1 / 3
1
しおりを挟む
「オリント、すまない。お前の結婚相手が決まった。いけすかないエスト家のクロエちゃんだ」
建国パーティーに参加していた父が帰るなり、頭を床に擦り付けて謝ってきた。
エスト家とは、僕のノーラ家と仲の悪い。
その歴史は長く、同時期に爵位をもらってからお互いをライバル視していた。
そんな二つの家門を婚姻させようなんて血迷った事をさせるのは、何かしら理由があるはずだ。
「父さん、何をしでかしたんだ?」
「いや、ちょっと、建国パーティーで取っ組み合いの喧嘩をしちゃって」
父はてへっと笑って見せた。
何でも、エスト家の現当主に、負い目があり謝ったらしい。
……ほぼ同時に、その上でお互いが勘違いしていたことが発覚して、よくわからないことで張り合って大喧嘩に至ったようだ。
意味がわからない。
エスト家の当主と僕の父は仲が悪いが、その息子や娘を悪く言ったことは一度もなく、なんなら褒めているくらいだ。
実は遺言書に、何かあったらエスト家を頼れ。と記されていることを僕は知っている。
本当に仲が悪いのかと疑わしく思う。
「本当に僕はエスト家のココと婚姻するのか?」
心の中では勝手に愛称で呼んでいるので、ついついココと言ってしまった。恥ずかしい。
「ああ、すまない」
どうやら、本当にエスト家のココと僕は婚姻する事になってしまったようだ。
なんて事だろう……。
僕は、自分の脚に力がなくなっていくのを感じた。そして、ヘナヘナとその場に膝をつく。
僕には長年会うことができなかった恋人がいる。
結ばれることをずっと諦めていた。だけど!
前世の僕ありがとう……!
僕は前世の僕に感謝した。
きっと、徳の高い僧侶か、存在しない魔王でも倒した勇者だったはずだ。
じゃなきゃ、こんなこと起こりうるはずがない。きっと、今世の幸せも全部使い果たしてしまったはずだ。
じゃなきゃ、ココとの婚姻を公式から公式に認められるはずがないから。
「オリント、クロエちゃんは凄く可愛いし優しいし、妻として来てくれるなんてお父さんは嬉しいけどな」
父は僕のココを褒め始める。
当然だ。僕のココは天使だから。
建国パーティーに参加していた父が帰るなり、頭を床に擦り付けて謝ってきた。
エスト家とは、僕のノーラ家と仲の悪い。
その歴史は長く、同時期に爵位をもらってからお互いをライバル視していた。
そんな二つの家門を婚姻させようなんて血迷った事をさせるのは、何かしら理由があるはずだ。
「父さん、何をしでかしたんだ?」
「いや、ちょっと、建国パーティーで取っ組み合いの喧嘩をしちゃって」
父はてへっと笑って見せた。
何でも、エスト家の現当主に、負い目があり謝ったらしい。
……ほぼ同時に、その上でお互いが勘違いしていたことが発覚して、よくわからないことで張り合って大喧嘩に至ったようだ。
意味がわからない。
エスト家の当主と僕の父は仲が悪いが、その息子や娘を悪く言ったことは一度もなく、なんなら褒めているくらいだ。
実は遺言書に、何かあったらエスト家を頼れ。と記されていることを僕は知っている。
本当に仲が悪いのかと疑わしく思う。
「本当に僕はエスト家のココと婚姻するのか?」
心の中では勝手に愛称で呼んでいるので、ついついココと言ってしまった。恥ずかしい。
「ああ、すまない」
どうやら、本当にエスト家のココと僕は婚姻する事になってしまったようだ。
なんて事だろう……。
僕は、自分の脚に力がなくなっていくのを感じた。そして、ヘナヘナとその場に膝をつく。
僕には長年会うことができなかった恋人がいる。
結ばれることをずっと諦めていた。だけど!
前世の僕ありがとう……!
僕は前世の僕に感謝した。
きっと、徳の高い僧侶か、存在しない魔王でも倒した勇者だったはずだ。
じゃなきゃ、こんなこと起こりうるはずがない。きっと、今世の幸せも全部使い果たしてしまったはずだ。
じゃなきゃ、ココとの婚姻を公式から公式に認められるはずがないから。
「オリント、クロエちゃんは凄く可愛いし優しいし、妻として来てくれるなんてお父さんは嬉しいけどな」
父は僕のココを褒め始める。
当然だ。僕のココは天使だから。
176
あなたにおすすめの小説
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
好きだと言いたかった
ありがとうございました。さようなら
恋愛
杏奈と手塚は喧嘩するほど仲のいい同期だった。
いつものように、くだらないことで喧嘩になり飲みに行った流れで、杏奈は手塚に告白されそうになる。
塩対応の婚約者に婚約解消を提案したらおかしなことになりました
宵闇 月
恋愛
侯爵令嬢のリリアナは塩対応ばかりの婚約者に限界がきて婚約解消を提案。
すると婚約者の様子がおかしくなって…
※ 四話完結
※ ゆるゆる設定です。
あなたとの縁を切らせてもらいます
しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。
彼と私はどうなるべきか。
彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。
「あなたとの縁を切らせてください」
あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。
新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。
さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ )
小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。
デネブが死んだ
ありがとうございました。さようなら
恋愛
弟との思い出の土地で、ゆっくりと死を迎えるつもりのアデラインの隣の屋敷に、美しい夫婦がやってきた。
夫のアルビレオに強く惹かれるアデライン。
嫉妬心を抑えながら、妻のデネブと親友として接する。
アデラインは病弱のデネブを元気付けた。
原因となる病も完治した。それなのに。
ある日、デネブが死んだ。
ふわっとしてます
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
貴方の幸せの為ならば
缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。
いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。
後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる