[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第一章:異世界でもう一度、スローライフ

第3話料理禁止令、発令にゃ!

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「ミュリ……これは、いったい……何を作ったつもりなんだ?」

俺――レオンは、テーブルの上に置かれた、黒くてドロッとした何かを見つめていた。

ミュリは得意げに胸を張る(猫耳ピン!しっぽブンブン)。

「名付けて、特製・スパイシー・ハーブ入り肉じゃがもどき風グラタンにゃ!」

「どこからどこまでが肉じゃがで、どこからがグラタンなんだよ……!」

「そこはフィーリングにゃ!レオンも異世界長いんだから、そろそろ勘で生きるべきにゃ!」

「いや、俺はあくまで理屈派なんで……」

と、そのとき。

ボフン!

突然、グラタンもどきが湯気とともに小さな爆発を起こした。

「ぬおっ!? おい、発火したぞ!? 食い物が自爆すんなよ!!」

「えっ? おかしいにゃ。今回は火加減ちゃんとチャチャに頼んだのに……」

チャチャ:「わ、私!? べ、別にミュリが心配だったから付き合っただけだし!? でもその鍋、最後に勝手にミュリが“スパイスの粉全部入れたらおいしくなるはず!”とか言って……」

ミュリ:「うにゃっ!? 言っちゃダメにゃー!」

レオン:「……うん、わかった。今日から料理禁止だ」

「にゃにおう!?(何を!?)」

「君に料理を任せたら村が焦土になる可能性があるから、料理禁止令を発令する」

「にゃあああ~~~~~~ん!!しょ、しょぼ~ん……」

ミュリの猫耳がパタンと垂れ、しっぽもだら~んと下がった。

その姿に、思わず罪悪感が芽生えたが、ダメなものはダメだ。命の危険には代えられない。

🐈🐾 🐾 🐾

「でも……あたし、料理、がんばりたかったのにゃ……。パサージュの店でも、お客さんにスパイス料理出してみたかったにゃ……」

その日の夕方、しょんぼりとハーブ畑の隅っこで、ミュリがスコップ片手に雑草をいじっていた。

そこへ現れたのはスイ。

「……水、あげた」

「あ、スイ……あたし、料理禁止になったにゃ……。もうフライパン触っちゃダメらしいにゃ……」

「……正解」

「正解ってにゃんだーっ!! うぅ、スイのくせに辛辣っ!」

スイは一言だけ残し、ササッと筆談板を出して、こう書いた。

『料理は向き不向き。ミュリは……おしゃべり係。あと、走り回る係』

「なんか地味に傷つくにゃ……!」

そこへ、元気な声が響いた。

「ミュリ~! ちょっと来て~!」

振り返ると、ビビが泥だらけの顔で手を振っていた。

「雑草取り中にさ~、なんか、スパイスっぽいの踏んじゃって足つった~☆にゃはは~!」

「笑ってる場合じゃないにゃ!」

ミュリはすっかりしょげていた顔をシャキッとさせ、しっぽもブンッと復活。

「スパイス!? 何味!? 葉の形は? 茎の匂いは!? まさか……レオンの極秘ハーブかもしれないにゃ!」

「わからんけど! なんかピリピリする~☆」

「よーしっ、これはスパイスハンター・ミュリの出番にゃ! 料理はダメでもスパイス探しなら得意にゃ!」

ミュリは一気にテンションを上げ、ずだだだっ!とビビの元へ全速力で駆けていった。

チャチャ(畑の焚き火の前で):
「まったく……調理禁止されたってのに、ぜんぜん懲りてないわね……。でも、あの子が元気じゃないと、こっちも調子出ないのよね……べ、別に心配してるわけじゃないんだからっ!」

レオン(遠くから見守りながら):「……結局、禁止令なんて意味なかった気がするな」

ノア(草陰からそっと現れ):「レオン。ミュリの行動記録、今日も取れてます。『料理禁止令により逆に暴走』。興味深いです」

レオン:「観察対象扱いするなよ……」

🐈🐾 🐾 🐾

その夜。

「レオンー! 今日の晩ごはんはレオンが作るって言ったから、あたし、火はつけておいたにゃー!」

「うわっ!? 台所の壁焦げてるーっ!!」

「だ、大丈夫にゃ! ちゃんと火は消したにゃ!」

「ミュリ……君がいる限り、俺のスローライフはいつ始まるんだ……」

「それはレオン次第にゃっ☆」

レオンは頭を抱えた――が、どこか笑ってしまっていた。

ミュリがいれば、料理は地獄でも、毎日は飽きない。

そんなふうに思えてしまうのだった。
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