[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第一章:異世界でもう一度、スローライフ

第1話:猫耳少女と爆発する朝食

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「……なあ、朝から何が燃えて
るんだ?」

目を覚ましたレオンが最初に
感じたのは、柔らかい陽光でも、
鳥のさえずりでもなかった。
鼻をつく焦げ臭さ。そして、
どこかスパイシーで、妙に目が
痛くなる匂い。

「レオーン! ごはん、
できたにゃ~♪」

明らかに“なにかをやらかした
時”特有の明るすぎる声。
ドアの向こうから響いてくる。
レオンの顔が無表情に引きつった。

「……あいつ、また料理したのか」

重い腰を上げて扉を開けると、
そこには――

「おはよにゃ~♡ 
今日の朝ごはんは、特製・
ハーブ香るパンケーキにゃ♪」

猫耳をぴんと立て、にこにこ笑う猫耳
少女・ミュリが立っていた。
そしてその後ろでは、黒煙がもくもくと
立ち昇っている。

「おい。燃えてるぞ」

「え? えっ!? うにゃあああああっ!? 
ま、またにゃーっ!!」

慌てて台所へ走るミュリ。その尻尾がばさばさと大暴れしている。

「お前……パンケーキに火薬でも入れたか?」

「ち、違うにゃっ! ちょっと“魔力増幅粉”を入れただけにゃ……スパイスっぽい匂いだったから……」

「……料理に使うなっつったよな!? それは“ガチで魔法を暴走させる粉”だ!」

「にゃふぅ……」

バチンと音がして、猫耳がぺたんと下を向き、しっぽもだらんと下がった。

「せっかく……レオンに朝ごはん作ってあげようと思ったのに……」

「いや、ありがたいよ? 気持ちは。でもな、気持ちだけで胃が死ぬわけにはいかんのだ」

🐈🐾 🐾 🐾

レオンはため息をつきながら、鍋の残骸を確認した。もはやパンケーキというより炭化した何かだった。

「これ、どれくらいの時間焼いたんだ?」

「うにゃ……30分……?」

「それは焼くって言わない。炭にしてるの」

「でも! ほら、味見したらちょっとスパイシーでいけそうだったにゃ!」

「誰が味見したんだよ」

「……リューシャに押しつけたにゃ」

「あの子、昨日お腹痛いって言ってたのそれか……!」

🐈🐾 🐾 🐾

レオンは氷箱から卵と野菜を取り出しつつ、キッチンを引き継いだ。
ミュリはすぐ隣で、しょぼんとしたまましっぽを床にぺたーんとくっつけてうなだれている。

「……そんなに落ち込むなよ。もう慣れてるから」

「でも……レオン、ほんとはミュリの料理、食べてほしかったにゃ……」

「俺の胃袋が“爆散”する以外に未来が見えないのが問題なんだよな……」

🐈🐾 🐾 🐾

この世界に転生して早数年。
元・社畜のレオンは、いまでは山間の静かな村で、スローライフを満喫……できていない。
原因は――この猫耳スパイス娘・ミュリである。

もともと彼女は町でスパイス専門店を開いていた。
嗅覚と素材の知識は天才的、しかし料理センスが致命的という、天才的残念な猫耳。

しかも最近は、仲間の猫耳獣人たちまで呼び寄せ、村で一緒にハーブ栽培を始めた。
レオンの生活は、ますます“平穏”から遠ざかっていく一方である。

🐈🐾 🐾 🐾

「レオンって、ほんとすごいにゃ……卵を割っても爆発しないなんて……」

「普通は爆発しねぇよ」

「でも前にミュリ、卵焼き作ろうとして、なぜか氷魔法が発動したにゃ」

「それ魔力粉のせいだろ! スパイスと魔法道具を同じ棚に置くな!」

「にゃふん……また怒られたにゃ……」

ぺたんと耳が折れ、しっぽがだらーん。
完全に“反省した猫”状態だ。

だが、数秒後には――

「でも! 今日はもう一回挑戦したいにゃ!」

ぶんぶんっ!としっぽを振り回し、耳もぴーんと復活。

「やめろ! さっきので十分事件起きてるから! もう朝から一回“ドカン”って鳴ったぞ!」

「うにゃ~ん、ミュリの挑戦は止められないにゃ~!」

「俺の心臓は止まりかけなんだよ……!」

🐈🐾 🐾 🐾

そんなやりとりを続けながら、レオンはハーブ入りのスクランブルエッグと、焼きたてパン、ハーブ水の簡単な朝食を整えた。

「できたぞ。爆発しない、普通の朝ごはんだ」

「わ~い! レオンのごはん~♡」

ミュリは椅子に座ると、しっぽをふりふりさせながら、もぐもぐと幸せそうに食べ始める。
その姿は、まるで餌をもらった子猫のようだ。

「……うん、やっぱりレオンのごはんがいちばんだにゃ!」

「ありがとな。でも次は……材料を混ぜる前に俺に相談しろよ?」

「にゃふふ、うん! でもミュリ、次は“香る火炎ハーブトースト”作る予定にゃ!」

「名前からしてダメ!!火炎って何だ火炎って!」

🐈🐾 🐾 🐾

山の朝は静かだ。
鳥のさえずり、木々のそよ風、そして……ときどき爆発音。

レオンのスローライフは、今日も猫耳少女のしっぽと一緒に、ぶんぶん振り回されながら始まる――。

•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚

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