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アリス6
アリス6
アンジェラは、囚人牢に確かにいた。
痩せ細り。薄汚れていた。
なんて気分がいいのだろう。嫌いな女が落ちぶれて乞食のように床に倒れている。
「アンジェラ様、いえ、今はただのアンジェラさんでしたね」
貴族ですらないアンジェラの名前を呼ぶと、ゆっくりとだが私に目線を向けてきた。
「っ……」
平民へと落とされて、乞食のように穢らわしいのに、アンジェラは美しかった。
貴族ですらないのに、初めてお茶会で見たあの時のまま、高貴で綺麗な人形のようだった。
「アンジェラさんの刑が決まりました。貴族籍の剥奪の後に絞首刑だそうですよ」
私は悔しがればいい。と、思って嘘をついた。
立場は逆転していると知らしめるために。
「そう」
それなのに、アンジェラは貴族籍が奪われると知っても表情を変えず。
処刑されるという嘘に対しても取り乱す事はなかった。
まるで、誇り高い貴族のような顔をしていた。
偽物のくせに。
「……スレード様は貴女のために、少しでも罪が軽くなるように動いています」
途端にアンジェラの表情が変わった。
弟が助けてくれるという希望よりも、申し訳なさが表情に出ていた。
この二人は、まるで一対の人形のように美しい。と、私は思ったが。
お互いを思い合う気持ちは、誰からも引き裂けないような強さがあった。
それは、血のつながりではなく心のつながりだろうか。
「……」
まるで私が悪者のようじゃない。
正義感でここまでしているのに……。
私は、何も間違っていないのに!
でも、私はしっている。アンジェラが私を見下している事を。
「貴女は何も感じないのですか?いつもそうです。私がどれほど心を砕いても蔑むような目をスレード様や私に向けていましたよね?」
私の問いかけに、アンジェラは無表情なのに呆れたような雰囲気を出した。
「私は一度もそんな事なんてしていないわ」
「嘘をつかないで!私は知っているわ」
「貴女に私の何がわかるというの?決めつけるのはやめて」
私が悪いかのような物言い。
「ああ、そうやっていつも事実を捻じ曲げるために話を逸らすのですね」
私は何も間違っていない。正しい事をしている。
公女なのだから、地位の高い私のすることは全て正しいのだ。
間違っているのはアンジェラだ。
間違っている。アンジェラには罰を与えないといけない。
でも、高貴な私が自分の手を汚す必要はない。
私はアンジェラにナイフを投げた。
「……死んでくれませんか?貴女が生きているとスレード様の足を引っ張る事になるんですよ」
こう言えば、アンジェラは自ら命を断つだろう。
何よりも大切なスレードのために。
「そう」
アンジェラは、緩慢な動作で自分の首を切りつけた。
どくどくと血がこぼれ出てきた。
本人の中では思い切り切りつけたのだと思う。しかし、食事をまともに食べてなかったせいか、力が入らなかったようだ。
それでも、しばらく放置しておけばきっと死ぬはずだ。
高貴な貴族様だと言われたが、死に様はあまりにも格好のつかないものになりそうだ。
ざまぁみろだわ。
私は笑い声を上げたくなった。
「アンジェラ……!」
最悪なタイミングに、一番聞きたくない男の声が聞こえた。
それはスレードの声だった。
スレードは、看守から奪ったのか牢屋の鍵を開けた。
「アンジェラ、絶対に助けるからな」
スレードは、切りつけたアンジェラの首に手を当てた。
「彼女は連れて行く」
「いいえ、ダメよ」
スレードが、アンジェラを抱き上げてそのまま出ていこうとして止める。
「アンジェラの処分はコリー公爵が決める事になっている。それなのに、なぜ介入しようとする?」
「そっ、それは」
何も言えなかった。
アンジェラ一人なら殺すことは可能だが、今ここでそれをやろうとしたらスレードが止めるはずだ。
スレードに危害を加えたら後々面倒な事になりそうだ。
私は仕方なく引き下がる事にした。
アンジェラは、囚人牢に確かにいた。
痩せ細り。薄汚れていた。
なんて気分がいいのだろう。嫌いな女が落ちぶれて乞食のように床に倒れている。
「アンジェラ様、いえ、今はただのアンジェラさんでしたね」
貴族ですらないアンジェラの名前を呼ぶと、ゆっくりとだが私に目線を向けてきた。
「っ……」
平民へと落とされて、乞食のように穢らわしいのに、アンジェラは美しかった。
貴族ですらないのに、初めてお茶会で見たあの時のまま、高貴で綺麗な人形のようだった。
「アンジェラさんの刑が決まりました。貴族籍の剥奪の後に絞首刑だそうですよ」
私は悔しがればいい。と、思って嘘をついた。
立場は逆転していると知らしめるために。
「そう」
それなのに、アンジェラは貴族籍が奪われると知っても表情を変えず。
処刑されるという嘘に対しても取り乱す事はなかった。
まるで、誇り高い貴族のような顔をしていた。
偽物のくせに。
「……スレード様は貴女のために、少しでも罪が軽くなるように動いています」
途端にアンジェラの表情が変わった。
弟が助けてくれるという希望よりも、申し訳なさが表情に出ていた。
この二人は、まるで一対の人形のように美しい。と、私は思ったが。
お互いを思い合う気持ちは、誰からも引き裂けないような強さがあった。
それは、血のつながりではなく心のつながりだろうか。
「……」
まるで私が悪者のようじゃない。
正義感でここまでしているのに……。
私は、何も間違っていないのに!
でも、私はしっている。アンジェラが私を見下している事を。
「貴女は何も感じないのですか?いつもそうです。私がどれほど心を砕いても蔑むような目をスレード様や私に向けていましたよね?」
私の問いかけに、アンジェラは無表情なのに呆れたような雰囲気を出した。
「私は一度もそんな事なんてしていないわ」
「嘘をつかないで!私は知っているわ」
「貴女に私の何がわかるというの?決めつけるのはやめて」
私が悪いかのような物言い。
「ああ、そうやっていつも事実を捻じ曲げるために話を逸らすのですね」
私は何も間違っていない。正しい事をしている。
公女なのだから、地位の高い私のすることは全て正しいのだ。
間違っているのはアンジェラだ。
間違っている。アンジェラには罰を与えないといけない。
でも、高貴な私が自分の手を汚す必要はない。
私はアンジェラにナイフを投げた。
「……死んでくれませんか?貴女が生きているとスレード様の足を引っ張る事になるんですよ」
こう言えば、アンジェラは自ら命を断つだろう。
何よりも大切なスレードのために。
「そう」
アンジェラは、緩慢な動作で自分の首を切りつけた。
どくどくと血がこぼれ出てきた。
本人の中では思い切り切りつけたのだと思う。しかし、食事をまともに食べてなかったせいか、力が入らなかったようだ。
それでも、しばらく放置しておけばきっと死ぬはずだ。
高貴な貴族様だと言われたが、死に様はあまりにも格好のつかないものになりそうだ。
ざまぁみろだわ。
私は笑い声を上げたくなった。
「アンジェラ……!」
最悪なタイミングに、一番聞きたくない男の声が聞こえた。
それはスレードの声だった。
スレードは、看守から奪ったのか牢屋の鍵を開けた。
「アンジェラ、絶対に助けるからな」
スレードは、切りつけたアンジェラの首に手を当てた。
「彼女は連れて行く」
「いいえ、ダメよ」
スレードが、アンジェラを抱き上げてそのまま出ていこうとして止める。
「アンジェラの処分はコリー公爵が決める事になっている。それなのに、なぜ介入しようとする?」
「そっ、それは」
何も言えなかった。
アンジェラ一人なら殺すことは可能だが、今ここでそれをやろうとしたらスレードが止めるはずだ。
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私は仕方なく引き下がる事にした。
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