王子の婚約破棄に対抗する令嬢はお好きですか?~妹ってうるさいですね。そこまでおっしゃるのでしたら別れましょう~

岡暁舟

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その11

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「お姉さま……お姉さま……」

タバチエールは時々、私のことを呼び出します。本当に私が姉であるとわかっているのか……そんな疑問と不安をずっと抱え込みながら、私は旅を続けます。

「どうして???どうしてなのかしら???」

私はところどころで忘れ物をしているようです。ある時はタバチエールの帽子がなくなり、ある時ではタバチエールのカバンがなくなり、またある時はタバチエールの靴がなくなり……自分で何をしているのか見当が付きませんでした。私はただ旅をしているだけなのですが……思わぬところでいろいろなアクシデントに巻き込まれることもありました。

道中、女二人旅というのは案外危険なもののようです。そんなことは初めからなんとなくは分かっておりました。でも、旅を続けないと、そこで私たちの人生は終わってしまうのですから、続けるしかないのです。終わりの見えない暗いトンネルをさまよい続けるしかないのです。まあ、これでも明日にたどり着くかはわかりませんが……。

「お待ちになって」

と何度も声をかけてもらうことがあります。その大半はいかがわしい連中なのだとわかります。でも、たまには親切な旅人ってものもいらっしゃって、私たちをもてなしてくれたりもします。そんなのがうれしくなって、私はついつい、いろいろなことを話したりします。でも、そこには新しいヒントが舞い込んでくることもあって、

「とにかく北に行きなさい。あそこはいい国だから」

と、みんなが勧めてくれるのです。

「あそこは普通の人間を受け入れない。普通じゃない人間を受け入れるんだ」

なるほど……確かに私たちはもはや、普通の人間ではないのでしょう。普通だったら、こんな面倒には巻き込まれません。もう人生が終わりそうだっていうのに、タバチエールは時々笑顔を見せるようにもなりました。

「お姉さま……ありがとう……」

時々、私に感謝したりします。その真意は分かりませんでしたが、まあ、悪い気持にはなりませんでした。ありがとう……心強いですね、この言葉は。

北へひたすらまっすぐ進むと、本当に歩くのが大変だと感じました。

「だって、そこには救いを求める人間の集う場所だから……そう簡単にはたどり着かなさいさ……」

旅人たちはそう言いました。

「でもね、そこへ一度足を踏み入れたら、こんな現実の世界は、どれもちっぽけに感じてしまうかもしれないさ。まあ、俺たちはみんな、それでもいいと思っているさ!!!」

なんとも猛々しい勧めでした。私は一層興味が募りました。

自分のため、あるいは妹のタバチエールのため……どっちにしても、引き返すことのできないこの暗闇を私は必死に進むのでした……。
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