王子の婚約破棄に対抗する令嬢はお好きですか?~妹ってうるさいですね。そこまでおっしゃるのでしたら別れましょう~

岡暁舟

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その7

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「お姉さま……お姉さまはいらっしゃいませんか???」

めでたく、私はコッホ様と結ばれて、初夜を迎えておりました。ダイナミックなコッホ様の息吹を注がれて……私はいくらか生きた心地がしたわけでございました。

「君は……随分と大胆なんだね……」

コッホ様は少し驚いた様子でおりました。

「まあ、興奮なんてものは、体験しなければわかりませんからね……」

なんて、私は調子に乗って答えました。

「ああ、本当に面白い性格をしているよ、君はね……」

コッホ様はそう言いました。

「褒めてるんですか???」

「そのつもりなんだけどね」

「ああ、そうですか。ありがとうございます……」

あまりの興奮に疲れ果てて、私はすぐに眠ってしまいました。途中、小さな家の小さな窓から降り注ぐ星の光に目をやりながら……でもそうすると、どこからか、聞きなれた声が響いてきて、しきりに、

「お姉さま、お姉さま!!!」

と、まるで私のことを呼び出しているような感じがするわけでございました。

私のことをお姉さまと呼ぶのは、ほかでもなく、妹のタバチエールしかおりませんでした。夢の中で私に問いかける意味は何なのか……何かの偶然なのだと最初は思っておりました。

ですが、コッホ様と体を重ねる夜の度に、タバチエールの懐かしい声がどこからとなく聞こえてくるような気がするのでした。だんだん怖くなって、私は布団から起き上がり、まだ優しい夜の星空を眺めるようになりました。

「どうしたんだい???そんなにおびえ切ってしまって……。何か怖い夢でも見たのかい???」

コッホ様がそう言って、後ろから私のことを抱きしめてくださいました。コッホ様は体が貧相で冷たいというのがいくつか欠点ではあるのですが、その言葉の温かさには喜びと感動を覚えるわけでございまして、案外と過ぎていくわけでございました。

「いいえ、どこからか懐かしい声がするものですから。きっと気のせいでしょう。この世界で私を必要としている人は……おそらく今はコッホ様くらいしかいないと思いますから……」

私がこういいますと、コッホ様もにこりと微笑んで、

「私もそう思う」

と答えました。ええ、そうなのです。そうとしか考えられませんでした。この時は。
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