私が死ねば幸せですか?

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アリス16

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アリス16


 両親が死刑になって、少しだけ悲しいけれどどこか晴々しい気分でもあった。
 二人はちゃんと罪を償えたのだから。私に憎しみをぶつけるのではなく感謝するべきだ。
 でも、私はこんなにも罪深い両親のことを許してあげようと思う。
 両親が死に。数日後コリー公爵がやってきた。

「アリス、お前の罰が決まった」

 罰とはなんだろう。私は両親を告発するのを手伝ったのに、なぜ罰をうけなければならないのか。
 したことへの功績を考えると公女の身分が相応しいのではないか。

「お前は平民としてこれから生きるんだ」

 平民として生きるとはどういうことなのか、私は何一つ悪い事なんてしていないのに、今まであったものを取り上げるなんてあまりにも酷いじゃないか。

「なぜですか!わたしは協力したのに、それも加味したら公女のままでもいいじゃないですか」
「お前は何を言っているんだ?」

 コリー公爵は、化け物を見るような目を私に向けてきた。

「アイネス公爵が、無一文で平民になるのはあまりにも可哀想だから、元父親がお前と母親に買ってくれた家は没収しない。と、言ってくれたぞ、十分すぎる対応だと思うがな」

 それだけじゃ足りない。平民に戻るならせめてお金をもらわないと割に合わない。
 いや、もらうべきなのだ。

「……なぜ、協力したのに報奨金すらないんですか?」
「自分の立場もわかっていないのか?」

 コリー公爵は私を指さして、続きを言った。

「貴族を偽り」
「それは、両親に騙されたからです」

 私はコリー公爵の話を遮り、間違いを正した。
 そのつもりはなかったのだ。こうなったのは両親のせいだ。

「捏造した証拠で、一人の少女を不当に扱った」

 アンジェラのことを言っているのか、でも、わたしは間違っていない。
 
「あれは、アンジェラが全て悪いんです!私は悪くない!」
「これから、そうやって生きていくのか?」

 何を言っているのかわからない。
 私は間違っていないのに、なぜ、責められなくてはならないのか。

「なんですって!?」
「お前は絶対に貴族には戻れない」

 言い切る公爵に、自分の立場すら忘れて大声を上げる。

「黙れ!」
「さっさと出ていけ。なぜお前に何もしないかわかるか?お前なんかのために手を汚したくないからだ。それに、誰からも手を差し伸べられず、どうせ破滅するからな」

 馬鹿なのだろうか。この男は。

「……私を助けてくれる人なんて、いくらだっているわよ!」

 公女じゃなくなったとしても、過去に高貴な身分であった事実は変わらない。
 それにお友達がいるのだから、その子たちが「喜んで」私のことを助けてくれるはずだ。

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