不吉な双子と呼ばれた妹ですが、巫女になって兄をざまぁします〜迷信を打ち破ったら、なぜか溺愛されました〜

第4章 裏切りと改心

第34話 領民の怒り、収まらず処断要求

アルトリウスの縄は解かれ、
彼は民の前にひざまずかされていた。
その横で、エリナが「奉仕による
償い」を提案した。
一時はざわめきに包まれた広場
だったが――。

「……甘い！」
怒声が一つ、群衆を突き抜けた。

「畑を踏み荒らしたのは誰だ！」
「重税で子を飢えさせたのは誰だ！」
「病に倒れる者を見捨てたのは、
領主その人だろう！」

領民たちは次々に叫び、鬱積した
怒りを吐き出していく。
その言葉は、アルトリウスの耳に
突き刺さった。
彼は唇を噛み、俯いたまま動かない。

「奉仕などで罪が消えるものか！」
「生かしておけば、また同じことを
する！」

ついに石が一つ、アルトリウスに
投げつけられた。
頬をかすめ、血がにじむ。
ざわりと群衆が動き、殺気が
広がった。

「処断を！　処刑を！」
「領主の首を刎ねよ！」

松明が揺れ、広場は炎のような
熱気に包まれる。
エリナは必死に声を張り上げた。

「やめてください！　確かに兄さま
は罪を犯しました。ですが――命を
奪うのは終わりではありません！」

しかしその訴えに、民の怒りは
収まらない。
ある老婆が震える声で叫んだ。

「わしの息子を返せ！　重税で飢え、
死んだ息子を！」

その慟哭に、群衆が再び沸き立つ。
エリナは兄の前に立ちはだかり、
両手を広げた。

「……ならば、私が神殿の名において
誓います。兄が罪を償わぬなら、
私が罰を受けます」

静まり返る広場。
その声は震えていたが、確かな
覚悟があった。

アルトリウスは顔を上げ、愕然と
妹を見つめる。
民の怒りは消えていない。
だが「妹を犠牲にしてまで領主を
処刑するのか」という逡巡が、
彼らの心に影を落とした。

それでも――炎のような怒号は、
まだ完全には消えていなかった。

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