年下くんは三十路の私より経験が豊富でした。

オリゴ糖

文字の大きさ
27 / 31

26.研修4日目 香原の我儘

しおりを挟む
 唇を重ねただけで、こんなに可愛い反応をされると歯止めが効かなくなって、もっと反応が見たいとエスカレートしてしまう。

「触って欲しそうだね。」

 胸がレースに被われていても、ぷっくりとした綺麗な先端がよくわかる部分に優しく触れる。

「香原さ…んっ…ふぁ…っ。」

 口元に手を持っていき、声を出さないようにしながら耳まで真っ赤になっている彼女が愛おしい。

「茜さん、ほんと…可愛い。このままだと、ここで抱いちゃいそうだから、続きは後で、ね?」

 乱してしまった服を整え、茜が退社する口実を作りあげる。なんて事ない、簡単な事。今まで頑張っきたんだ、今回くらい我儘言っても大丈夫だろう。それに、こんな事で信用が崩れるように築き上げてきたわけじゃない。

 社長室の革張りのソファに、ちんまりと座ってる彼女を見ながら担当者に電話する。

「もしもし?香原です。日本支部の資料明日までで良いから、目を通しておいてくれる?あぁ。そうか。さすがだね。あと、耳に入ってると思うけど、立花君と今井君が当事者だから話も聞いといてくれる?当事者でない植花君から直接私が事情は聞いたから。処分はなしだけど、私の威圧感に彼女具合悪くなっちゃって、もう退社させるからさ。今回のこの企画は、成功させたいから、慎重にね。」

 茜は、フランス語が苦手だから、この会話は聞き取れないだろう。少し、無理やりすぎただろうか。肩入れしすぎてると気づかれていても、そんな事はどうでもいい。これから彼女と過ごす段取りをする。

「香原です。社長、いつもありがとうございます。明日の夕方からそちらで懇親会予定になっていますよね?私の予定が立て込んでしまって、今から2泊3日ほど、滞在したい用事が出来て。えぇ。そうです。話がわかる方で助かる。ありがとうございます。では、また後ほど。」

 ——茜の洋服は…いいか。また、あの人にお願いしよう。

「茜さん。さぁ、行こう。」

「なんだか、とっても悪い事してる気分です。」

 火照りが冷めて、乗り気じゃない彼女も可愛らしく見える。

「そう?茜さんは真面目だなぁ。資料は、ほとんどできているそうじゃないか。あとは担当者が目を通すだけだそうだよ。仕事ができる立花君に任せておいたらいいよ。」

 意地悪いことを言ってみる。

「方向性が見えていたので、立花君の事だから、しっかりまとめてくれたんだと思ってます…。」

「そうだね。良い同僚を持ったね。」

 大人げない発言に気がついていないことをいい事に、良き同僚だと俺自身に言い聞かせるように話した。
 茜の手を引き、社長室から出ようとする。

「香原さん…」

 ——また、呼び方がよそよそしくなってるな。

「ん?どうした?」

「……責任とって下さいね…。」

 俺を見つめてくる真っ黒で真っ直ぐな瞳は、社長の建前がないと上手く立ち回れそうにない。

「そのつもりだよ。」

 茜は、思慮深い。
 人との距離感をとるのが苦手で0か100か、極端な人。
 そして、香りの事となると、取り憑かれたみたいに、周りが見えなくなる人だ。
 
 茜を自分の車に乗せる。よっぽどの事がない限り、車は日頃から自分で運転している。
 社長になると、プライベートはあってないようなもの。色々な人の視線や言葉が気になる。唯一、車内はプライベートな空間。飾らないでいられるひとりの時間が貴重だったりする。

「ねぇ茜さん。俺さ、ひとりの時間が好きなんだ。茜さんは?」

「あ…そうなんですね…私は、あまり考えた事なかったです。でも、調香する時間は好きなので、ひとり時間は貴重だと思います。私が一緒だと落ち着かないでしょうか…?」

「そうだよね。で落ち着かない時もあるけど、茜さんとならずっと一緒にいたいし、会社もズル休みしたい。」

「そ、それは、ダメです。社長の香原さんも、プライベートのれお君も…素敵です。」

 彼女が呼び方を変える意味がやっとわかった。

「ここから先は、完全プライベートだから。」

 こくんと頷く彼女。早く、はやく2人きりになりたい。そんな気持ちを押し殺して車を走らせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...