[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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番外編

スイSP第1話:スイ、ただ静かに水をまく

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朝の村。陽の光がやわらかく
差し込むハーブ畑。

スイは無言でジョウロを持ち、
淡々と水やりをしていた。
小さな苗の一つひとつに、
まるで語りかけるように
丁寧に――。

「……水、あげた」

それだけ。
でも、不思議なことに、彼女
が水をあげた植物はどれも
青々と、嬉しそうに葉を
揺らす。

チャチャ(隣でごそごそ
草むしり):「ねぇスイ、
さっきミュリが畑の
真ん中でホットスパイス
爆弾とか言って変な香辛料
撒いてたけど……
大丈夫かな?」

スイ(筆談板に書く):
『知らない。爆発したら
消す。』

チャチャ:「相変わらず冷静~!
……って、あ、やっぱり煙上がっ
てるー!!」

畑の奥から、ドカンと音がした。

ミュリ(煙の中から登場):
「へ、へっくしょん!ちょっと、
唐辛子って燃えるの!?
知らなかったよぉ~!」

スイ:
「……水、かける」

(ざばーっ)

ミュリ:「うわぁっ!ずぶ濡れ
~!?って、ありがとうスイぃ
ぃ~!」

スイは無表情のまま、無言で
去る。
しっぽだけがふわりと揺れた。

🐈🐾 🐾 🐾

昼休み。木陰でスイとチャチャ
が並んで座っている。

チャチャ:「スイって、いつも
黙ってるけど、ほんとに優しい
よね~。
ミュリに怒ったこと、一回も
ないもん」

スイ(筆談板に書く):
『怒るより、水やる方が得意』

チャチャ:「……詩人かな?」

スイ(少しだけ口元がゆるむ)

チャチャ(ひそひそ声で):
「ところでさ、知ってる? 
レオンさんが“スイの水やりは
神がかってる”って言ってたん
だよ」

スイ:「……」

(灰猫耳がピクッと動き、
しっぽがすこしだけ持ち上が
る)

チャチャ:「おや、珍しく
動揺?」

スイ(筆談板に書く):
『……記録しないで』

ノア(後ろから現れ、ノート
を片手に):「もう記録した」

スイ:「……」

(しっぽが再びだらんと
下がる)

🐈🐾 🐾 🐾

その日の夕方。再び畑で
水やり。

スイはいつも通り、何も言わず、
静かに苗に水をあげていく。

「……水、あげた」

その声に、小さな芽がピンと
起き上がるように見えた。

畑の植物も、仲間たちも、
今日も元気。

言葉は少なくても、彼女の水
と気持ちは、ちゃんと届いて
いる。

それが、スイの日常。
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