不吉な双子と呼ばれた妹ですが、巫女になって兄をざまぁします〜迷信を打ち破ったら、なぜか溺愛されました〜

桃源 華

文字の大きさ
57 / 57
🌙エピローグ番外編

記憶の花が咲くとき

しおりを挟む
春🌸
桜の花が、風に吹かれて
光のように舞っていた。
新学期の朝、
少女――江梨奈(えりな)は
校門の前で立ち止まる。
制服の胸元を握りしめ、
目を閉じる。
胸の奥に、名前のない“懐かしさ”
が疼いていた。

「行かなきゃ……」
小さくつぶやいて、一歩を踏み出す。

──その瞬間。
どこかで鐘の音が鳴った。
遠い、遠い時代の記憶を
呼び覚ますように。

角を曲がった先で、少年と
ぶつかる。
教科書が散らばり、二人は
同時に頭を下げた。

「ごめん!」
「いえ、私こそ……」

顔を上げた瞬間、時が止まる。
淡い金の瞳。
そして彼――新堂アルトの目にも、
驚きと痛みが走る。

「……君、江梨奈っていうの?」
「うん。どうして……知ってるの?」

彼は答えない。ただ、掌を胸に
当てて苦しそうに目を細める。
「夢で、見たんだ。君が泣いてた。
白い神殿で……俺を呼んでた」

江梨奈の心臓が跳ねた。
思わず唇が震える。
「それ……私も、見たの。
あなたが……“兄様”って呼ばれてた」

風が吹き、桜が二人の間に
舞い落ちる。
その瞬間、光の粒が舞い上がり、
世界が静止した。

『双子は災厄にあらず――絆こそ、
運命を越える鍵』

記憶の声が響く。
二人の魂が共鳴するように、
手が重なった。

アルトは微笑む。
「……ようやく、見つけた」
江梨奈は涙を浮かべながら、
静かに頷く。
「ええ。今度こそ、ずっと
一緒にいられる」

桜の花が、再び風に散る。
その光の中で、ふたりは歩き
出した。
過去の呪いも、悲しみも、
もうそこにはなかった。

――運命は、輪を描いて続く。
だが今度は、“祝福の輪”として。

♊️キャラクター紹介♥:.。
≡目次からどうぞ🗝
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

reva
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】動物と話せるだけの少女、森で建国して世界の中心になりました

なみゆき
ファンタジー
ミナ・クローバーは、王国で唯一の“動物使い”として王宮のペットたちを世話していたが、実は“動物語”を理解できる特異体質を持つ少女。その能力を隠しながら、動物たちと心を通わせていた。 ある日、王女の猫・ミルフィーの毒舌を誤訳されたことがきっかけで、ミナは「動物への不敬罪」で王都を追放される。失意の中、森へと向かったミナを待っていたのは、かつて助けた動物たちによる熱烈な歓迎だった。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

「影の薄い女」と嘲笑された私ですが、最強の聖騎士団長に見初められました

reva
恋愛
「君のような影の薄い女では、僕の妻に相応しくない」――そう言って、侯爵子息の婚約者は私を捨てた。選んだのは、華やかな公爵令嬢。居場所を失い旅立った私を救ってくれたのは、絶大な権力を持つ王国の聖騎士団長だった。 「あなたの心の傷ごと、私が抱きしめてあげましょう」 彼の隣で、私は新しい人生を歩み始める。そしてやがて、元婚約者の家は裏切りで没落。必死に復縁を求める彼に、私は告げる……。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――勇者パーティーの【鑑定士】リアムは、戦闘能力の低さを理由に、仲間と婚約者から無一文で追放された。全てを失い、流れ着いたのは寂れた辺境の村。そこで彼は自らのスキルの真価に気づく。物の情報を見るだけの【鑑定】は、実は万物の情報を書き換える神のスキル【神の万年筆】だったのだ! 「ただの石」を「最高品質のパン」に、「痩せた土地」を「豊穣な大地」に。奇跡の力で村を豊かにし、心優しい少女リーシャとの絆を育むリアム。やがて彼の村は一つの国家として世界に名を轟かせる。一方、リアムを失った勇者パーティーは転落の一途をたどっていた。今さら戻ってこいと泣きついても、もう遅い! 無能と蔑まれた青年が、世界を創り変える伝説の王となる、痛快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...