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 アイントフォーヘン様は乗馬がお好きだ。私を優しく背後から包み込んで下さり、二人で乗馬する。そして、広大な敷地を散策するのが日課になっている。

「今日の風はさわやかだな」

「ええ、本当に。でも、間もなく嵐がやって来そうな雲ですわ!!!」

「本当かい???どうして、そんなことが分かるんだ???」

「ええ、なんとなくですわ。昔から雲を眺めておりまして、その形とか流れを見ているとなんとなく分かってしまうのですよ」

「へええっ、そうなのか……」

 本当はウソ……そんなことはない。間もなく冬の12月に入る。季節が変わる時には大抵大きな事件が起きる。そんな頃合いの空模様は大抵嵐なのだ。ゲームにありがちな設定……知り尽くしているからこそ予想ができる。でもまあ、そんな他愛のないこともこうして、アイントフォーヘン様の興味を引くことができるのだから、あながち悪いことではない。

「それに……これから寒波がやって来るでしょう。ああ、アイントフォーヘン様。私のわがままを一つお赦しいただくことはできましょうか???」

「何でも言ってくれ。遠慮はいらないさ」

「承知いたしました。それでは……もう少し、私に近づいてくださいますか???」

 実際のところ、乗馬の姿勢の関係で、私とアイントフォーヘン様の間には少し距離がある。

「寒いのか???」

「ええ、身も心も……段々寒くなってくるものです。ですから、あなた様のお力で、この冷え切った私を温めて下されば幸いなのですが……」

「それくらい、お安い御用だ……」

 そう言って、アイントフォーヘン様は私との距離を縮めてくださった。ああ、アイントフォーヘン様の温もりが直に伝わってくる……なんて幸せなのでしょう!!!

「……こんな感じでいいのか???」

 でも、その影響でアイントフォーヘン様は馬の扱いが少し下手になってしまう。ああ、これもわざとなのだ。あと300メートルほど進めば大きな木の下……目測を誤ってしまい、馬が大木にぶつかってしまう。そのはずみで二人は地面に落ちてしまう……でも、アイントフォーヘン様はしっかり私のことを抱きかかえていてくださるという……非常に胸の高鳴るポイントが待っているのだ。

「はい、結構でございます」

「そうか……君が温まればそれでいいのだが……なんだか少し恥ずかしいな……」

 アイントフォーヘン様の鼓動が直に伝わってくる……私と密着して緊張されているのだ。

「はい……私も恥ずかしいですが……なんだか幸せですうっ……」


 そして……私が予想していた通りお待ちかねの展開が!!!


「エカテリーナ……大丈夫か!!!」

 最初から分かっていたので、しっかりと受け身の姿勢をとることができた。それよりも、アイントフォーヘン様の落ち方の方が心配になるくらいだった。

「ええ、私は大丈夫でございます。それよりも……アイントフォーヘン様は大丈夫でございますか???」

「なに……少し背中を打ち付けただけだ。こんなの、大した怪我ではないよ。それにしても……随分と上手くかわせたものだなあ。いや、素晴らしい反射神経だね、君は」

「いいえ、たまたまですわ」

 傷を負うと、そこからイチャラブ展開が進むと言うのは乙女ゲームのテンプレ。そして……間もなく、別の嵐がやって来ることを知っており、その展開も予想通りやって来たのだった。
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