみましょう」

「……試す?」

「くらまとくみほ、
本当に互いを選ぶのか。
そして、くみほは
自分の運命を受け
入れるのか」

三狐神様は扇子を
パチンと閉じる。

「私たちが余計な手を
加える必要はないわ。
運命の糸は、もう絡まり
始めているのだから」

「……ふむ」

大天狗はしばし
黙考した後、ゆっくりと
頷いた。

「ならば、
最後の試練を課すとしよう」



次なる試練

「“結婚試験、最終問題”だ」

「ふふっ、面白くなりそうね」

三狐神様は愉快そうに微笑む。

「さて、くらまとくみほ、
どんな答えを出すのかしら?」

広間には、静かな期待と
不穏な空気が入り混じって
いた——。

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