[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第一章:異世界でもう一度、スローライフ

第5話スパイスの魔女、村に現る

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「レオン! レオン! 一大事にゃ!!」

朝食のベーコンを裏返していた俺の腕に、猫耳がぶつかった。

「おわっ!? ミュリ、フライパンに
顔突っ込むな!」

「それどころじゃないにゃ! 村の広場に、謎の女が現れたにゃ!」

「……はあ?」

🐈🐾 🐾 🐾

村の広場に行ってみると、
確かに“謎の女”がいた。

黒いローブに、赤紫のターバン。
腰には瓶詰めの香辛料がガチャガチャ。何より――

「香りがすごい……! 鼻がカレーに
支配されそうだ……!」

ミュリがクンクン鼻を動かしながら、
うっとりしていた。

「この香り……シナモン、クミン、
スターアニス……間違いない、
ただ者じゃないにゃ!」

女は堂々と名乗りを上げた。

「わたしの名はサリマ。
東の砂漠で“スパイスの魔女”
と呼ばれている者です」

「魔女って名乗った!?」

「ふふ……この村に、スパイスの香り
が漂っていたのよ。面白い気配を感じて、来てみたの」

ミュリの目がキラーンと輝く。

「まさか……あたしのスパイス専門店、
パサージュ支店の噂が異世界まで
届いたにゃ!?」

「それ、異世界の話だって忘れてるぞ」

ノアが後ろから現れ、冷静に分析する。

「サンプル調査によれば、この人物
の持つ香辛料は94%が未確認素材。
これは……刺激的すぎる」

「ひぃ、ひぃぃぃ……鼻がムズムズ
してきたにゃ……っ!」

チャチャがくしゃみを連発しながら
登場した。

「べ、別にあんたのスパイスになんて
興味ないんだからっ! む、むせてる
だけよっ!」

「じゃあ、さっさと帰れば?」

「うっ……ぐぬぬぬ……!」

レオン(俺)は、少しだけ遠巻きで
眺めていた。いや、香りが強すぎて
近づけないのだ。

「おいミュリ、この人、危険人物
じゃないよな?」

「むしろチャンスにゃ! スパイス界
の巨匠と出会えるなんて、まさに運命!」

「お前の運命、胃腸にダメージ負わせ
てこないか心配なんだが……」

🐈🐾 🐾 🐾

案の定、事態は加速した。

「レオン、今日の昼食はスパイス魔女
の魔法鍋にゃ!」

「おい、鍋が紫色してるんだが!? 
大丈夫なのかこれ!?」

「『体が燃えるような活力が湧く
わよ』ってサリマさんが言ってた
にゃ!」

ノアが横からメモを片手に言う。

「成分のほとんどが未分析。非常に
興味深い。副作用も調べたい」

「副作用!?」

ビビが泥まみれでスライディングして
きた。

「わーい☆ 食べるー! スパイスって
なんかテンション上がるよねー!」

「お前はいつもテンション上がってる
だろ!」

スイは黙って鍋の匂いを嗅ぎ、ボソリ
と一言。

「……熱い。水、かける?」

「やめて! 魔女が怒るから!」

チャチャが魔女に詰め寄る。

「ちょ、ちょっと! これはどう見て
もヤバいやつじゃないの!? あたし
が止めるしか――」

「ハーブ・フレア!!」

「だからその必殺技やめろ! 
何度も畑が焦げてるんだ!」

「わ、わたしのせいじゃないもんっ! 火が勝手にっ!」

鍋の中から、ぼこっ、と何かが
浮かび上がる。

「今の、動かなかったか……?」

🐈🐾 🐾 🐾

結果――村人たちは全員、
魔女鍋の“香りだけ”で満腹になった。
誰も口にしなかった。

「ふふ、どうやらまだこの村の胃腸
には早すぎたようね」

魔女は一人、満足げに香辛料を
片付けていた。

ミュリはと言えば、目をキラキラ
させながら魔女のレシピを写経中。

「レオン、あたし、もっとスパイス
の奥深さを学ぶにゃ! 世界を味で
変えるにゃ!」

「待て、村をまず守ってからにして
くれ」

ノア:「ふむ、“村のスパイス防衛
対策マニュアル”の編纂が必要か……」

チャチャ:「ちょ、ちょっと!? 
みんな真面目に考えすぎじゃ
ない!?」

スイ:「……辛いの、苦手」

ビビ:「スパイス風呂って作れない
の? 楽しそうじゃない!?」

レオン:「……誰か止めてくれ」

こうして村に、新たなスパイス
ブームが巻き起こるのであった――
(危険度MAXで)。
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