[完結]おっさん、異世界でスローライフ はじめます 2 〜猫耳少女とふしぎな毎日~

桃源 華

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第三章:村祭りと屋台戦争

第29話猫耳たちの失敗屋台伝説

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「ミュリ~、この旗、上下逆じゃないか?」

「にゃっ!? えっ、うそっ、ほんと!? ……わっ、ホントだー!」

開村祭前日。村の広場では、猫耳娘たちがワタワタと屋台の設営に追われていた。主犯――いや、中心人物はもちろんミュリ。彼女が言い出した「猫耳屋台で村の名物を広めよう作戦」なるものに、スイ、ノア、チャチャ、リン、そしてビビまでもが巻き込まれているのだ。

「草のフリット屋台、準備オーケー! 草は友だちだけど食べてもOKってことで~!」

ビビが意味不明なことを叫びながら、泥まみれの格好でフリット鍋をかき回している。その隣では、チャチャが鼻をつまみながら揚げ音を睨んでいた。

「アンタ、また雑草とミント間違えてるわよ!」

「えっ、だって似てるじゃーん!」

「似てないわよ! ミントに土がこんなに付いてるわけないでしょ!」

そこへふらりと現れたのは、我らが元・社畜、現・異世界農民、レオンである。

「おーい、みんな、準備は進んでるか?」

「レオン、見て見て! 屋台、ぜーんぶ手作りだよっ! ワタシの設計図つき!」

「それで天井が逆になってんのか……」

レオンは頭を抱えた。天井どころか、スイが水を撒いたことで一部床がぬかるみ、リンの“ハーブ・フレア”が発動して看板が焦げ、ノアの調合したスパイスが風に乗って全体に降り注ぎ、謎のクシャミ祭りが勃発していた。

「は、はっくしゅん! こ、これは記録しておくべきかもしれん……」

ノアが涙目でメモ帳を開く姿は、もはやギャグだった。

「ミュリ、屋台で出す料理はもう決まってるのか?」

「もちろんにゃ! ジャガ芋と魔法スパイスの特製焼き!」

「おまえの“魔法スパイス”って、またノアの試作品を勝手に混ぜたやつだろ」

「うにゃ……ちょっとだけ混ぜた……でも美味しいってビビが!」

「うんうん! 口に入れると鼻から出る感じが最高だったよ!」

「それ完全に失敗じゃないか!」

リンがジト目でツッコミを入れながら、焦げたハーブをフーフーと冷ましている。

「ほら、コレよ。ハーブ・フレア改。火力は増したけど、ちょっとだけ隣の屋台も焦がしちゃったのよね……」

「“ちょっと”ってレベルか!? 見ろよ、スイが看板で消火中だぞ!」

スイは無言でホースのように水を撒き、看板に書かれた「ねこみみカフェ」を半分ほど消し去っていた。

「……水、あげた」

「違う、あれは“水やり”じゃない!!」

村人たちが次々と様子を見に来る中、屋台はドタバタの極致に達していた。

「ふむ、これは新しいエンタメ型屋台として記録に残しておくべきだな……」

「ノア、頼むから“爆発系スパイスの安全性”とか言ってる暇あったら屋台直して!」

その後、なんとか見た目だけは整え、開村祭当日を迎える。

「いらっしゃいにゃー! 特製スパイス焼き、できたてだよー!」

ミュリの威勢のいい声とともに、おそるおそる料理を手に取る村人たち。ひと口……ふた口……

「……これは……口の中でミントが爆発してる……?」

「鼻から抜ける土の香りが……あれ、雑草!?」

「なんだろう……妙にクセになる味だ……」

結果――なぜか行列ができた。

「えっ、ウソ!? 売れてるにゃ!? やったぁぁぁ!」

「逆に中毒者が出てる気がする……」

「これも計算のうちだ」

「違うだろ絶対……」

こうして、“猫耳たちの失敗屋台伝説”は、予想外の大成功(?)を収め、村に新たな伝説を残したのだった。
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