私が死ねば幸せですか?

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スレード10

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 僕たちはお互いを避けるようになった。
 学園だけではない。屋敷でもなるべく顔を合わせないようにした。
 アンジェラが僕を巻き込みたくなくて、関わることを拒んでいた。
 何度か衝動的にアンジェラの手を掴んで「一緒に逃げよう」と、懇願しそうになったことがある。
 今思えば、そうすればよかった。
 学園での生活さえ終われば、元通りの生活になると僕は思っていた。
 その考えは甘かった。
 
「ここで話すことを許してください。でも、どうしても隠して置けない事があるんです。皆さんが証人になってください」

 アリスが、食堂でそう宣言して、ゆっくりとアンジェラの元へと歩いて向かった。
 いつもとは違う様子に、僕は嫌な予感がした。
 いつもなら、カルイセンを伴ってアンジェラのところに向かうのに今日は一人きりだったのだ。

「アンジェラ様、いえ、アンジェラ。貴女の罪を認めてください」

 聖女のような汚れのない微笑みを浮かべて、自分の声に酔いしれるようにアリスは話し出す。

「貴女の出生届とコリー公爵と夫人の婚姻届を調べました。婚姻した日から出産日を逆算すると、明らかにおかしいんですよね」

 何がおかしいのかわかない。
 醜聞ではあるが、妊娠後に婚姻する貴族だって少なくない。
 コリー公爵がたまたまそうだった。それだけのことだ。

「コリー公爵と夫人が出会ったのは、貴方が夫人のお腹の中にいる時なんです。以前雇われていた使用人達から証言をもらいました」

 頭から血が引いていくのがわかった。
 疑わしい。それだけだが、アンジェラはコリー公爵の子供ではない。可能性があるという事だ。

「どういうことかわかりますか?」

 アンジェラは、真っ青な顔で何も言えない。
 当然だ。
 彼女の根幹が揺らいでいるのだから。

「……貴女は、コリー公爵の子供ではないんですよ」

 アリスは、申し訳なさそうに真実を話した。

「……アンジェラはコリー公爵家の乗っ取りを計画していることを私は証言します」

 無茶苦茶だ。
 親に愛されていて、アリスが何をしても黙認されていたとしても、他人の家に口出しするのはやりすぎだ。

「いい加減にしろ!」

 僕が声を張り上げると、アリスは心底気の毒な人を見るような目を向けてきた。

「スレード様は、もう、解放されてもいいと思うんです。庇うのは疲れたでしょう?アンジェラが貴方に何度も危害を加えたこと、知らない人はいないんですよ?」

 それは、周囲が一方的にアンジェラのことを決めつけているだけだ。
 アンジェラは、いつも僕のことを気にかけてくれていた。



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