MEAL GAME -ミール ゲーム-

双守桔梗

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第二章 ゲリラゲーム

第14話 不協和音

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おとなしさんとしゅうさん、ワタシと手を組んでくれないかしら? 愁詞さんが……ワタシの事を憎んでいるのは分かってる。それでも、今だけは一緒に戦ってほしい。この提案をここでしたのは、彼女にも協力してもらうためよ」

 雪が舞う目眩ましの中、三人が歩き続けた先にあったのは、いまだ眠り続けるおとが入った巨大な白いシャボン玉だった。その前に立ったは口を開き、リツとにそんな提案をした。なお、玲依冴の言った『彼女』とは当然、乙和の事だ。

「アタシは大歓迎っすけど……奈ノ禍サンはどうっすか……?」
 リツは隣でムスッとしている奈ノ禍の顔を覗き込み、ソワソワしながら尋ねる。

「……あーしも今だけなら別にいいよ。リッツーの助けになってくれそうなコを探してたとこだし……。ダケド、ホントにこのコは戦力になるワケ? そのシャボン玉って、ハポンバル三姉妹の末っ子のやつじゃん? 長女と次女ならともかく、サポート型の末っ子だけじゃ――」
「長女と次女もいるみたいよ」

 難色を示す奈ノ禍の言葉を遮って、玲依冴はシャボン玉の方を見てそう言った。彼女の声に反応するように、ハポンバル三姉妹は一瞬だけ姿を現してすぐに消えた。

「ふ、ふーん……ま、例え三姉妹が揃ってても、相棒が寝てるんじゃ意味ないっしょ。てか、なんでこのコはこんな時に寝てるワケ?」
「ワタシに聞かれても知らないわよ。偶然、見つけただけだもの」
「どこで?」
「運動場の真ん中に群がっていたテンシを倒したら、このシャボン玉が出てきたのよ」
「そうだったんだ~。助けてくれてありがと。お礼に何かするね? 何がいい?」

 不意にシャボン玉の中から声が聞こえ、三人は一斉にそっちを見る。すると、いつの間にか目を覚ましていた乙和が上体を起こし、まだ眠そうな顔で伸びをしていた。

「では、ワタシ達と一緒に戦ってくれませんか? ゲリラゲームの最中なのですが、まともに戦えそうな生徒はワタシ達くらいなので」
「いいよ~。でも、どうして戦える子があなた達だけなの? その抱っこしてる子はだれ? あなた達、中学生だよね? ここは中等部? 他の子達は? みんな死んじゃったの?」

 乙和の怒涛の質問攻めに、リツ達は押され気味になりながらも、一つ一つ順番に答えていく。

 最初は真剣に答えを聞いていた乙和だったが、徐々に首を傾げていき、仕舞いにはまた横になってしまった。

「なんか、それってズルだよね? 教室にいる子達は戦う気もないんでしょ?」
 乙和はゴロンと横になったまま、目だけリツに向けて問いかける。

「それは……その子達のほとんどがサポート向きの能力っすから……。もし、たくさんのテンシに囲まれでもしたら助からないかもと思って……。アタシがで待っててって言ったんす」
 リツは乙和の言葉に首を横に振ると、『ズルではない』事をはっきりと伝えた。

「ふ~ん……あなたがしてることは理解不能だなぁ。恐怖のテンシにすら、立ち向かえないような子達はどうせみんな、他のテンシに殺されちゃうのに。守ってあげるだけムダだよ?」
 乙和はゆっくり上体を起こすと、暗くて冷たい瞳でリツを見つめる。彼女の言葉と瞳に、リツは胸を締めつけられながらも口を開く。

「どうしてそんなこと言うんすか……? アタシはただ、誰にも死んでほしくないだけで……皆を守りたいって思うのは、そんなにダメなことなんすか?」
 リツは心底、悲しげな声で言葉を発しながらも、じっと乙和の顔を見つめる。

「あなた正義のヒーローみたいなことを言うんだね……。できもしない理想を口にして、大切な人達をそれに巻き込んで、最終的には死なせちゃうんだ? 他人は守るのに、大切な人達は自分の盾にして、見殺しにするんでしょ?」
 乙和は首を傾げて、無表情で淡々とリツを責め立てる。

「ちょいまち。黙ってきいてれば、リッツーのコトなんも知らないくせに、好き勝手言ってくれんじゃん。あーたにもいろいろあるんだろうけどさ、なんかそれをリッツーにぶつけてるっしょ? これ以上、あーしの相棒に八つ当たりすんのはやめてくんないかな?」
 乙和に気圧されて、リツは何も言い返せない。そんなを庇うように奈ノ禍は一歩、前に出て険しい顔で乙和に噛みつく。

 奈ノ禍の言葉に、乙和はきょとんとした顔をして、「八つ当たり……?」と呟く。

「八つ当たりなんてないよ? シニガミさんこそ、どうして契約者を止めないの? ほんとはあなただって、こんなのおかしいって思ってるんでしょ?」
「うっさいなぁ……ちょっと黙りなよ……」
 乙和に図星を突かれた奈ノ禍は、イラっとして思わず口調が少し荒くなってしまう。

「契約者に逆らえないの? 弱みでも握られてるの? かわいそう」
「ホントいい加減にしないと――」
「ちょぉと待った~! もうやめやめ! 今はケンカしてる場合やないやろ! 流石に黙ってらへんくなって口出ししてもうたわ!」

 奈ノ禍と乙和の言い争いを遮ったのは、玲依冴が着ているだった。いつの間にかリツ達に背中を向けていた玲依冴は、「この羽織が、ワタシの相棒よ」とだけ言う。

「ボクは玲依冴の相方で、『セイレイ族』のゆきおり。玲依冴共々、よろしくお願いします!」
 之織は裾をはためかせ、中性的な声で丁寧に自己紹介をする。玲依冴以外がポカンとする中、之織は「あんな」とマイペースに話し始めた。

「シャボン玉のねぇチャンが言いたい事はよう分かる。『大切な人を第一に考えてあげて』って言いたいんやろ? けどな、あんな責めるような言い方しても、なーんも伝わらんで! それにボクはリツチャンの考え方が悪いとも思わん。皆を守りたいって想いも、リツチャンみたいな子もボクは好きやで? ま、各々価値観が違うんはしゃあない事やし、なんにしても今は言い争ってる場合やない。ここは一旦、休戦して、皆で手を取り合おうや。まぁボクだけ手やなくて袖やけどね! あ! 今、笑うとこやで!」

 之織はマシンガンの如く、誰かが言葉を挟む隙がない程、一人でひたすら喋ってから豪快に笑った。

 それにつられるように、リツも思わず口元が緩む。之織をよく知る奈ノ禍は、「は相変わらずだね」と苦笑いを浮かべた。乙和は途中で飽きたのか、ぼぅとしている。

「之織はこう言っているけど、皆はどうかしら?」
 玲依冴は三人の方を向くと、改めて各々に対して問いかける。

「アタシは元々、皆で協力出来たらって思ってるっすよ。今もその気持ちは変わらないっす!」
「あーしも、リッツーがそう言うなら別にいいよ」
「わたしは玲依冴ちゃんへのお礼ってことならいいよ?」
 元気を取り戻したリツは明るく、奈ノ禍は少し複雑そうに、乙和はのんびりと玲依冴の問いに答える。

「よっしゃ! そんじゃあ、気合い入れて今からテンシをしばきにいくでぇ!」
 三人の返事を聞いた之織は、質問した玲依冴の代わりに元気よくそう宣言する。

「之織、その前にこの子を教室に連れて行かないと……」
 玲依冴はずっと抱きかかえている女子生徒に視線を向けて之織にそう言った。その言葉に反応した乙和が、「わたしに任せて?」と言いながらシャボン玉を割って出てくる。

ちゃん」
 乙和が名前を呼ぶと、ベビーピンクの四角い空気砲が出現した。それを乙和が両手で叩くと、さっきまで彼女が入っていたものと同じシャボン玉が飛び出る。

「この中なら安全だよ?」
「ありがとうございます。でも、どうしてこの子のために?」
「え? この子じゃなくて、玲依冴ちゃんのためだよ?」
 乙和の行動はあくまで自分を助けてくれた玲依冴への恩返しであって、女子生徒にはなんの思い入れもないようだ。

 玲依冴は女子生徒をシャボン玉の中に入れた後、複数の雪の結晶やクナイ型の氷を纏うように周囲に出現させた。それと同時に、リツと奈ノ禍はクローバーを大鎌に変形させる。

 ワンテンポ遅れて乙和は空気砲を消し、「長女パララちゃん」と別の子の名前を呼ぶ。そうすると今度は、チェリーピンクのガトリングガンが乙和の手元に出現した。

 玲依冴が解除した目眩ましの雪が消えると、空を飛んでいる複数のテンシがリツ達の視界に入る。

 その次の瞬間、真っ先に動いたのは乙和だった。彼女は即座にガトリングガンから、大量のカラフルなシャボン玉を撃ち出す。それらがテンシ達に命中すると盛大に爆発し、その音は島全体に響いた。
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