三日月の下で君は笑う~繋がる約束~

らむ

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バンドって…最高っっ……!!!

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まずは俺が、バンドに関わるまでの話をしよう。

幼い頃から俺は、好きな物や趣味が無かった。周りの人間との共通の話題が無かった俺は、もちろん友達がいる訳もなく、常に一匹狼で生活していた。
「いつまでこんなことしてんだ俺…」
大学入試も控えている、高校3年生の俺は未だに進路を決めれずにいた。
「……あーもう、寝て忘れようこんなこと」
そう思った矢先、
「ピンポーン!!」
家のベルが鳴った。俺の家に来る相手は1人しかいない。俺はすぐに訪問者がわかったので家の鍵を開け、迎え入れた。
「ちょっと詩音!いつまでだらだらしてんのよ!」
顔を合わせた瞬間怒ってきたこいつは、俺の彼女である彩音だ。
「いいじゃねーか休日ぐらい…」
進路について悩み続けて、疲労も溜まっていた俺は、正直イライラしていた。そんな心の内を読み取ったのかわからないが、
「あっ…もしかして…まだ進路迷ってるのー?」
ニヤニヤしながら聞いてくる彩音。
「……まぁ、そんなとこだ」
そう答えるしかなかった俺は悔しかった。
「なるほどねぇ…そんな感じだろうと思って今日きたんだよねっ!って事で、今から詩音をある所に連行します!」
唐突の言葉に困惑した俺は、
「………え?」と言うしかなかったが、次の瞬間には俺は、彩音に捕獲され、
「さ!行くよ!早く早く!」
急かされながら俺達が向かった先は、、、
……………小さな四角い建物?
「あ?どこだここ」
来たことのない場所に戸惑う俺だったが、そんな事も気に留めず、ズンズン建物に入り、俺を引っ張っていく彩音。
「さぁ!着いたよ!」
俺の目の前に、硬く閉ざされた扉があり、周りは謎の地響きが伝わってきている。
「詩音!この扉…開いてみて…!」
「……あぁ」
恐る恐る扉を開く。ギシギシッという鈍い音と共に、俺の目の前には見たことのない景色が広がっていた。ステージ上で楽器を持って演奏する男女5人組。その5人組の目の前で熱狂している多くの人達。そして、楽器の音、マイクを持ち歌い、盛り上げる声、黄色い歓声をあげる観客達。全て俺には未知の世界に溢れていて、言葉に表せないほど感動してしまっていた。
「…な、なんだこれっ!!!!」
「ね?凄いでしょ!この盛り上がり!悩みも全部吹き飛んじゃうよね!!」
この時、初めて俺はバンドというものに興味を惹かれ、俺がやりたいのはこれだ!これなら俺は生きていけるっ!と直感で感知してしまった。そう思った俺はすぐに行動に移した。バンドの演奏が終わり、観客達が帰る中、俺はバンドの中でも1番の輝きを見せていた男性ボーカルの人に咄嗟に声をかけてしまった。
「あのっ!俺…こんなにワクワクしたの初めてで…なんていうかっ…あなたみたいになりたいっ!」咄嗟の事に相手も驚いたのだろう。目を点にして俺を見ていたが、すぐに笑顔に変わり、
「そうか…なら、1つだけ、この世界で生きていく為に俺が大切にしている信条を教えてやる。」
「それは…なんですか…」
「それはな、自分の気持ち全てを歌の歌詞に込めて、目の前の1人1人全てに自分の気持ち全てを伝える意思を持つ事だ。お前は今、俺に自分の気持ちをはっきりと伝えてくれた。そこでもうお前はボーカリストとしての一歩を踏み出したんだ!断言する。お前は将来、絶対にビッグになれるぜ!」
熱い言葉に俺は何も言えず、ただ呆然として、知らぬ間に涙が流れていた。
「お、俺!絶対にビッグになってみせます!そして、あなたに追いついて、追い越してみせます!!!」
俺は何も考えられず、ただこの言葉を発してしまっていた。
「おぉ!その意気だ!ところで名前を聞いていなかったな、名前はなんだ」
「し、詩音です!」
「詩音か…いい名前だな…よし!詩音!俺は少し先で待ってる。いくらかかってもいい。絶対に俺に追いついて、そして追い越してみせろ!」
そう言い残して男性は去っていった。


これが俺とバンドの出会いだ。この男性に話しかけなかったら今の俺はないだろうな。今でもこの記憶は、俺の中の大切なもの、そして男性ボーカリストとの『約束』として未だに心に残っている。そして永遠に消えることはないだろうな。


さて、次はバンドと出会ってからの俺の成長と、今のバンドメンバーとの出会いを話そうとするかな。
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