悪役の妹は姉の婚約者候補を葬り去る

岡暁舟

文字の大きさ
7 / 16

7

「べつにやましい気持ちはなくてだな…純粋に君とお近づきになりたくて…」

 まあ、いいや。そういうことにしておこう。

「まあ、いいですよ。それで…あなたのお名前はなんて言うの?」

「ああっ、私の名前はモリソンだ。一応これでも公爵家なんだけど…」

 私は家柄に興味ない。公爵家の数なんてそんなに多くないから、どこかで会ったことがあるかもしれない。まあ、みんなお姉様目当てなんだけどね。彼もそうに決まっているのだ。

「ああ、そうなんですね。ところで、今日家に来ますか?」

 こう尋ねると、さらに動揺したようだった。

「そんなこと…出来るのか?」

「だって、私の友達になりたいのでしょう?だとすれば…別に私の家に行っても問題ないでしょう?」

「まあ、それはそうだろうが…本当にいいのかい?」

「じれったいわね。最初からそれが狙いなんでしょう…深く考えないで!」

 モリソンは平穏を装ったが、内心喜んでいるのはバレバレであった。

「そうかそうか…いきなり友人になった公爵令嬢の家に招かれるだなんて…名誉なことだなぁっ!」

 モリソンは完全に棒読みだった。

「それじゃ…放課後にこの広場で待ち合わせをしましょう…」

「よし、分かった!ありがとう!」

 そう言って、モリソンは元気よく駆け出して行った。

 プラトーな学院生活…お姉様に少しでも追いつく、なんて目標もすっかり消えてしまい自堕落な日々。そんな日々に少しだけ刺激を追加したかったんだ。そう…お姉様のように絢爛豪華な人生にはならないけれども、少しは面白い人生にしたいと思った。

 しばらくして、広場に段々と人だかりができ、騒がしくなった。ああ、お姉様が到着したんだ、と即座に分かった。当のモリソンは…いなかった。いきなりお姉様のご尊顔を拝むのが恥ずかしいのか、なんて思った。


「マーガレット様が到着されたぞ!」

 歓声の渦に飲み込まれるお姉様…学院でもスターだった。姉妹でこれほどの違いが出るのはどうしてか…真面目に考えたこともある。でも、今は深くは考えない。考えても結局無駄だから…。

「皆様、ご機嫌よう…」

 四方八方をお姉様のファンが囲んでいた。ファンに向けて笑顔を見せる…学院の華であった。やがて、私のいる辺りまでやって来た。学院内での私の認知度が低すぎて、私が公爵令嬢マーガレットの妹ローズであると認識されることはない。だから、姉妹が一瞬横に並んでも、世間的には学院の華とたまたま居合わせた通行人のペアと捉えられる。まあ、お姉様に近づく作戦としてモリソンのように情報を辿り私が妹ローズであると気づく者もいることにはいるようだが。

「ご機嫌よう…可愛いお嬢さん」

 お姉様はにこやかに声をかけた。私は特に返事もせず、お姉様とは反対方向に歩いた。その場に居合わせた学生たちは、不思議がったに違いない。お姉様に声をかけられて平然と立ち去る者なんていなかったのだから。



 結局のところ、ローズは特別?

あなたにおすすめの小説

亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』

まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」 ​五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。 夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。 生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。 ​冷淡な視線、姉と比較される日々。 「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」 その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。 ​しかし、彼女が消えた翌朝。 カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。 そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。 そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。 ​――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」 ​真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。 だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。 ​これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

皇太子殿下は、幼なじみに触れていないと落ち着かない

由香
ファンタジー
幼い頃から一緒に育った皇子は、なぜか距離が近すぎる。 後ろから抱きしめられ、手を取られ、頬に触れられるのが当たり前の日常。 やがて彼は皇太子となるが――その距離は変わらないどころか、むしろ深まっていき。 「触れていないと、落ち着かない」 公の場でも離してくれない彼の執着に、周囲は騒然。 けれどその腕の中は、どうしようもなく安心してしまう。 これは、幼なじみの距離のまま始まる、逃げ場のない溺愛の物語。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

砂上の楼閣

上板橋喜十郎
恋愛
三年前、友人との不貞を理由に離婚した奥田和弘。 慰謝料五百万円を支払い、娘の親権を守るためにすべてを受け入れた。 それから三年。 元妻・由利奈から突然の連絡が届く。 「娘に会いたい」 再会した彼女は復縁をほのめかしてくるが、その行動には不自然な点が多すぎた。 違和感を覚えた和弘は、探偵事務所に調査を依頼する。 やがて明らかになる衝撃の真実。 それは三年前の離婚そのものが仕組まれた罠だったという事実――。 絡み合う嘘と裏切りの果てに、すべてが崩壊する。

愛を知った私は、もう二度と跪きません

阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。 家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。 「呪われた男にでも喰われてこい」 そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。 彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。 その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。 「エカテリーナ様、どうかお助けを!」 かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!

離縁を望んだ私に、旦那様の執着が始まりました

なつめ
恋愛
四年続いた、形だけの結婚。 公爵夫人レヴェティアは、夫ゼルフェインから一度も愛を告げられず、ただ静かな屋敷の中で“都合のいい妻”として扱われてきた。 冷たい夫。 消えていく手紙。 義家からの軽視。 そして、公爵には昔から想う女がいるという噂。 もう十分だと悟った朝、レヴェティアは離縁状を差し出す。 これで終わるはずだった。自分がいなくなれば、夫はようやく望む人生を選べるはずだった。 けれど、その日から様子がおかしくなったのは、無関心だったはずの旦那様のほうだった。 食事の席で視線を外さない。 屋敷の移動先を勝手に潰す。 社交の場では手を離さない。 今さら知ったような顔で、彼女の四年間を奪った者たちを一人ずつ叩き潰していく。 「出ていくつもりなら、なぜ俺の知らない顔をそんなに増やした」 これは、終わらせるために差し出した離縁状から始まる、 遅すぎた恋と、寡黙な公爵の重すぎる執愛のやり直し婚。