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第十六話「リディアの答えと、涙の告白」
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王宮の一室。
夜の帳が下りる静かな時間、リディアはカイの私室を訪れていた。
「入ってくれ」
カイの声はいつもと変わらぬ、低く穏やかなものだった。
けれど、今夜のふたりの間には、何かが“はっきりと変わった”気配が漂っていた。
リディアは椅子に腰掛けると、少しだけ躊躇いがちに口を開いた。
「正式に、婚約が通達されたのですね」
「……ああ。貴族院からも異論は上がっていない。君の働きが、すべての答えだった」
リディアは、ふっと目を伏せて笑った。
その笑みに、どこか寂しげな影が差したことに、カイは気づいていた。
「嬉しいはず、ですのに。……どうして、胸が締め付けられるのでしょう」
「それは、強さを続けることに、疲れた証だ」
その言葉に、リディアの瞳が揺れた。
「私は、ずっと“完璧でなければ”と思っていました。
家の名を汚さぬように、誰かの役に立てるように、見捨てられないように……。
自分の弱さを見せたら、誰にも必要とされなくなる気がして――」
そこで言葉が詰まり、リディアはそっと唇を噛んだ。
「でも……あの夜、陛下が“私という人間”を見てくださった時、
初めて“努力”ではなく“私”という存在が認められた気がして……」
言いかけた言葉が、震える指先とともに止まり、
そのまま、ひとしずくの涙がリディアの頬を滑り落ちた。
「申し訳……ありません。こんな顔、あなたに見せるつもりでは……」
「見せてくれ」
カイの言葉は、優しく、そして揺るぎなかった。
「君が涙を流せるほどの場所を、私は用意したかった。
王妃だからではない。君だから――君の涙を、私だけに預けてくれれば、それでいい」
リディアの肩が、小さく震えた。
王妃候補として振る舞い続けた少女は、今ようやく、その重さを手放した。
「……ありがとう、ございます……」
カイは、そっとリディアの手を取った。
強く握ることもなく、ただ“離さない”という意志だけを込めて。
長い夜の中、ふたりの間には多くの言葉はなかった。
けれど沈黙は、何より深く、確かな想いを伝えていた。
涙を流した夜。
それは、リディアが“誰かを信じてもいい”と心から思えた、初めての夜だった。
夜の帳が下りる静かな時間、リディアはカイの私室を訪れていた。
「入ってくれ」
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けれど、今夜のふたりの間には、何かが“はっきりと変わった”気配が漂っていた。
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「正式に、婚約が通達されたのですね」
「……ああ。貴族院からも異論は上がっていない。君の働きが、すべての答えだった」
リディアは、ふっと目を伏せて笑った。
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「嬉しいはず、ですのに。……どうして、胸が締め付けられるのでしょう」
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その言葉に、リディアの瞳が揺れた。
「私は、ずっと“完璧でなければ”と思っていました。
家の名を汚さぬように、誰かの役に立てるように、見捨てられないように……。
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そこで言葉が詰まり、リディアはそっと唇を噛んだ。
「でも……あの夜、陛下が“私という人間”を見てくださった時、
初めて“努力”ではなく“私”という存在が認められた気がして……」
言いかけた言葉が、震える指先とともに止まり、
そのまま、ひとしずくの涙がリディアの頬を滑り落ちた。
「申し訳……ありません。こんな顔、あなたに見せるつもりでは……」
「見せてくれ」
カイの言葉は、優しく、そして揺るぎなかった。
「君が涙を流せるほどの場所を、私は用意したかった。
王妃だからではない。君だから――君の涙を、私だけに預けてくれれば、それでいい」
リディアの肩が、小さく震えた。
王妃候補として振る舞い続けた少女は、今ようやく、その重さを手放した。
「……ありがとう、ございます……」
カイは、そっとリディアの手を取った。
強く握ることもなく、ただ“離さない”という意志だけを込めて。
長い夜の中、ふたりの間には多くの言葉はなかった。
けれど沈黙は、何より深く、確かな想いを伝えていた。
涙を流した夜。
それは、リディアが“誰かを信じてもいい”と心から思えた、初めての夜だった。
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