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(何を言ってるの……?)
一瞬、彼女の言葉の意味がわからなかった。すると彼女は真剣な眼差しで続ける。
「あなたがそんな風に想うほどの男性なら私も興味があるのよ。だからあなたさえ良ければ紹介してほしいなと思ったんだけど……」
(紹介したい……? どういうこと……? まさか……)
嫌な予感が脳裏に浮かび上がる。彼女は冗談交じりに言っているように見えてどこか本気に見えた。つまり本気で彼を狙っているのだ。
「あの……それはいったい……」
「ごめんなさい。意地悪なことを聞いてしまったわね。今のは忘れてちょうだい」
「……」
「そんな顔しないで? 別にあなたを取って食べようとしてるわけではないのよ? ただちょっと知りたかっただけ。でも安心して? さすがにいきなり手を出したりはしないわ。ただ彼と一度会ってみたいだけ。それだけよ」
「そう、ですよね。すみません、変に勘ぐったりして」
「いいえ、こちらこそごめんなさいね。でも一つ言えることは、私はあなたの味方だということは覚えておいてね」
「え?」
「だってそうでしょう? もし彼が他の女に靡いたとしても、あなたはその人を責めたりはできないわよね?」「っ!」
「それってすごく辛いことだと思わない?」
「……」
「だからせめて私だけはあなたの味方でありたいの。これは私なりの罪滅ぼしでもあるけどね」
「罪、滅ぼし……?」
「えぇ、そうよ。私は彼にひどいことをしてしまったから……」
「酷いこと?」
「……いいえ。これ以上は話せないわ。ごめんなさい。だから代わりにもう一つ約束するわ。私は絶対に彼の邪魔はしないと誓う。だからあなたも私の邪魔はしないでほしいの。お互いのためにもね」
「……わかりました。リリアーナ様を信じます」
「ありがとう。……ねぇ、シャーロット。私もあなたの恋が実るよう応援させてくれないかしら?」
「……はい。お願いします」
そんな風にはならないことを、うすうす感じだから、シャーロットは答えた。
「任せて。……あ、そろそろ戻らないと。あまり遅くなるとお父様に怒られてしまうわ」
「そうですね」
「それじゃあまた会いましょう。今度は二人でお茶を飲みながらゆっくり話しましょう」
「はい。楽しみにしてます」
「えぇ、私もよ」
二人は別れてそれぞれの場所へと戻る。
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