万年二番手令嬢の恋(完結)

毛蟹

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 そして、週末。
 フランツと話し合った末にカフェでお茶をして帰る。という、気軽にできるものにしようと決まった。

「……」

 フランツを待っている間。私は緊張してソワソワしていた。
 これなら、テストを受けている時の方が気が楽なくらいだ。
 夜もあまり眠れなかったし。
 服は、気合いを入れすぎない塩梅のワンピースにした。

 寮の窓からフランツが来るのを見ていると、予定の時間よりも少し前にやってきた。

「……えっと、迎えにきたよ」

 フランツは、どこか気まずそうな顔をしていた。

「私服、変じゃないかしら。もし、変だったらアドバイスとかもらえると嬉しいな」

 田舎者だから、服のセンスがあるのか正直不安だった。

「いや、全然。そういえば私服をちゃんと見たことがなかったよね。可愛いよ」

「……!」

 そう言われて、顔が熱くなった。
 恥ずかしさと嬉しさが押し寄せてくる感覚に、無性に隠れたくなってしまう。

「い、行こう」

「え、ええ」

 フランツに連れられて私はカフェへと向かった。
 カフェは一度も入ったことのないところで、静かに話をするのには最適な場所だ。

「誘ってくれてありがとう」

 フランツは私の出方を待っていたのかもしれない。そう思うと、もっと早く声をかけるべきだった。

「いえ、学園だけで会うのも変な話だなと思って」

「本当に声をかけてもらえて嬉しかった」と言われると、私のペースを待ってくれていたのだとよくわかったる。
 たわいない話もフランツとなら尽きないもので、一緒にいるのが楽しいな。と感じ始めていたところに一人の女が声をかけてきた。

「あら、フランツ!」

 ミランダは、気合いでも入れているのか私以上におしゃれな格好をしている。

「ミランダ嬢、なぜここにいるんだ?」

 フランツはというと信じられないほどに冷たい目をミランダに向けていた。

「あら、たまたまよ。ねえ、私も同席しても構わないかしら?」

 ミランダは私の存在など目に入らないのか、フランツの隣の席に座ろうと椅子に手をかけた。
 私はポカンと口を開けて、呆然とすることしかできなかった。

「君は何を言っているんだ?リーヌスは?」

 そういえば、リーヌスとではなくなぜミランダ一人でこんなところにいるのだろう。

「彼は別に、ねぇ、いいでしょう?」

「断る。なぜ、無関係の君の同席を許さないといけない」

 リーヌスの事をさらりと流したミランダ。
 フランツはきっぱりと同席を断る。

「何ですって?!」

 ミランダは断られた事に驚いている。
 やっていることはあまりにも非常識で、断られるのが当然だというのに。

「エーデルさんのせいなの?」

「は?」

 突然、私のせいにされて驚いた。

「私は、万年二位エーデルさんよりも、あなたの近くにいるのに相応しいと思うわ」

「何を言っているんだ?」

「私の方が優秀だと言いたいんです」

 まるで自分の方が婚約者に相応しいと言いたげな様子に、私は言葉を失う。
 自意識過剰にも程がある。
 ただ、次に聞かされた言葉に別の意味で驚かされる。

「ミランダ嬢、君は何かを勘違いしているな。僕はエーデルさんが優秀だからそばにいるんじゃないよ。人柄が好きだからだよ」

「え、そうなの?」

 フランツがそういう意味では私のことを好きだとは思いもしなかった。
 好感は持ってくれているが、そういう意味だとは思わなかったのだ。

「君が言うのか!?」

「いや、だって、気楽な婿養子がいいのかと思って」

「君は、ずっと二位だけど腐らないで努力し続けたじゃないか。何か言われてもそれでも直向きに頑張って、少し空回りしてたけど、いつも、テストの結果が出るたびに心配で」

「え、そうだったの?」

 知らなかった新事実に、少しだけ腑に落ちた。

「……気がつきもしなかったのか!」

「からかいに来たのかと思って」

「僕がそんなやつに見えていたのか……、いや、そう見えるような態度だったのが悪かったのか」

 フランツは言いながら反省し始めた。
 お互いに、立ち振る舞いに問題があったのだ。勘違いしても仕方ない。

「ご、ごめんなさい」

 フランツに謝りながら私はある事に気がつく。

「あれ、ミランダさんは?」

 ミランダはいつのまにかいなくなっていたのだ。

「さあ?」

「ええ、そうね」

 フランツはどうでも良さそうな顔をして首を傾けたので、私も忘れることにした。
 自然災害だと思うことにした。






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元気です!
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