[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第三章:村祭りと屋台戦争

第28話スパイス爆弾 vs 甘味屋の看板娘

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「ミュリ! また爆発したにゃーっ!?」
「ち、違うにゃ! 今回は……ちょっとピリッとさせすぎただけ!」

村の市場を軽く騒がせたのは、例のごとく我が愛弟子・猫耳少女ミュリだった。

レオンは、ほうきで舞い上がったスパイスの粉を払いながら、ため息をついた。

「お前、どうやったらカレー風味の飴で火を噴けるんだ……」

「スパイスと甘味の融合にゃ! これぞ革新の味――って、レオン、そんな目で見ないでにゃ……しょぼん」

耳が折れ、しっぽが垂れ下がる。

「もう、これ以上村の屋台を爆破するわけにはいかない。出禁になるぞ、スパイス香房」

「うぐっ……にゃ、にゃんとかするにゃ!」

そんな矢先、村の通りをひときわ目立つ甘い香りが漂った。

「おぉ……この香り……!」

ふわりと香るバニラと黒糖。通りの先には、和風の甘味屋台が立っていた。看板には力強い文字で、

《甘味処・ひなた》

その前に立っていたのは、小柄でふんわりした雰囲気の少女――だが、その手際の良さと目の鋭さは、只者ではない。

「おいしい団子、できたてだよー! スパイスとか、意味わかんない味に飽きた人、集まれー!」

「にゃっ!? なんでそこでスパイスをディスるにゃ!?」

「……あれが、甘味屋の看板娘、ヒナタちゃんだよ。最近、村に出てきた新星らしい」

と、説明してくれたのは、なぜかいつも泥まみれのビビだった。

「甘味とスパイス……これは戦争にゃ」

「やめとけ、ミュリ」

「受けて立つにゃああああ!」

そして、始まってしまった。スパイス香房 vs 甘味処・ひなたの、“屋台バトル”が。

🐈🐾 🐾 🐾

「ようこそ、スパイス香房へにゃ! 本日限定、『甘くて辛くて、なんか後悔する飴』試食できます!」

「やばそうだよ、それ!」

「おいおい、また変な物作ってないだろうな……?」

一方、ヒナタの屋台では――

「こんにちはー。こちらは黒糖とバターを丁寧に練り込んだ“癒しのバターどら焼き”です。無添加で、心にも優しいんですよ~」

「お、おぉ……すごい人だかり……」

ミュリがしょぼんと耳を折り、しっぽをくたっとさせる。

「ミュリ、やっぱり今回は撤退したほうが……」

「にゃ……にゃんでスパイスじゃ勝てないにゃ!?」

そのとき、一人の老人がふらっとミュリの屋台へ。

「うむ、ちょっと珍しい味に挑戦してみるかのう」

「にゃ!? いらっしゃいませにゃっ!」

出されたのは、チリペッパーとハチミツを組み合わせた謎のキャンディ。

「ふむ……おおっ!? これはっ! 辛っ! あまっ! うっ……なんじゃこの複雑骨折みたいな味は!」

「どうにゃ!? クセになるでしょにゃ!?」

「いや、クセには……ならん……が、目が覚めた! わし、今日から健康に生きるぞ!」

「にゃっ!? 効果あったにゃ!」

🐈🐾 🐾 🐾

その様子を、甘味処のヒナタがじっと見ていた。

「……ふーん。あのスパイス娘、ちょっと面白いじゃん」

ミュリに向かって、すたすたと歩いてくる。

「ねえ、スパイス娘さん。アンタ、勝負しない?」

「勝負にゃ!? ってもうしてるようなもんじゃにゃい?」

「ううん、正式に。明日の“村長おやつ審査会”で、お互いの自信作を出すってことで」

「むらちょー!? それって、村で一番味にうるさいって有名な……」

「ふふふ、怖いの? ま、逃げてもいいけど?」

「の、望むところにゃああああ!」

燃えるミュリのしっぽがぶんぶん揺れる。

「レオン! これはもう、開発に取り掛かるしかないにゃ!」

「ちょっと待て、今から!? 明日だぞ!?」

🐈🐾 🐾 🐾

その夜、レオンの家。

「……で、なんで俺が徹夜で試作に付き合わされてるんだ」

「だってレオンがいないと、マジで爆弾できちゃうにゃ」

「……否定できないのがつらい」

ミュリは真剣な顔で、スパイスとジャムを混ぜ、時折試食してはしっぽをふるふるさせていた。

「この、レモングラスとバニラの組み合わせ……これはいけるにゃ。名付けて、“微笑みの爆弾キャンディ”!」

「いや、爆弾って名前つけるなって何度言えば……」

🐈🐾 🐾 🐾

そして翌日。

村長が審査会に登場。目の前には、ミュリの爆弾――じゃなくて“微笑みのキャンディ”と、ヒナタの“夢見草どら焼き”。

「む……ふむ……」

しばし無言で噛み締める村長。

「……うむ、どちらも甲乙つけがたい! よって、引き分けじゃ!」

「にゃーーーー!?」
「えぇーーっ!?」

二人の叫びが市場に響いた。

「ふ、ふふ……でも、食べてもらえたし、よかったにゃ……」

しょぼんとしながらも、嬉しそうに耳をピコっと立てるミュリ。

すると、ヒナタがぽんっとミュリの肩を叩いた。

「アンタ、面白いじゃん。また勝負しよっか?」

「にゃ! 次は負けないにゃ!」

しっぽをぶんぶん振って、ミュリは笑った。

その横で、レオンはどこか疲れたように言った。

「また胃が痛くなりそうな展開が始まるのか……」

今日も村は平和で、ちょっとスパイシーだった。

🐈🐾 🐾 🐾 🐈🐾 🐾 🐾
第2章 新キャラ 猫耳ハーブ団
ミュリの仲間達⬇️にゃ🐈‍⬛🎀
https://kakuyomu.jp/works/16818622173856934382/episodes/16818622177180128138
🐈🐾 🐾 🐾 🐈🐾 🐾 🐾
★ようこそ!気まぐれ異世界へ★
https://kakuyomu.jp/users/tougen_hana/news/16818622177742117726
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