[完結]不吉な双子と呼ばれた妹ですが、巫女になって兄をざまぁします〜迷信を打ち破ったら、なぜか溺愛されました〜

桃源 華

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第4章 裏切りと改心

第36話 アルトリウス、労働や施しを通じて民の声を知る

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早朝の畑に、場違いなほど
豪奢な衣をまとった男の姿があった。
領主アルトリウス――だがその手には
鍬が握られ、足元は泥に沈んでいる。

「くっ……これほど重いもの
だったのか……」

鍬を振るうたびに肩が悲鳴を上げる。
これまで彼の指先はペンと杯しか
持ったことがなかった。
だが、領民の冷たい視線が彼の
背を押す。

「領主様よぉ、振り下ろす場所が
違えとる!」
「根っこを抜かなきゃ作物は
育たんぞ!」

農夫たちは嘲り半分、指導半分で
声をかける。
アルトリウスは顔を真っ赤に
しながらも、歯を食いしばって
鍬を振り続けた。

  ☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

次の日は病人の家を回る日だった。
エリナの用意した薬を抱え、
領民一軒一軒を訪ねていく。

「領主様が、わざわざ……?」
「ええ、これからは私が直接
配る。……飲み方はこうだ」

ぎこちない手つきで瓶を渡す
アルトリウス。
戸惑う民の視線に、誇り高き
彼の胸は小さく疼いた。

「(私は今まで……民の顔を、
ろくに見たこともなかった)」

幼子に「ありがとう」と言われた
瞬間、彼の胸に重い何かが沈んだ。

  ☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

三日目は井戸の掃除。
縄を引き、底に溜まった泥を
掻き出す作業は想像以上に辛い。
額から流れる汗が目に入り、
手は水ぶくれで赤く腫れた。

「おい領主、手の皮が剥けとるぞ」
「……放っておけ。私は……
やり遂げねばならん」

悔しさと羞恥を飲み込みながら、
アルトリウスは手を止めなかった。

  ☆。.:*・ ♊️ ᯓ ⭐️

夜、蝋燭の灯りの下で、エリナ
が静かに声をかける。

「兄さま……民の声、聞こえましたか?」
「……ああ。聞きたくもないほどにな」

アルトリウスの手は傷だらけで
震えていた。
だがその瞳には、これまで見せた
ことのない陰りが宿っている。

「飢え、病、重税……私が何をして
きたか、ようやく骨身にしみた。
だが……遅すぎるのかもしれぬな」

その言葉に、エリナは小さく首
を振った。

「遅すぎるかどうかは、これから
の兄さま次第です」

領主の肩に、初めて「人の重さ」
がのしかかり始めていた。


♊️キャラクター紹介♥:.。
≡目次からどうぞ🗝
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