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第十四話「王国の女王候補として認められるリディア」
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アランザール王宮・謁見の間。
白を基調とした石造りの空間には、国を支える重鎮たちが居並んでいた。
その中で、リディア・エルグレインは静かに立っていた。
豪奢な装飾も、気取った笑みも必要ない。
彼女の存在そのものが、ひとつの“格式”としてそこにあった。
「リディア・エルグレイン嬢」
カイ王の声が、重たく響く。
「貴女はすでに、我が国の王妃候補としての任務を誠実に果たしてきた。
そして先日の晩餐会において、その才と器量を広く示したこと、諸侯・女官・近衛らからの報告により確認されている」
貴族たちの視線が、一斉にリディアへと注がれる。
その視線に、彼女は一歩も引くことなく、正面から向き合った。
「今ここにおいて、我が王命により、リディア・エルグレインを正式に“女王候補”として認定する。
王妃の座に最も近き者として、国の未来を共に歩むことを期待する」
――その瞬間、広間の奥から、ひとりの老貴族が立ち上がった。
「僭越ながら申し上げます、陛下。
王妃候補は過去にも多くおられましたが、“女王候補”と称されるには、政治への参画が前提と存じます。
……貴女は、王妃としてではなく、“国政に関わる覚悟”をお持ちですか?」
厳しい口調に、場が一瞬緊張する。
だが、リディアはゆっくりと息を吸い、まっすぐに言葉を返した。
「はい、覚悟はあります。
私は、ただ王の隣に立つ装飾品としてではなく、王と共に歩む“伴侶”でありたい。
この国に仕える意思があるからこそ、私はアランザールへ来たのです」
その言葉に、広間の空気が変わった。
何かを試していたような視線が、確かな評価へと変わっていくのが、肌で分かる。
――後日、王宮の中庭にて。
春を思わせる陽の光が差し込むなか、リディアは小さな文机に向かっていた。
新たに任された“国庫改革案”の素案をまとめているのだ。
「公務にまで関わるとは、さすがですね、リディア様」
声をかけたのは、近衛長ゼス。
もはや彼女を“王の客人”として扱う者はいなかった。
リディアは確かにこの国の一員として、歩み始めていた。
その夜、カイ王がリディアを執務室に呼び寄せた。
「今日の答弁、見事だった。……さすがだな、リディア」
「ありがとうございます。ですが、まだ私は“ふさわしい”とは言えません。
その評価に、現実が追いつくよう努力するだけです」
彼女の冷静な返答に、カイは笑う。
「相変わらずだ。だが――それでも私は、“君を女王と呼びたい”と思った」
不意に向けられたその言葉に、リディアの指先が一瞬だけ止まった。
「それは……政治的な意味でしょうか」
「半分はそうだ。だが、半分は――私個人の、意思だ」
沈黙が、ふたりの間に流れる。
だがそれは、気まずさでも迷いでもない。ただ、慎重に言葉を選ぶ者同士の“間”だった。
「まだ、私はあなたのすべてを知らない。
けれど……知りたいと思うようになりました。それは――不適切でしょうか?」
リディアの言葉に、カイの瞳が細められる。
「不適切どころか、ようやく“始まった”気がする」
月明かりの中で交わされた短い言葉が、
国の未来と、ふたりの距離を、確かに近づけていた。
白を基調とした石造りの空間には、国を支える重鎮たちが居並んでいた。
その中で、リディア・エルグレインは静かに立っていた。
豪奢な装飾も、気取った笑みも必要ない。
彼女の存在そのものが、ひとつの“格式”としてそこにあった。
「リディア・エルグレイン嬢」
カイ王の声が、重たく響く。
「貴女はすでに、我が国の王妃候補としての任務を誠実に果たしてきた。
そして先日の晩餐会において、その才と器量を広く示したこと、諸侯・女官・近衛らからの報告により確認されている」
貴族たちの視線が、一斉にリディアへと注がれる。
その視線に、彼女は一歩も引くことなく、正面から向き合った。
「今ここにおいて、我が王命により、リディア・エルグレインを正式に“女王候補”として認定する。
王妃の座に最も近き者として、国の未来を共に歩むことを期待する」
――その瞬間、広間の奥から、ひとりの老貴族が立ち上がった。
「僭越ながら申し上げます、陛下。
王妃候補は過去にも多くおられましたが、“女王候補”と称されるには、政治への参画が前提と存じます。
……貴女は、王妃としてではなく、“国政に関わる覚悟”をお持ちですか?」
厳しい口調に、場が一瞬緊張する。
だが、リディアはゆっくりと息を吸い、まっすぐに言葉を返した。
「はい、覚悟はあります。
私は、ただ王の隣に立つ装飾品としてではなく、王と共に歩む“伴侶”でありたい。
この国に仕える意思があるからこそ、私はアランザールへ来たのです」
その言葉に、広間の空気が変わった。
何かを試していたような視線が、確かな評価へと変わっていくのが、肌で分かる。
――後日、王宮の中庭にて。
春を思わせる陽の光が差し込むなか、リディアは小さな文机に向かっていた。
新たに任された“国庫改革案”の素案をまとめているのだ。
「公務にまで関わるとは、さすがですね、リディア様」
声をかけたのは、近衛長ゼス。
もはや彼女を“王の客人”として扱う者はいなかった。
リディアは確かにこの国の一員として、歩み始めていた。
その夜、カイ王がリディアを執務室に呼び寄せた。
「今日の答弁、見事だった。……さすがだな、リディア」
「ありがとうございます。ですが、まだ私は“ふさわしい”とは言えません。
その評価に、現実が追いつくよう努力するだけです」
彼女の冷静な返答に、カイは笑う。
「相変わらずだ。だが――それでも私は、“君を女王と呼びたい”と思った」
不意に向けられたその言葉に、リディアの指先が一瞬だけ止まった。
「それは……政治的な意味でしょうか」
「半分はそうだ。だが、半分は――私個人の、意思だ」
沈黙が、ふたりの間に流れる。
だがそれは、気まずさでも迷いでもない。ただ、慎重に言葉を選ぶ者同士の“間”だった。
「まだ、私はあなたのすべてを知らない。
けれど……知りたいと思うようになりました。それは――不適切でしょうか?」
リディアの言葉に、カイの瞳が細められる。
「不適切どころか、ようやく“始まった”気がする」
月明かりの中で交わされた短い言葉が、
国の未来と、ふたりの距離を、確かに近づけていた。
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