[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第二章:猫耳チームとハーブ革命

第12話魔法のスパイスか、呪いの粉か

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「レオン~っ! たいへんにゃ~!」

朝の畑に、ミュリの叫び声が響いた。

「今度は何だ、畑が爆発したか?」

「ちがうの! 怪しい粉が届いたにゃ! しかも黒い瓶に入ってるにゃ! ラベルには“ひとふりで運命が変わる”って書いてあったにゃ!」

「それ、ただのキャッチコピーだろ……」

レオンは額に手を当て、ため息をついた。最近、ミュリが“特別ルート”で取り寄せたスパイスが、ことごとく問題を起こしていたのだ。先週は、“千年バジル”と書かれた葉っぱが、鍋に入れた瞬間に怪しく光り、食べた村人全員が三日三晩、妙にポエムっぽい言葉しか喋れなくなった。

「……で、また仕入れたのか?」

「今回は大丈夫にゃ! たぶん……いや、ちょっとだけ不安だけど……たぶん!」

ミュリの猫耳が不安定にピクピクしている。しっぽもだらんと垂れていて、完全に“自信ゼロ”のサインだった。

「まあ、見るだけならな……どれどれ」

レオンは瓶を手に取った。確かに黒い。中の粉も、なんというか“禍々しい”。ただ、香りは――妙に芳醇で、スモーキー。鼻を近づけた瞬間、記憶の奥に封印された“バーベキュー失敗事件”がよみがえる。

「これは……危ない。絶対に料理に使っちゃいけないやつだ」

「にゃ! そんな! せっかく高かったのに!」

「いくらだった?」

「ししし、しっぽ3本分の価値にゃ!」

「お前、物々交換でスパイス買ってんのか……?」

「パサージュの闇市で、すっごく怪しいおばあちゃんからにゃ!」

「絶対ヤバいやつじゃねえか!」

そのとき、どこからか現れたノアが、無言で瓶を奪って顕微鏡のような装置を取り出した。

「これは記録しておく……化学式に矛盾がある。恐らく未認可の魔法性香辛料だな」

「未認可って……認可制度あったのか?」

「私が勝手に作った。猫耳スパイス安全基準第一条。怪しい粉はまず燃やす」

「燃やす前提!?」

ミュリは瓶を抱え込むようにして叫んだ。

「燃やしちゃダメにゃ! これが“魔法のスパイス”だったらどうするにゃ!? 一振りで料理がレベルアップするとか、食べたら元気100倍とか!」

「食べたら猫耳が3本に増えるかもしれんぞ」

「にゃあああ!? それは困るにゃああ!」

ミュリのしっぽがぶわっと広がった。明らかにパニック状態である。

そこへリンがやってきた。ツンとした表情で腕を組み、鋭く瓶を睨む。

「ちょっと、それって爆発しないわよね? 前にミュリが使った“火炎カレー粉”で、うちの畑のハーブが蒸発したんだから!」

「ち、違うにゃ! あれは……うっかり火属性が強かっただけにゃ……!」

「『うっかり火属性』ってなんだよ……」

「ハーブ・フレア発動したわけじゃないの! たまたま偶然爆発しただけよっ!」

「十分アウトだな……」

と、その時。

ビビが泥だらけの姿で転がり込んできた。

「うっわ~、なんかいい匂い~! これ撒いたら雑草ぜ~んぶ消えるとかない? むしろ生える? いや、育つ? もうどっちでもいいっ!」

「それは“呪いの粉”の可能性もあるんだってば!」

スイがひょこっと現れ、じっと瓶を見つめると、短く一言。

「……水に溶ける」

「それは新情報!?」

ノアがメモを取り始める。

「これは記録しておく。“呪いの粉、
水で活性化”……実験開始だ」

「やめろーー! 村が消し飛ぶぅぅぅ!!」

レオンはついに瓶を奪い取ると、近くの地面に大きく穴を掘って埋めた。

「二度と掘り返すな! これにフタして“未確認スパイス埋蔵庫”って札立てとく!」

「えー! もったいないにゃ!」

「村を守るためだ。諦めろ。あと仕入れルート、今後は必ず俺に見せろ」

「うにゃ~……うう、しっぽがしょんぼりにゃ……」

ミュリの猫耳がぺたりと垂れ、しっぽも地面をすっていた。

レオンは、そんなミュリの頭をぽんと叩いて笑った。

「まあ……ちょっとだけなら、調査してみてもいい。もし安全なら、使ってみよう」

「ほんとにゃ!? やったにゃ~~!」

しっぽがぶんぶん振られ、耳もピンッと立ち上がる。

――だが、そのとき、畑の端で。

「……あれ、地面から湯気出てない?」

ビビの声に全員が振り返る。

そこには、スパイスを少しこぼした場所が。モクモクと立ち上る湯気の中、何かが蠢いていた。

「……なぁレオン、やっぱこれ埋めといたほうがよくない?」

「最初からそう言ってるだろ!!」

猫耳たちのスパイス冒険、今日も大波乱である――。
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