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序章
2.遠縁の親戚【耳】
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兄の実虎斗は死者の声が聞こえ、妹の真菜花は幽霊の姿が見える。少し特殊な能力を持つ三留兄妹は両親と共に幸せに暮らしていた。両親が亡くなるまでは……。
夏休みのある日の夕暮れ時。大学三年生の実虎斗がバイトを終えて帰宅すると、家の前に見慣れぬ黒い車が止まっていた。
実虎斗が家の中に入ると玄関で両親が、着物姿の女とスーツを着た男と何やら話していた。
「……こんばんは」
「こんばんは」
「……」
どこか異様な雰囲気に実虎斗は戸惑いながらも来客者に挨拶した。すると、男の方はニコリと微笑んで挨拶を返すが、女は無言で実虎斗を押し退けて外へ出て行く。
その事に実虎斗が少しムッとすると、男が代わりに「すみません」と謝る。
「彼女は少々、機嫌が悪いようで……大変失礼しました」
男は一礼した後、目を細めて実虎斗を見下ろし、彼の頬へ手を伸ばす。綺麗な顔立ちをしているが、どこか不気味さもある男の行動に、実虎斗は思わず身構える。
「実虎斗にまで何かする気か!?」
男の手が実虎斗の頬に触れる前に、普段は穏やかな父親が大声を上げながら靴も履かずに框から下り、二人の間に入ってきた。実虎斗を守るように父親は両手を広げ、母親は手をぎゅっと握る。
「人聞きが悪いですね。私は何もしませんよ。今のところはね」
男は愉快そうに厭らしく笑い、玄関の扉を開ける。
実虎斗は男に対する何とも言えない不快感を覚えつつも、父親の後ろから顔を出す。
「また会いましょうね? 実虎斗くん?」
男は実虎斗の方を見てヒラヒラと手を振りながらそう言い、蛇のように縦に割れた舌を一瞬だけ出して三留家を後にした。
何となく嫌な予感がした実虎斗はさり気なく、右の耳朶と軟骨部分にある黒子に順番に触れる。
【……子、みおした家の人間に目をつけられて可哀想に……】
【あの男の好きなタイプっぽいもんねぇ……。あいつは好みの相手なら男も女も見境ないから……】
【娘さんも可哀想……普通に暮らしていただろに……ほうきにされるなんて……】
時折りノイズが交じった不気味な声で、三人の女性が何やら話している。
実虎斗にだけ聞こえるその不可解な内容に彼は首を傾げ、声のする方へ話しかけようとした。だが、その前に実虎斗は父親の手で両耳を塞がれてしまう。
「実虎斗、何も聞かなくていい。大丈夫。何もなかったから」
父親は眉毛を八の字に下げ、どこか困ったように少し笑う。
その表情を見た実虎斗は「分かった……」と素直に頷き、父親が手を離すと先程と同じように耳の黒子に触れる。
「あれ? 開いてる……? ただいま~……皆して玄関で何やってんスか……?」
その時、鍵を挿し抜きする音が聞こえたかと思えば、すぐに扉が開いて帰宅した真菜花がひょこっと顔を出した。高校一年生の真菜花は部活に行っていた為、白いセーラー服を着て、カメラの入ったバックを持っている。
真菜花は不思議そうな顔をして家の中に入ってくると、実虎斗達の方を向いたまま扉と鍵を閉めた。真菜花の色素が薄い瞳と目が合った実虎斗はどう答えるべきか悩んだ。
「おかえり。遠縁の親戚がやって来て……少し話していただけだよ」
「二人ともおかえり。真菜花も早く帰ってきた事だし、予定通り今から晩ご飯を食べに行きましょうか」
「そうだね。二人とも、準備しておいで」
両親は何かを誤魔化すように明るく振る舞っている。実虎斗にはそう見えて少し怪訝に思うが、何も聞かずに真菜花に続いて返事をした。
二階の自室に入ると実虎斗は、文机にカバンを置いてスマホと財布を取り出す。
「実虎斗にぃ……家の中に知らない幽霊が何人かいるッス……」
開けたままの扉を控え目にノックする音に実虎斗が反応して振り向くと、廊下から真菜花がそんな風に声をかけてきた。
「それって女の人……?」
実虎斗は真菜花に手招きしながら小声で問いかける。
「うん、女の人が多いッス」
真菜花も小声で答えながら、そっと実虎斗の部屋に入ってくる。
「多いって事は男の人もいる……?」
「うん。びしょ濡れだったり……血だらけの人ばかりで何だかイヤな予感がするんスけど……大丈夫ッスかね……? お父さんとお母さんも少し様子が変ッスし……」
明らかに不安そうな真菜花の顔を見て、実虎斗は少しだけどう答えるべきか考える。
「実はオレもさっき声が聞こえて……『可哀想』だとか言われた。父さんに『何も聞かなくていい』って言われたから、すぐオフにして大した話は聞けなかったけど……。その後、『大丈夫。何もなかったから』って言ってたし、心配する必要はないと思う」
真菜花に隠し事はしたくないけど、変に不安を煽りたくもなかった実虎斗は、笑顔で無難な言葉を返した。
その一週間後、「遠縁の親戚と話をつけてくる」と言って家を出た両親は、生きて帰ってこなかった。
実虎斗は真菜花と並んでソファに座り、他愛ない会話をしながら両親の帰りを待っていた。その途中で真菜花が突然、ずっと同じ所を見つめたまま固まってしまった為、実虎斗はまさか……と思いながら耳の黒子に触れる。
【……と……実虎斗、聞こえるか? 聞こえたら返事してくれ】
【真菜花、実虎斗……ごめんなさい……】
少し不気味さはあるが、聞き慣れた両親の声が耳に届いた瞬間、実虎斗は大きく目を見開いた。心臓がバクバクと速く大きく鳴り、自然と目に涙が溜まる。それでも消え入りそうな声で、「聞こえてる……」と返事をしながら大きく頷いた。
【実虎斗……すまない。父さん達はもう……だから真菜花を連れて逃げてくれ。石更島と弧八町とは逆方向へ。今日から五日後の朝まで。そうすれば、真菜花があの祭りに巻き込まれる事はない筈だ】
【いつ、あの人達が追ってくるか分からない。だから今すぐ、とにかく遠くへ逃げて。お願いだから早く……】
時折りノイズが交じる両親の声に、実虎斗は必死に耳を傾ける。
両親の話から察するに、あの遠縁の親戚達は明らかに真菜花を狙っている。だからとにかく、真菜花を遠くへ逃がさないと……。自分が妹を守らなければと、実虎斗はそう決意すると同時に、真菜花の手を握って「逃げよう」と伝えた。
「大丈夫、にぃちゃんが守るから」
実虎斗はグッと涙を堪え、ポロポロと泣く真菜花の頭を空いている方の手でそっと撫でながら無理に笑った。
その後、実虎斗は自室で必要最低限の物だけをカバンに詰め込み、真菜花より先に玄関へ向かう。
真菜花を待っている間、実虎斗は諸々の事をスマホで調べ、空きがあるビジネスホテルに電話する。それから真菜花が下りてくると、靴を履きながら両親が言っていた事と、ひとまず今晩の動きを簡単に伝えた。
【今日はもうゆっくり眠りなさい】
二人が無事、ホテルに着いてしばらくすると、父親のそんな言葉が実虎斗の耳に届く。
だが、実虎斗はあの親戚達がホテルへ襲撃しに来るかもしれないと考えて念の為、自分だけは起きていようと思った。真菜花に気を遣わせないよう、ベッドには横になり、寝るフリだけはして。けれども、客室の机の上に置かれていたペットボトルの水を飲み、ベッドに寝転ぶと直ぐに実虎斗は意識が遠のいてしまう。
そして目が覚めた時には、ホテルのどこにも真菜花の姿はなかった。
夏休みのある日の夕暮れ時。大学三年生の実虎斗がバイトを終えて帰宅すると、家の前に見慣れぬ黒い車が止まっていた。
実虎斗が家の中に入ると玄関で両親が、着物姿の女とスーツを着た男と何やら話していた。
「……こんばんは」
「こんばんは」
「……」
どこか異様な雰囲気に実虎斗は戸惑いながらも来客者に挨拶した。すると、男の方はニコリと微笑んで挨拶を返すが、女は無言で実虎斗を押し退けて外へ出て行く。
その事に実虎斗が少しムッとすると、男が代わりに「すみません」と謝る。
「彼女は少々、機嫌が悪いようで……大変失礼しました」
男は一礼した後、目を細めて実虎斗を見下ろし、彼の頬へ手を伸ばす。綺麗な顔立ちをしているが、どこか不気味さもある男の行動に、実虎斗は思わず身構える。
「実虎斗にまで何かする気か!?」
男の手が実虎斗の頬に触れる前に、普段は穏やかな父親が大声を上げながら靴も履かずに框から下り、二人の間に入ってきた。実虎斗を守るように父親は両手を広げ、母親は手をぎゅっと握る。
「人聞きが悪いですね。私は何もしませんよ。今のところはね」
男は愉快そうに厭らしく笑い、玄関の扉を開ける。
実虎斗は男に対する何とも言えない不快感を覚えつつも、父親の後ろから顔を出す。
「また会いましょうね? 実虎斗くん?」
男は実虎斗の方を見てヒラヒラと手を振りながらそう言い、蛇のように縦に割れた舌を一瞬だけ出して三留家を後にした。
何となく嫌な予感がした実虎斗はさり気なく、右の耳朶と軟骨部分にある黒子に順番に触れる。
【……子、みおした家の人間に目をつけられて可哀想に……】
【あの男の好きなタイプっぽいもんねぇ……。あいつは好みの相手なら男も女も見境ないから……】
【娘さんも可哀想……普通に暮らしていただろに……ほうきにされるなんて……】
時折りノイズが交じった不気味な声で、三人の女性が何やら話している。
実虎斗にだけ聞こえるその不可解な内容に彼は首を傾げ、声のする方へ話しかけようとした。だが、その前に実虎斗は父親の手で両耳を塞がれてしまう。
「実虎斗、何も聞かなくていい。大丈夫。何もなかったから」
父親は眉毛を八の字に下げ、どこか困ったように少し笑う。
その表情を見た実虎斗は「分かった……」と素直に頷き、父親が手を離すと先程と同じように耳の黒子に触れる。
「あれ? 開いてる……? ただいま~……皆して玄関で何やってんスか……?」
その時、鍵を挿し抜きする音が聞こえたかと思えば、すぐに扉が開いて帰宅した真菜花がひょこっと顔を出した。高校一年生の真菜花は部活に行っていた為、白いセーラー服を着て、カメラの入ったバックを持っている。
真菜花は不思議そうな顔をして家の中に入ってくると、実虎斗達の方を向いたまま扉と鍵を閉めた。真菜花の色素が薄い瞳と目が合った実虎斗はどう答えるべきか悩んだ。
「おかえり。遠縁の親戚がやって来て……少し話していただけだよ」
「二人ともおかえり。真菜花も早く帰ってきた事だし、予定通り今から晩ご飯を食べに行きましょうか」
「そうだね。二人とも、準備しておいで」
両親は何かを誤魔化すように明るく振る舞っている。実虎斗にはそう見えて少し怪訝に思うが、何も聞かずに真菜花に続いて返事をした。
二階の自室に入ると実虎斗は、文机にカバンを置いてスマホと財布を取り出す。
「実虎斗にぃ……家の中に知らない幽霊が何人かいるッス……」
開けたままの扉を控え目にノックする音に実虎斗が反応して振り向くと、廊下から真菜花がそんな風に声をかけてきた。
「それって女の人……?」
実虎斗は真菜花に手招きしながら小声で問いかける。
「うん、女の人が多いッス」
真菜花も小声で答えながら、そっと実虎斗の部屋に入ってくる。
「多いって事は男の人もいる……?」
「うん。びしょ濡れだったり……血だらけの人ばかりで何だかイヤな予感がするんスけど……大丈夫ッスかね……? お父さんとお母さんも少し様子が変ッスし……」
明らかに不安そうな真菜花の顔を見て、実虎斗は少しだけどう答えるべきか考える。
「実はオレもさっき声が聞こえて……『可哀想』だとか言われた。父さんに『何も聞かなくていい』って言われたから、すぐオフにして大した話は聞けなかったけど……。その後、『大丈夫。何もなかったから』って言ってたし、心配する必要はないと思う」
真菜花に隠し事はしたくないけど、変に不安を煽りたくもなかった実虎斗は、笑顔で無難な言葉を返した。
その一週間後、「遠縁の親戚と話をつけてくる」と言って家を出た両親は、生きて帰ってこなかった。
実虎斗は真菜花と並んでソファに座り、他愛ない会話をしながら両親の帰りを待っていた。その途中で真菜花が突然、ずっと同じ所を見つめたまま固まってしまった為、実虎斗はまさか……と思いながら耳の黒子に触れる。
【……と……実虎斗、聞こえるか? 聞こえたら返事してくれ】
【真菜花、実虎斗……ごめんなさい……】
少し不気味さはあるが、聞き慣れた両親の声が耳に届いた瞬間、実虎斗は大きく目を見開いた。心臓がバクバクと速く大きく鳴り、自然と目に涙が溜まる。それでも消え入りそうな声で、「聞こえてる……」と返事をしながら大きく頷いた。
【実虎斗……すまない。父さん達はもう……だから真菜花を連れて逃げてくれ。石更島と弧八町とは逆方向へ。今日から五日後の朝まで。そうすれば、真菜花があの祭りに巻き込まれる事はない筈だ】
【いつ、あの人達が追ってくるか分からない。だから今すぐ、とにかく遠くへ逃げて。お願いだから早く……】
時折りノイズが交じる両親の声に、実虎斗は必死に耳を傾ける。
両親の話から察するに、あの遠縁の親戚達は明らかに真菜花を狙っている。だからとにかく、真菜花を遠くへ逃がさないと……。自分が妹を守らなければと、実虎斗はそう決意すると同時に、真菜花の手を握って「逃げよう」と伝えた。
「大丈夫、にぃちゃんが守るから」
実虎斗はグッと涙を堪え、ポロポロと泣く真菜花の頭を空いている方の手でそっと撫でながら無理に笑った。
その後、実虎斗は自室で必要最低限の物だけをカバンに詰め込み、真菜花より先に玄関へ向かう。
真菜花を待っている間、実虎斗は諸々の事をスマホで調べ、空きがあるビジネスホテルに電話する。それから真菜花が下りてくると、靴を履きながら両親が言っていた事と、ひとまず今晩の動きを簡単に伝えた。
【今日はもうゆっくり眠りなさい】
二人が無事、ホテルに着いてしばらくすると、父親のそんな言葉が実虎斗の耳に届く。
だが、実虎斗はあの親戚達がホテルへ襲撃しに来るかもしれないと考えて念の為、自分だけは起きていようと思った。真菜花に気を遣わせないよう、ベッドには横になり、寝るフリだけはして。けれども、客室の机の上に置かれていたペットボトルの水を飲み、ベッドに寝転ぶと直ぐに実虎斗は意識が遠のいてしまう。
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