[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第一章:異世界でもう一度、スローライフ

第6話 開店準備で畑が大騒ぎ!

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「みんなーっ! いよいよ村のスパイス直売所、開店にゃーっ!」

朝っぱらからテンションMAXな声が畑に響いた。もちろん、叫んでいるのは我が家の居候、猫耳娘のミュリだ。

「お、おい、ちょっと待て。開店準備って……もう畑ぐちゃぐちゃだぞ……?」

俺、レオンは今日も畑の見回り。だが、目に入ってきたのは――

「ビビーッ! それ雑草じゃなくて、
大事なミントだっ!!」

「えっ? マジ!? でも草っぽいよ
これ!? いや、むしろ雑草がミント
に擬態してたのでは!?(真顔)」

「するか!」

テンション高めのベンガル猫耳・ビビが、謎理論でミントの束を抱えて爆走
していた。すでに泥だらけである。

「……水、あげた」

灰猫耳で無口なスイは、黙々と苗に
水やり。とても平和そう……だが、
彼女が水をあげた瞬間、しなびていた
苗がシャキーンと元気になる。もはや
謎の魔法だ。

「スイ、いつ見てもその水やり、
反則だよな……」

「……ふふ(無言で満足げにうなずく)」

一方、ツンデレ黒猫耳のチャチャは、
鍋を手に火加減調整の真っ最中。

「ほら! 火が強すぎたら香りが
飛ぶでしょ! ミュリ、そこ
どきなさいっ!」

「ええ~~? もうちょっと焦がした方が香ばしくなるにゃよ~~?」

「香ばしいじゃなくて、焦げ
てるの!!」

「チャチャちゃん、今日もツンツン
だけど優しいにゃ~。すぐ怒る
とこもかわいいにゃ~♪」

「だ、誰がかわい……ちょっ、
レオンっ! 今の聞いてたら
消しなさいよ!!」

「いやいや、録音機なんてねえよ」

「記録しておいた」

ノアだ。白猫耳+メガネ、
冷静沈着なハーブ調合オタクが
メモ帳片手に現れる。

「“ツンデレに対する称賛の反応:
発火傾向高し”。これは重要な
観察データだ」

「メモるなーーっ!!」

🐈🐾 🐾 🐾

そんな調子で村の畑は、ただの準備
で大混乱だ。

「ミュリ、このペースで開店間に合う
のか?」

「ふふふ、甘いにゃ、レオン。すでに看板は完成してるにゃ!」

得意げに掲げたのは、手作りの
木製看板。その名も――

「『スパイスの館 ミュリ亭』!!」

「うーん、ネーミングがちょっと
ファンタジー過ぎやしないか?」

「“館”の方が高級感あるにゃ!」

「“亭”がついてて高級感あるか
微妙だけどな……」

ノアが眼鏡をクイッと上げる。

「ちなみに“館”と“亭”を併記する
ネーミングは、意味が競合して
マーケティング的に非効率です」

「ノア~っ! 今のちょっと言い方が怖いにゃっ!」

「記録しておいた」

「やめるにゃっ!!」

🐈🐾 🐾 🐾

お昼すぎ、ようやくテントが立ち、
畑で採れたハーブやスパイスが
並びはじめた。

チャチャは火加減を見ながらスパイス
ティーを淹れ、スイは静かに試飲者に
水を手渡し、ビビはとりあえず店の前
で踊っている(なぜ?)。

「ふぅ……やっと形になってきたな」

「レオン! 店の看板掲げるときは、
やっぱりあたしがいちばん目立つ
ところで――」

バタッ。

「……ミュリ、どうして看板で後頭部
打って倒れてるんだ?」

「うにゃ~~、不意打ちにゃ……
星が見えたにゃ……」

「おまえ、テンションだけで開店
しようとしてないか?」

🐈🐾 🐾 🐾

午後、開店と同時に――

「おおーっ、ええ香りじゃ!」
「こ、これは鼻腔が爆発するような
刺激ッ……!」

村の人々が興味津々で立ち寄って
くれた。予想以上の反応だった。

「ビビ特製の“ごちゃ混ぜハーブ塩”
いかがですかーっ☆」

「それはやめろ、間違って雑草も
入ってるっ!!」

「ぎゃーん☆ やっちまったーーっ!!」

「おいノア、止めろ止めろ、今爆発音しなかったか!?」

「“新作スパイスの副作用:嗅覚が
一時的に強化され、逆にくしゃみが
止まらなくなる”。記録しておいた」

「まじで!? それ売っちゃダメな
やつだよな!?」

「レオンーっ、あたしの特製スパイス
カレー、味見してにゃ!」

「え? またお前が作ったの……!? 
おれ、前回それで三日寝込んだ
記憶が……」

「今回はチャチャが火加減したから
大丈夫にゃ!」

「そんなに信用できる情報かっ!」

「だ、大丈夫よ! ハーブ・フレアは
使ってないからっ!」

「さっき煙上がってなかったか!?」

🐈🐾 🐾 🐾

結局、初日はトラブル満載だったが、
村の人々からの評判は上々。なにより、ミュリたちが笑顔で働いてるのが何
よりの収穫だった。

「レオン、ありがとにゃ! おかげで
楽しく開店できたにゃ~!」

「お前が暴走しなきゃ、もっと楽
だったんだけどな……」

「でもでも、こうやって村の人たちが
喜んでくれるの、うれしいにゃ♪」

「……ま、悪くなかったよ」

スイ:「……水、あげた」

チャチャ:「次はあたしが看板描く
からっ! もっとセンスあるやつに
するのよ!」

ノア:「“初日売上報告:統計的には
成功。ただし倫理的課題あり”。
記録しておいた」

ビビ:「開店祝いにスパイス風呂☆ 
どろんこもつけ放題だよーっ!」

レオン:「だれか……この子らを
止めてくれ……!」

かくして、「スパイスの館 ミュリ亭」
波乱の開店となった――!

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