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1話 転生したら「洞窟」だった。
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やあ、どうも。当然だけど僕は今、異世界にいます。そうそう、それです。異世界転生というやつです。元いた世界で死んでしまった僕は、この世界の神様に呼ばれたわけです。それで生まれ変わらせてもらったんだけど。なんと新しい転生先は「洞窟」でした。
いやぁ~・・・確かに「静かな所でひっそりのんびり過ごしたい」と言いましたよ? てっきり辺境でスローライフ的なのを想像するでしょ? それがまさか無機物に転生させられるとは思いませんでしたよ・・・。静かな所(鬱蒼とした森の中)、ひっそり(動けない)、のんびり(寿命が無い)・・・うん、間違ってない。こりゃ一本とられたね! ハハッ!! ・・・と、まぁそんなことがあって幾星霜。もう前世の僕の名も姿も思い出す事も無い。今は周りの景色の四季の移り変わりと、極稀に僕の中で休みに来る動物を眺めるのが楽しむ人生・・・いや、洞窟生を送っています。
◇◇◇◇◇
――そんなある日、昼前から降り出した雨で森は余計に静まり返っていた。雨音しか聞こえないし、周りは靄が立ち込め景色も見れず、僕はいつにも増して退屈を持て余していた。
『・・・はぁ~この雨、いつまで降るんだろうなぁ』
あまりにも暇なので落ちてくる雨水でも数えて過ごそうかと思っていた時、微かに雨音ではない音が聞こえてきた。・・・これは足音?
『・・・何かがこっちにくる』
音がする方をジッと見つめる。すると靄の中に黒い影が現れて、それが段々と迫ってくる。そして靄から抜け出したその影の正体は・・・何と、小さな女の子だった。
『うわっ・・・人だ。 ここに来て初めての第一異世界人だ!!』
元の世界では絶対にお目にかかれない真っ赤な赤い髪を振り乱しながら息を切らしてこちらに走って来る。どうやら僕(洞窟)を目指しているようだ。・・・この雨だもんな。いいですとも、僕の中でしっかり雨宿りしていくといい。
赤髪の子は僕の中を警戒しながら進み、奥まで着くと、膝を抱え俯いて座ってしまった。よく見るとこの子・・・泥だらけだけど、結構高価そうなドレスを着ている。良いとこのお嬢さんか? というかこんな小さな子がどうしてこんな所に一人で?
「うう・・・グスッ・・・お父様・・・お母様・・・みんな・・・」
今度は体を震わせながら泣き始めた。その姿に僕はいたたまれなくなり、つい声を掛けてしまった。
『・・・君、大丈夫?』
「!! だ、誰!? 隠れているなら姿を見せなさい!!」
少女は青ざめた顔で震えながら叫ぶ。・・・しまった、めちゃビビってる。でも、もう後の祭りだ。此処は一つ彼女との会話を試みてみよう。
『あ・・・あの~、こんにちは。僕はさっきから君の前に居るんだけど・・・』
「は? ええっ!? で、でも周りは岩肌しかないけど・・・」
『ええ、そうです。その岩肌が僕です。というか、この洞窟が僕なんです』
「・・・は? 私を謀ってます?」
少女はすっごいジト目でみてくる。だよね、そう思うよね。
『いや、嘘じゃないよ。ガチで、トゥルーです』
「ガ・・・トル? なんです?」
僕は自分のこれまでのいきさつを彼女に説明することにした。
◇◇◇◇◇
「――な、なるほど。理解しました」
『信じてくれるの?』
「目の前に存在しているものを否定は出来ません。・・・・クチュン!!」
少女は可愛らしいくしゃみをすると身体をブルリと震わせた。雨で全身ずぶ濡れだし体が冷えるのは当たり前だよな。
『寒いなら焚き火をしたらどうかな? ここには動物たちが寝床を作るのに
集めた枯れ葉や枯れ木があるからさ』
「あの、申し分かりません。私、焚き火をしたことありません・・・」
ああ、やっぱりこの子はどこぞのお嬢様なんだな。そこで僕は懇切丁寧に焚き火の準備の指導した。しかし最後の一番重要な事を忘れていた。
『あ・・・どうしよう、火種がない』
「それなら問題ありませんわ。・・・「チャッカ」」
すると彼女の指先に小さな火が灯った。そしてその火で焚き木に火を付けた。
『おお!! 魔法だ!! この世界には魔法があるんだ。すげー!!』
「・・・ええ、貴重な力です」
暫く焚き火に当たり温まってきたのか、彼女の緊張も解けて表情が柔らかくなってきた。そろそろいいかなと思い、僕は彼女が何故こんな所に一人で来たのかを聞くことにした。
「・・・そうですわね。聞いてくださいますか?」
彼女はゆっくりと自分の事を話し出した。
いやぁ~・・・確かに「静かな所でひっそりのんびり過ごしたい」と言いましたよ? てっきり辺境でスローライフ的なのを想像するでしょ? それがまさか無機物に転生させられるとは思いませんでしたよ・・・。静かな所(鬱蒼とした森の中)、ひっそり(動けない)、のんびり(寿命が無い)・・・うん、間違ってない。こりゃ一本とられたね! ハハッ!! ・・・と、まぁそんなことがあって幾星霜。もう前世の僕の名も姿も思い出す事も無い。今は周りの景色の四季の移り変わりと、極稀に僕の中で休みに来る動物を眺めるのが楽しむ人生・・・いや、洞窟生を送っています。
◇◇◇◇◇
――そんなある日、昼前から降り出した雨で森は余計に静まり返っていた。雨音しか聞こえないし、周りは靄が立ち込め景色も見れず、僕はいつにも増して退屈を持て余していた。
『・・・はぁ~この雨、いつまで降るんだろうなぁ』
あまりにも暇なので落ちてくる雨水でも数えて過ごそうかと思っていた時、微かに雨音ではない音が聞こえてきた。・・・これは足音?
『・・・何かがこっちにくる』
音がする方をジッと見つめる。すると靄の中に黒い影が現れて、それが段々と迫ってくる。そして靄から抜け出したその影の正体は・・・何と、小さな女の子だった。
『うわっ・・・人だ。 ここに来て初めての第一異世界人だ!!』
元の世界では絶対にお目にかかれない真っ赤な赤い髪を振り乱しながら息を切らしてこちらに走って来る。どうやら僕(洞窟)を目指しているようだ。・・・この雨だもんな。いいですとも、僕の中でしっかり雨宿りしていくといい。
赤髪の子は僕の中を警戒しながら進み、奥まで着くと、膝を抱え俯いて座ってしまった。よく見るとこの子・・・泥だらけだけど、結構高価そうなドレスを着ている。良いとこのお嬢さんか? というかこんな小さな子がどうしてこんな所に一人で?
「うう・・・グスッ・・・お父様・・・お母様・・・みんな・・・」
今度は体を震わせながら泣き始めた。その姿に僕はいたたまれなくなり、つい声を掛けてしまった。
『・・・君、大丈夫?』
「!! だ、誰!? 隠れているなら姿を見せなさい!!」
少女は青ざめた顔で震えながら叫ぶ。・・・しまった、めちゃビビってる。でも、もう後の祭りだ。此処は一つ彼女との会話を試みてみよう。
『あ・・・あの~、こんにちは。僕はさっきから君の前に居るんだけど・・・』
「は? ええっ!? で、でも周りは岩肌しかないけど・・・」
『ええ、そうです。その岩肌が僕です。というか、この洞窟が僕なんです』
「・・・は? 私を謀ってます?」
少女はすっごいジト目でみてくる。だよね、そう思うよね。
『いや、嘘じゃないよ。ガチで、トゥルーです』
「ガ・・・トル? なんです?」
僕は自分のこれまでのいきさつを彼女に説明することにした。
◇◇◇◇◇
「――な、なるほど。理解しました」
『信じてくれるの?』
「目の前に存在しているものを否定は出来ません。・・・・クチュン!!」
少女は可愛らしいくしゃみをすると身体をブルリと震わせた。雨で全身ずぶ濡れだし体が冷えるのは当たり前だよな。
『寒いなら焚き火をしたらどうかな? ここには動物たちが寝床を作るのに
集めた枯れ葉や枯れ木があるからさ』
「あの、申し分かりません。私、焚き火をしたことありません・・・」
ああ、やっぱりこの子はどこぞのお嬢様なんだな。そこで僕は懇切丁寧に焚き火の準備の指導した。しかし最後の一番重要な事を忘れていた。
『あ・・・どうしよう、火種がない』
「それなら問題ありませんわ。・・・「チャッカ」」
すると彼女の指先に小さな火が灯った。そしてその火で焚き木に火を付けた。
『おお!! 魔法だ!! この世界には魔法があるんだ。すげー!!』
「・・・ええ、貴重な力です」
暫く焚き火に当たり温まってきたのか、彼女の緊張も解けて表情が柔らかくなってきた。そろそろいいかなと思い、僕は彼女が何故こんな所に一人で来たのかを聞くことにした。
「・・・そうですわね。聞いてくださいますか?」
彼女はゆっくりと自分の事を話し出した。
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