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その2
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「婚約を破棄……???それはどういう意味ですか???」
聖女エランには初耳だった。もちろん、その意味が分からなかった。だって、聖女と王子が婚約することは決まっていることであるし、エラン自身は婚約とかそういうものに大した興味を持ってはいなかったが、そういう仕来りを忠実に守るのが、聖女としての役割だと心得ていたのだった。
「ですから、私と聖女エラン様との婚約をなかったことにしようと……こう申し上げているわけでございますよ。意味わかりますか???」
「ええ、もちろん意味は分かりますが……その理由は何でしょうか???」
聖女エランがこう尋ねると、周りの貴族たちは再びクスクスと笑いだすのだった。
「ひょっとして……とぼけていらっしゃるのですか???」
王子コートリルは言った。聖女エランはもちろん、とぼけているつもりはなかった。
「別に、とぼけてなんていませんよ。ひどいことを言いますね……」
本当にひどいと、聖女エランは内心思っていた。
「まあ、お姉さま。本当にひどいのは、お姉さまの方ではないですか???」
今度は妹のメプチンが話を始めた。
「メプチン、それはどういう意味なのかしら???」
聖女エランが尋ねると、メプチンは吹き出しそうになった。
「どういう意味って……お姉さま、本当にとぼけていらっしゃるのかしら???私をさんざんコケにしてきて、そういう言い方はないんじゃありませんかしら???」
「そんなこと、私がするわけないでしょう???」
聖女エランがこう言うと、周囲の野次馬たちはおもむろにヒソヒソと話を始めた。
「あの聖女様は……ひょっとすると、本当に何もわかっていないのかしら???」
「だとしたら、本当におバカな人なのね???」
「まあ、そんな感じじゃない???ひょっとして……本当は聖女じゃないのかも???」
「確かに。本当はメプチン様のほうが聖女なのでは???」
「そう考えるほうが妥当でしょうねえ……」
なるほど、貴族たちはどうやら、聖女エランは偽物で、本当はメプチンのほうが聖女だと考えているようだった。
「どう思いますか、コートリル様???」
メプチンが尋ねると、王子コートリルは、
「そうだね……やっぱり、君が本当の聖女かね???」
と言い出した。これにはさすがの聖女エランも怒り出してしまった。
「お待ちください。コートリル殿。あなたは何を言っているのですか???私は神より認証された正真正銘の聖女ですよ???それを偽物だって……なんて罰当たりなことを!!!」
「あら、だとしたら、聖女様は妹を自由にいじめる権利があるとおっしゃいますの???」
メプチンは言った。聖女エランにしてみれば、これは寝耳に水だった……。
聖女エランには初耳だった。もちろん、その意味が分からなかった。だって、聖女と王子が婚約することは決まっていることであるし、エラン自身は婚約とかそういうものに大した興味を持ってはいなかったが、そういう仕来りを忠実に守るのが、聖女としての役割だと心得ていたのだった。
「ですから、私と聖女エラン様との婚約をなかったことにしようと……こう申し上げているわけでございますよ。意味わかりますか???」
「ええ、もちろん意味は分かりますが……その理由は何でしょうか???」
聖女エランがこう尋ねると、周りの貴族たちは再びクスクスと笑いだすのだった。
「ひょっとして……とぼけていらっしゃるのですか???」
王子コートリルは言った。聖女エランはもちろん、とぼけているつもりはなかった。
「別に、とぼけてなんていませんよ。ひどいことを言いますね……」
本当にひどいと、聖女エランは内心思っていた。
「まあ、お姉さま。本当にひどいのは、お姉さまの方ではないですか???」
今度は妹のメプチンが話を始めた。
「メプチン、それはどういう意味なのかしら???」
聖女エランが尋ねると、メプチンは吹き出しそうになった。
「どういう意味って……お姉さま、本当にとぼけていらっしゃるのかしら???私をさんざんコケにしてきて、そういう言い方はないんじゃありませんかしら???」
「そんなこと、私がするわけないでしょう???」
聖女エランがこう言うと、周囲の野次馬たちはおもむろにヒソヒソと話を始めた。
「あの聖女様は……ひょっとすると、本当に何もわかっていないのかしら???」
「だとしたら、本当におバカな人なのね???」
「まあ、そんな感じじゃない???ひょっとして……本当は聖女じゃないのかも???」
「確かに。本当はメプチン様のほうが聖女なのでは???」
「そう考えるほうが妥当でしょうねえ……」
なるほど、貴族たちはどうやら、聖女エランは偽物で、本当はメプチンのほうが聖女だと考えているようだった。
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