13 / 61
第一章:異世界でもう一度、スローライフ
第2話:レオン、再び台所で倒れる
しおりを挟む
「レオーン! 今日こそミュリの
リベンジにゃーっ!!」
朝から全力テンションの猫耳娘・
ミュリが、ハーブの籠をぶんぶん
振りながら突撃してきた。
レオンはまだ半分寝ぼけた状態で、
コーヒー片手にぐだっとソファに
座っていた。
「待て。まずは落ち着いて。
深呼吸してから話そう」
「落ち着いてる場合じゃないにゃ!
昨日の失敗は猫耳としての誇りが
許さないにゃ!」
「昨日のは“失敗”じゃなくて“料理に
よる暴力”だったからな……」
「今日は違うにゃ! ハーブも
フレッシュにゃ! 村の仲間たちと
育てたローズマリーとバジルと……
あとコレ!」
ミュリが鼻をぴくぴくさせながら
取り出したのは、明らかに毒々しい
紫色の草だった。
「……ミュリ、それはなんだ?」
「“ワイルド・メテオミント”にゃ!」
「名前の時点でヤバい匂いしかしねぇ!! なんでそんなもん育ててんだ!」
「香りが強烈でスパイスにぴったり
だって、隣村の猫耳ハーブマスター
が言ってたにゃ!」
「隣村の猫耳、それ多分“実験家”だぞ!? 人体に使うなって注意書き
見なかったのか!?」
「にゃふぅ……書いてあった気もする
けど、細かい字はミュリ読めない
にゃ」
「お前、ほんとに猫耳か!? お前
の危険センスはもはや虎耳レベル
だぞ!」
🐈🐾 🐾 🐾
ミュリは気にせず、フライパンに
油を引き始めた。
耳はぴーんと立ち、しっぽはご機嫌
にぶんぶん。
「今日の料理は“炎のスパイス・
オムレツ”にゃ! 特製ブレンドの
ハーブで、レオンを目覚めさせる
にゃ!」
「それすでに物騒な名前なんだけど。
俺は爆発じゃなくて、コーヒーで
目覚めたい派なんだよ……」
「にゃふふ、大丈夫にゃ! 火力も
調整済み、爆発の心配は――」
\ドカン!!!/
「……ゼロじゃなかったにゃ」
「どこが調整済みなんだぁぁぁ!!?」
煙の中から、すすだらけで笑うミュリ
が現れた。耳はちょっと焦げて、
しっぽがちりちりしている。
「こ、これは“想定内の軽微な爆破”
にゃ……」
「軽微って基準、地球と違うのか!? いや、俺が異世界に来てからずっと
そうか!」
🐈🐾 🐾 🐾
10分後。なんとかキッチンの火を
消し止めたレオンは、ぼろぼろの姿
で椅子に座り込んでいた。
「……また倒れるとこだった……
お前、俺を毎朝殺す気か……」
「レオン、生きててえらいにゃ」
「うるせぇ!! その“失敗を気合で
なかったことにするスタイル”やめろ!!」
「でも、今度は焦げてない部分も
あったにゃ!」
「焦げてないのが“貴重”ってどう
いうレベルの料理だよ!」
🐈🐾 🐾 🐾
しょぼんとしたミュリの耳がぺたん
と垂れ、しっぽが床にだらーんと
落ちた。
「……ミュリ、またレオンに迷惑かけ
ちゃったにゃ……」
「いや、まあ……気持ちはありがたい
よ。ほんとに。だけどさ……」
「お料理……向いてないのかなぁ……」
「……うん、正直、現時点では
"破壊神”の称号が一番しっくり
きてる」
「にゃーん……」
🐈🐾 🐾 🐾
しかし、ミュリはすぐに顔を上げ、
ぱちんと手を叩いた。
「でも、ミュリ諦めないにゃ!」
「早ぇなおい! 切り替えの速さ、
もう猫じゃないだろ」
「次は“ハーブで作る絶品プリン”
に挑戦するにゃ!」
「お前、爆発からデザートに行く
流れ、どこで習ったんだ!?
脳内調理学校か!?」
「それにゃ! ミュリの頭の中に、
にゃんこ料理学校があるにゃ!」
「……俺、今度そこに保健所送るわ」
🐈🐾 🐾 🐾
それでも、ミュリは笑っていた。
その笑顔に、レオンはため息を
つきながらも、つい口元を緩める。
「……まあ、少しずつ慣れていけば
いいよ。お前にはスパイスの知識
があるんだし」
「ほんとにゃ!? レオン、そう
思ってくれるにゃ!?」
「ただし、“料理に使える”スパイス
だけな。呪い草はNGな」
「にゃふん、了解にゃ!」
しっぽをぶんぶん、耳をぴーんと
立てて、ミュリは嬉しそうに台所
を片付け始めた。
その動きが、なぜか皿を一枚割る。
「おい! 今度は後片付けで事件
起こすな!」
「にゃふ~ん☆」
🐈🐾 🐾 🐾
レオンのスローライフは、やはり
スローではない。
だが――笑顔の絶えない毎日という
意味では、理想の生活とも言える
のかもしれない。
胃薬を握りしめながら、レオンは
次の朝食への恐怖とともに、今日
の無事に感謝した。
「……明日は頼むから、せめて胃に
優しいやつで……」
「任せるにゃ! 明日は“黒曜石
プリン”にゃ!」
「名前からしてもう胃が溶けそう
なんだよぉぉぉ!!」
•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚
★お気に入り
( 。・ω・。)ノ 凸ポチッ
お願いします。
リベンジにゃーっ!!」
朝から全力テンションの猫耳娘・
ミュリが、ハーブの籠をぶんぶん
振りながら突撃してきた。
レオンはまだ半分寝ぼけた状態で、
コーヒー片手にぐだっとソファに
座っていた。
「待て。まずは落ち着いて。
深呼吸してから話そう」
「落ち着いてる場合じゃないにゃ!
昨日の失敗は猫耳としての誇りが
許さないにゃ!」
「昨日のは“失敗”じゃなくて“料理に
よる暴力”だったからな……」
「今日は違うにゃ! ハーブも
フレッシュにゃ! 村の仲間たちと
育てたローズマリーとバジルと……
あとコレ!」
ミュリが鼻をぴくぴくさせながら
取り出したのは、明らかに毒々しい
紫色の草だった。
「……ミュリ、それはなんだ?」
「“ワイルド・メテオミント”にゃ!」
「名前の時点でヤバい匂いしかしねぇ!! なんでそんなもん育ててんだ!」
「香りが強烈でスパイスにぴったり
だって、隣村の猫耳ハーブマスター
が言ってたにゃ!」
「隣村の猫耳、それ多分“実験家”だぞ!? 人体に使うなって注意書き
見なかったのか!?」
「にゃふぅ……書いてあった気もする
けど、細かい字はミュリ読めない
にゃ」
「お前、ほんとに猫耳か!? お前
の危険センスはもはや虎耳レベル
だぞ!」
🐈🐾 🐾 🐾
ミュリは気にせず、フライパンに
油を引き始めた。
耳はぴーんと立ち、しっぽはご機嫌
にぶんぶん。
「今日の料理は“炎のスパイス・
オムレツ”にゃ! 特製ブレンドの
ハーブで、レオンを目覚めさせる
にゃ!」
「それすでに物騒な名前なんだけど。
俺は爆発じゃなくて、コーヒーで
目覚めたい派なんだよ……」
「にゃふふ、大丈夫にゃ! 火力も
調整済み、爆発の心配は――」
\ドカン!!!/
「……ゼロじゃなかったにゃ」
「どこが調整済みなんだぁぁぁ!!?」
煙の中から、すすだらけで笑うミュリ
が現れた。耳はちょっと焦げて、
しっぽがちりちりしている。
「こ、これは“想定内の軽微な爆破”
にゃ……」
「軽微って基準、地球と違うのか!? いや、俺が異世界に来てからずっと
そうか!」
🐈🐾 🐾 🐾
10分後。なんとかキッチンの火を
消し止めたレオンは、ぼろぼろの姿
で椅子に座り込んでいた。
「……また倒れるとこだった……
お前、俺を毎朝殺す気か……」
「レオン、生きててえらいにゃ」
「うるせぇ!! その“失敗を気合で
なかったことにするスタイル”やめろ!!」
「でも、今度は焦げてない部分も
あったにゃ!」
「焦げてないのが“貴重”ってどう
いうレベルの料理だよ!」
🐈🐾 🐾 🐾
しょぼんとしたミュリの耳がぺたん
と垂れ、しっぽが床にだらーんと
落ちた。
「……ミュリ、またレオンに迷惑かけ
ちゃったにゃ……」
「いや、まあ……気持ちはありがたい
よ。ほんとに。だけどさ……」
「お料理……向いてないのかなぁ……」
「……うん、正直、現時点では
"破壊神”の称号が一番しっくり
きてる」
「にゃーん……」
🐈🐾 🐾 🐾
しかし、ミュリはすぐに顔を上げ、
ぱちんと手を叩いた。
「でも、ミュリ諦めないにゃ!」
「早ぇなおい! 切り替えの速さ、
もう猫じゃないだろ」
「次は“ハーブで作る絶品プリン”
に挑戦するにゃ!」
「お前、爆発からデザートに行く
流れ、どこで習ったんだ!?
脳内調理学校か!?」
「それにゃ! ミュリの頭の中に、
にゃんこ料理学校があるにゃ!」
「……俺、今度そこに保健所送るわ」
🐈🐾 🐾 🐾
それでも、ミュリは笑っていた。
その笑顔に、レオンはため息を
つきながらも、つい口元を緩める。
「……まあ、少しずつ慣れていけば
いいよ。お前にはスパイスの知識
があるんだし」
「ほんとにゃ!? レオン、そう
思ってくれるにゃ!?」
「ただし、“料理に使える”スパイス
だけな。呪い草はNGな」
「にゃふん、了解にゃ!」
しっぽをぶんぶん、耳をぴーんと
立てて、ミュリは嬉しそうに台所
を片付け始めた。
その動きが、なぜか皿を一枚割る。
「おい! 今度は後片付けで事件
起こすな!」
「にゃふ~ん☆」
🐈🐾 🐾 🐾
レオンのスローライフは、やはり
スローではない。
だが――笑顔の絶えない毎日という
意味では、理想の生活とも言える
のかもしれない。
胃薬を握りしめながら、レオンは
次の朝食への恐怖とともに、今日
の無事に感謝した。
「……明日は頼むから、せめて胃に
優しいやつで……」
「任せるにゃ! 明日は“黒曜石
プリン”にゃ!」
「名前からしてもう胃が溶けそう
なんだよぉぉぉ!!」
•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚
★お気に入り
( 。・ω・。)ノ 凸ポチッ
お願いします。
14
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
追放令嬢と【神の農地】スキル持ちの俺、辺境の痩せ地を世界一の穀倉地帯に変えたら、いつの間にか建国してました。
黒崎隼人
ファンタジー
日本の農学研究者だった俺は、過労死の末、剣と魔法の異世界へ転生した。貧しい農家の三男アキトとして目覚めた俺には、前世の知識と、触れた土地を瞬時に世界一肥沃にするチートスキル【神の農地】が与えられていた!
「この力があれば、家族を、この村を救える!」
俺が奇跡の作物を育て始めた矢先、村に一人の少女がやってくる。彼女は王太子に婚約破棄され、「悪役令嬢」の汚名を着せられて追放された公爵令嬢セレスティーナ。全てを失い、絶望の淵に立つ彼女だったが、その瞳にはまだ気高い光が宿っていた。
「俺が、この土地を生まれ変わらせてみせます。あなたと共に」
孤独な元・悪役令嬢と、最強スキルを持つ転生農民。
二人の出会いが、辺境の痩せた土地を黄金の穀倉地帯へと変え、やがて一つの国を産み落とす奇跡の物語。
優しくて壮大な、逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
追放勇者の土壌改良は万物進化の神スキル!女神に溺愛され悪役令嬢と最強国家を築く
黒崎隼人
ファンタジー
勇者として召喚されたリオンに与えられたのは、外れスキル【土壌改良】。役立たずの烙印を押され、王国から追放されてしまう。時を同じくして、根も葉もない罪で断罪された「悪役令嬢」イザベラもまた、全てを失った。
しかし、辺境の地で死にかけたリオンは知る。自身のスキルが、実は物質の構造を根源から組み替え、万物を進化させる神の御業【万物改良】であったことを!
石ころを最高純度の魔石に、ただのクワを伝説級の戦斧に、荒れ地を豊かな楽園に――。
これは、理不尽に全てを奪われた男が、同じ傷を持つ気高き元悪役令嬢と出会い、過保護な女神様に見守られながら、無自覚に世界を改良し、自分たちだけの理想郷を創り上げ、やがて世界を救うに至る、壮大な逆転成り上がりファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる