もっと静かに好きと言え

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「オリント、すまない。お前の結婚相手が決まった。いけすかないエスト家のクロエちゃんだ」

建国パーティーに参加していた父が帰るなり、頭を床に擦り付けて謝ってきた。

エスト家とは、僕のノーラ家と仲の悪い。
その歴史は長く、同時期に爵位をもらってからお互いをライバル視していた。
そんな二つの家門を婚姻させようなんて血迷った事をさせるのは、何かしら理由があるはずだ。

「父さん、何をしでかしたんだ?」

「いや、ちょっと、建国パーティーで取っ組み合いの喧嘩をしちゃって」

父はてへっと笑って見せた。
何でも、エスト家の現当主に、負い目があり謝ったらしい。
……ほぼ同時に、その上でお互いが勘違いしていたことが発覚して、よくわからないことで張り合って大喧嘩に至ったようだ。

意味がわからない。

エスト家の当主と僕の父は仲が悪いが、その息子や娘を悪く言ったことは一度もなく、なんなら褒めているくらいだ。

実は遺言書に、何かあったらエスト家を頼れ。と記されていることを僕は知っている。

本当に仲が悪いのかと疑わしく思う。

「本当に僕はエスト家のココと婚姻するのか?」

心の中では勝手に愛称で呼んでいるので、ついついココと言ってしまった。恥ずかしい。

「ああ、すまない」

どうやら、本当にエスト家のココと僕は婚姻する事になってしまったようだ。

なんて事だろう……。

僕は、自分の脚に力がなくなっていくのを感じた。そして、ヘナヘナとその場に膝をつく。

僕には長年会うことができなかった恋人がいる。

結ばれることをずっと諦めていた。だけど!

前世の僕ありがとう……!

僕は前世の僕に感謝した。
きっと、徳の高い僧侶か、存在しない魔王でも倒した勇者だったはずだ。
じゃなきゃ、こんなこと起こりうるはずがない。きっと、今世の幸せも全部使い果たしてしまったはずだ。

じゃなきゃ、ココとの婚姻を公式から公式に認められるはずがないから。

「オリント、クロエちゃんは凄く可愛いし優しいし、妻として来てくれるなんてお父さんは嬉しいけどな」

父は僕のココを褒め始める。
当然だ。僕のココは天使だから。
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