婚約者の不倫相手は妹で？

2（マリー視点）

「マリー…私と婚約してくれないか？」

　プロポーズは突然だった。学院内での出来事だった。辺りはざわついた。私もざわついた。

「あの…私ですか？」

「ああ、君だ。一目で恋に落ちた」

　エルヴィン様が嘘をつくはずがない…そう思って信じた。いや、婚約の話は本当だった。エルヴィン様がプロポーズした翌日、王家の使者が屋敷にやって来てお父様と面会した。そこで婚約の文書が交わされたのだ。

「マリー、すごいことだぞ！」

　お父様は私のことを褒めてくれた。公爵家の中から選ばれる王家の婚約者…その中でも第一王子エルヴィン様の婚約者となれば、我が家の評判が上がるのは当然のことだった。


「お姉様、おめでとうございます！」

　もちろん、妹のアンナも祝福してくれた。なんだか現実味のないまま、婚約の話がどんどん進んでいった。一呼吸おいてよく考えるべきだったのだ。

　だって、今まで男から口説かれたことのないこの私が…第一王子エルヴィン様からプロポーズされるなんて、普通に考えればだいぶ無理のある話なのだから。

　思い返せば、エルヴィン様の狙いは最初から妹のアンナだったのだ。アンナは私と違って男から口説かれることが多かったから。そう…そういうことなのだ。あるいは…アンナの仕組んだ罠だったのか？