ニアリー・シンメトリー・ハート——お前の手だけだよ……こんなゾクゾクさせられるの……

街田あんぐる

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6. だって、でも、お前が触るから……。

1*

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 唇と唇が離れて、ぷは、と篠原が必死に息をつく。篠原の家の薄暗い玄関。篠原から求めたくせに、眉をへの字に下げて、甘く潤んだ瞳で遥二を見上げる。

「篠原……」

 遥二の好きな人。取引先のプロジェクトメンバーの一人。「中島と恋愛はしない」と言い切った男。

 篠原の目は「もっとちょうだい」とこの先を催促する。アルコールのせいでとろんと重いまぶた。

 欲しくてたまらない。靴を脱ぐのも惜しいくらいに。玄関で篠原の腰を抱き寄せて舌を深く深くねじ込みたい。
 でも、篠原は酔いが醒めたらきっと後悔する。今日の篠原はおかしかった。職場の人たちが心配するペースでお酒のグラスを空けた。

 ——朝起きて、篠原の「やっちまった」顔見るの、キツいな。

「しのはら」
「んー?」
「おれと恋愛しないんでしょ」
「うっ」
「恋愛カウントじゃないの? これ」
「だって、でも、中島が触るから……!」

 目を逸らして、欲望と理性の間でぐらぐらと揺れる篠原。正直、その表情がかわいくて仕方ない。

 そう、先に手を出したのは遥二。酔った篠原をほかの誰にも(特に、篠原の本命疑惑がある清水に)渡したくなくて、タクシーで送ると言ったのは遥二。

 後部座席に二人、欲しがるような篠原の視線が嬉しくてかわいくて、つるんとした髪の毛を撫でてから、頬を優しく包み込んだ。そこから雪崩れこむように篠原の家に押しかけて。
 でも、ここまで来て回れ右も、ないか。

「今日ずっとそういう目でおれの手、見てたんだ」
「……いや」
「篠原ってそんなエロいやつだったんだ」
「ちがう! 中島の手が……どうしても好きなんだよぉ~」
「ほんとにおれ限定なの」
「……? そうだよ」

 目を丸くして、ちょこんと小首をかしげる篠原は、小鳥のようにかわいい。こんなかわいい篠原だから、ほかの男に目をつけられていてもおかしくない……!!

「清水さんにも同じこと言ってない?」
「え? 清水先輩はそういうんじゃ、」

 おれだけの篠原ってことじゃん。遥二の心は昂って、篠原の頬に手を添えて熱いキスを何度も重ねる。唇を離して、とろけた目の篠原と見つめ合う。

「手のマッサージしてあげる」

 ぼっと火がついたように篠原の頬が赤くなって、期待を隠しきれない顔になる。かわいくて仕方ない。これは篠原のせいだから。

「んむっ」

 あとちょっとだけキスで焦らしてもいいよな。ツンツンしてる篠原が悪いんだから。腰をぐっと抱き寄せて、骨盤の上あたりをすりすりと優しく撫でる。舌は深く絡めて、かわいい人の口内を堪能する。

「ぷは」
「気持ちいい?」
「ん。手、触って……」

 ちら、と舌を覗かせながらのおねだり。遥二の脳は、マッサージなんてすっ飛ばしてベッドに連れ込む言い訳をなんとかひねり出そうと全速力で回転した。
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