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聖女アリサ
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それにしても、私が一歩一歩踏みしめて進んでいるこの空間は豪華絢爛である。高そうな絨毯が引かれており、芸術はよくわからないが、やはり高価そうな絵画が所狭しと飾られている。ここは恐らく王宮なのだろう。
「アリサ・・・驚いているのか?君にとっては見慣れた景色だろうに・・・」
ロイド様の方が普段と様相の違うアリサを目の当たりにして驚いているようだった。
「いいえ、そんなことはございませんが・・・」
ひとまず弁明しておいた。なるべく怪しまれないように。
階段を下り、地下の広大な空間に降り立った。異国の神殿のように見えた。
「さあ、アリサ。いつもの儀式を始めようじゃないか・・・」
いつもの儀式・・・もちろん、何を指しているのか分からない。30秒程度沈黙の時が流れる。私はソワソワする。すると、ロイド様が怪訝そうな顔をした。
「アリサ?どうしたんだ?やはり具合が悪いのか?いつものように神の声を聞いてはくれまいか?」
神の声を聞く・・・そんなことできるわけないと思った。ひょっとして宗教行事なのだろうか、これは。
「どうやら、アリサはまだ完全でないようだ。聖女としての務めを果たすことは出来ないか・・・」
確かにそんな能力があるんだったら、苦労しない。この世界のアリサは聖女のようだ。少女漫画の世界ではよく題材になる。聖女は神と人類の中間に位置する存在で、神のお告げを人間に伝達する役割がある。
いや、そんなことできないでしょう・・・。
「まずいな・・・聖女の役不足ということになると、いつまた隣国が攻めてくるのか、見極めることが出来ないじゃないか・・・」
聖女が戦争に関わるというのも、これまた有名な事実である。
「なあ、アリサ?本当に聞こえてこないのか?」
ロイド様は相当焦っているようだった。
「ひょっとして・・・君は偽物?」
ロイド様がこっそりと呟いて・・・その波紋が恐る恐る周囲に広がった。
「ロイド様、いくらなんでもそれはないでしょう。だって・・・こちらにいらっしゃるアリサ様は私どもが知っているアリサ様ではないですか」
「まあ、それはそうだが・・・世の中には外見のそっくりな人間が3人はいるというからな・・・」
「そんな、いくらなんでも・・・都合よくアリサ様の偽物が紛れ込んだとおっしゃるのですか?」
「というよりも、神の声が聞こえないことが一番問題なんだ・・・神の導きがなければ、この戦に勝利することは出来ないのだから・・・」
ロイド様は嘆いていた。
「ああ、どうしたものだろうか・・・」
私も心の中で嘆いていた。いや、見た目はそっくりかもしれないけど、所詮は偽物。聖女も偽物・・・神の声なんて聞こえるわけがない・・・・・・・・・。
「西の方角だ・・・」
ふと、無意識のうちにそんな声が聞こえてきた。
「西の方角、砂漠の遠方に敵の姿あり殲滅せよ・・・」
私はこの微かに聞こえた声を自ら発した。
「西の方角、砂漠の遠方に敵の姿あり・・・」
私がこう言うと、途端にロイド様の硬い表情が和らいだ。
「砂漠の遠方・・・確かに神の声なのだな?」
「ええ、その通りでございます・・・」
これが間違いであったら・・・私の人生はここで終わってしまうと思った。戦争において誤った情報を伝達することほど罪深いことはないから。
「でかしたぞ!直ちに軍勢を派遣するのだ!」
ロイド様の表情がすっかりとよくなった。間違っていませんように・・・私は心の中でそう祈った。ロイド様は私を抱き抱えて、「やはり君はできる子だな」と言った。ロイド様に抱きしめられると、恋愛感情というよりかは安堵感の方が上回った。どちらにしても、大切にしてもらっていることは実感できた。現実世界ではそのような経験が一切なかったものだから。
「アリサ・・・驚いているのか?君にとっては見慣れた景色だろうに・・・」
ロイド様の方が普段と様相の違うアリサを目の当たりにして驚いているようだった。
「いいえ、そんなことはございませんが・・・」
ひとまず弁明しておいた。なるべく怪しまれないように。
階段を下り、地下の広大な空間に降り立った。異国の神殿のように見えた。
「さあ、アリサ。いつもの儀式を始めようじゃないか・・・」
いつもの儀式・・・もちろん、何を指しているのか分からない。30秒程度沈黙の時が流れる。私はソワソワする。すると、ロイド様が怪訝そうな顔をした。
「アリサ?どうしたんだ?やはり具合が悪いのか?いつものように神の声を聞いてはくれまいか?」
神の声を聞く・・・そんなことできるわけないと思った。ひょっとして宗教行事なのだろうか、これは。
「どうやら、アリサはまだ完全でないようだ。聖女としての務めを果たすことは出来ないか・・・」
確かにそんな能力があるんだったら、苦労しない。この世界のアリサは聖女のようだ。少女漫画の世界ではよく題材になる。聖女は神と人類の中間に位置する存在で、神のお告げを人間に伝達する役割がある。
いや、そんなことできないでしょう・・・。
「まずいな・・・聖女の役不足ということになると、いつまた隣国が攻めてくるのか、見極めることが出来ないじゃないか・・・」
聖女が戦争に関わるというのも、これまた有名な事実である。
「なあ、アリサ?本当に聞こえてこないのか?」
ロイド様は相当焦っているようだった。
「ひょっとして・・・君は偽物?」
ロイド様がこっそりと呟いて・・・その波紋が恐る恐る周囲に広がった。
「ロイド様、いくらなんでもそれはないでしょう。だって・・・こちらにいらっしゃるアリサ様は私どもが知っているアリサ様ではないですか」
「まあ、それはそうだが・・・世の中には外見のそっくりな人間が3人はいるというからな・・・」
「そんな、いくらなんでも・・・都合よくアリサ様の偽物が紛れ込んだとおっしゃるのですか?」
「というよりも、神の声が聞こえないことが一番問題なんだ・・・神の導きがなければ、この戦に勝利することは出来ないのだから・・・」
ロイド様は嘆いていた。
「ああ、どうしたものだろうか・・・」
私も心の中で嘆いていた。いや、見た目はそっくりかもしれないけど、所詮は偽物。聖女も偽物・・・神の声なんて聞こえるわけがない・・・・・・・・・。
「西の方角だ・・・」
ふと、無意識のうちにそんな声が聞こえてきた。
「西の方角、砂漠の遠方に敵の姿あり殲滅せよ・・・」
私はこの微かに聞こえた声を自ら発した。
「西の方角、砂漠の遠方に敵の姿あり・・・」
私がこう言うと、途端にロイド様の硬い表情が和らいだ。
「砂漠の遠方・・・確かに神の声なのだな?」
「ええ、その通りでございます・・・」
これが間違いであったら・・・私の人生はここで終わってしまうと思った。戦争において誤った情報を伝達することほど罪深いことはないから。
「でかしたぞ!直ちに軍勢を派遣するのだ!」
ロイド様の表情がすっかりとよくなった。間違っていませんように・・・私は心の中でそう祈った。ロイド様は私を抱き抱えて、「やはり君はできる子だな」と言った。ロイド様に抱きしめられると、恋愛感情というよりかは安堵感の方が上回った。どちらにしても、大切にしてもらっていることは実感できた。現実世界ではそのような経験が一切なかったものだから。
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