不吉な双子と呼ばれた妹ですが、巫女になって兄をざまぁします〜迷信を打ち破ったら、なぜか溺愛されました〜

第4章 裏切りと改心

第37話 かつての側近から暗殺未遂を受ける

夜半、領主館の回廊に冷たい風が
吹き込んでいた。
労働の疲れで眠れず、アルトリウス
はひとり歩いていた。
手には蝋燭の灯、心には重い沈黙。

そのとき――足音。
いつもなら背後に控えているはず
の従者の気配が、妙に鋭く耳を
打った。

「……誰だ？」

問いかけと同時に、闇から閃く刃。
反射的に身を捻ったアルトリウス
の頬を、冷たい鉄がかすめた。

「……っ！」

灯りが床に転がり、炎が揺らめく。
姿を現したのは、かつて彼を最も
近くで支えていた側近――グラディウス。

「お前……なぜだ」
「なぜ？　領主様こそよく
おっしゃる！」

憤怒の声が響く。
グラディウスの目は、かつての
忠義の色を失い、黒い怨嗟に
濁っていた。

「我らは忠義を尽くした。だが民
を苦しめ、家を滅ぼす道を選んだ
のは誰だ？
貴様だ、アルトリウス！」

「……私は、変わろうとしている！」
「遅い！　遅すぎる！」

刃が振り下ろされる。
必死に身を避けたアルトリウス
の腕に、鋭い痛みが走った。
血が飛び散り、白い壁に赤い線
が描かれる。

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その瞬間――。

「兄さま！」

駆けつけた声が闇を裂いた。
エリナが立ち、祈りを込めた
光の結界を張る。
刃が結界に弾かれ、火花のよう
に散った。

「妹よ……なぜここに」
「胸騒ぎがして……」

エリナの声は震えていた。
彼女は兄の前に立ちはだかり、
傷を負った腕を必死に押さえた。

「退け、エリナ！　お前が傷つく
必要はない！」
「いいえ。兄さまを狙う刃なら、
私が受けます」

その言葉に、アルトリウスの
胸が激しく揺れた。

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結界を突破できず、グラディウス
は憎悪を吐き捨てる。

「貴様ら双子は、国を呪う存在……
いずれ滅ぶのだ！」

そう叫ぶと、彼は影の中へと
姿を消した。

残されたのは、荒い息をつく
兄妹と、冷たく光る血の跡だけ
だった。

「……兄さま。これは始まりに
すぎません」
「わかっている。だが……私は、
もう逃げぬ」

アルトリウスは震える拳を握り、
初めて己の命を賭ける覚悟を
胸に刻んだ。

♊️キャラクター紹介♥:.｡
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