ニアリー・シンメトリー・ハート——お前の手だけだよ……こんなゾクゾクさせられるの……

街田あんぐる

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7.舐めたい。きれい。

1**

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 小柄な篠原に覆い被さって、遥二は夢中で篠原の唇をむさぼる。篠原はもう欲情を隠さない熱っぽい顔で、遥二のキスの間に必死に息継ぎをする。

 コミカルな丸メガネを外した篠原の素顔は、遥二の予想外に大人っぽく、クールだ。その顔が熱情でぐしゃぐしゃに歪んでいるのが……そそる。
 腰をぐりぐりと押し付ける。篠原の腰がカクカクと浮く。

「えっち」
「中島の方がえっちだ」

 篠原の手が、遥二の黒いデニムのジッパーを下ろす。遥二は急かされるように篠原のワイシャツのボタンを外していく。

「なかじま」

 甘えた声で呼びながら、篠原は身体を起こして遥二にキスをねだった。お互いのボタンを外し合いながら、口の中を味わう。
 くらくらとした熱に二人の脳は支配されて、そこから逃げ出そうという考えも浮かばない。

 篠原を焦らしたくてじっとりと愛撫する。篠原はすべてに敏感に反応する。それで遥二の心には「それって誰に仕込まれたんだよ」という仄暗い独占欲の火が灯る。
 篠原には訊かない。きっと悲しい顔をするから。

 自分の前に篠原を抱いて、篠原の心を傷つけた男がいる。そのシルエットはぼんやりとして、遥二からは黒いかすみのような存在だ。だからもどかしい。相手が霞では怒りをぶつけることもできない。ただ許せない。

 だから篠原を、めちゃくちゃよくしてやりたい。

「舐めたい」

 全裸の篠原はベッドにぺたりと座って、同じく全裸で膝立ちの遥二の手を取った。

「きれい」

 うっとりと囁いてから、篠原は中指の先端にちゅ、とキスをする。それだけで遥二の脳にびりびりとした興奮の電流が走る。

 篠原の口が遥二の中指を包み込む。ざらついた舌で指の側面を、関節のシワを、爪と肉の間をなぞられて遥二は、はぁ、と熱っぽい息を漏らした。
 指舐められんの、ヤバい。新しい性癖の扉は、もう開いてしまったかもしれない。

「篠原、指いれていい?」
「うん」

 篠原は素直に枕に頭を乗せて、脚を開く。その素直さが遥二の心を揺さぶる。

 こんなところを、ほかの男に見せないでくれよ。こんなにエロいの、おれの前だけにしてくれよ……!

 身体を繋げると、二人はどちらからともなく抱きしめ合った。欲しい気持ちと終わりにしたくない気持ちでぐらついているのは、たぶん遥二だけでない。

あずさ
「……!」

 篠原がぱっと目を見開いた、そこには驚きと喜びの輝きが確かにきらきらに浮かんでいた。

「梓って呼んでいい?」
「うん……遥二」

 二人の視線が絡み合い、それから今までで一番熱く燃えるようなキスをした。

「今日で終わりじゃないでしょ?」

 ゆったりと腰を動かしながら遥二が聞く。
「う……ああ、いま、聞かれても、わかんない」
 梓の身体は、穏やかな刺激も敏感に拾う。梓はぐしゃぐしゃの顔で「わかんない」を繰り返す。
 言葉のプロに「わかんない」って言われると、語彙を失うくらいめちゃくちゃによくしてあげられてるみたいで興奮する。

「今日で終わりかもしれないなら、たくさんイっとこうか」
「……?」

 浅く突き上げて、梓の弱点をコツコツ苛める。

「んぅッ! うち、壁薄いからぁ……!」
「ここ好き?」
「あっ……ッ!! すき……」

 梓に構わず遥二はぐりぐりと押しつぶすように腰をひねる。梓は身悶えしながら遥二の左手を取って、自分の頬に当てさせた。

「おれの手そんなに好きなの?」
「すきなんだよぉ……」

 どんなに梓から「すき」を引き出そうとしても、「遥二がすき」とは言ってくれない。
 梓の「すき」を聞くたびに、遥二の胸を愛しさと切なさの両方が貫く。

 片手を頬に当てたまま右手で身体を支えて、深いピストンに切り替える。
 梓が「あ、あ、あ」と堪え切れない声を上げて、一度目の絶頂をする。

「イけたな。イくの好き?」
「……すき」

 涙で潤んだ目が遥二を見上げて、荒い呼吸を整えながら言われる。遥二の胸がときめく。
 でもこの「すき」は、おれに対してじゃない。
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