婚約破棄の原因は婚約者が妹を気に入ったから ~偽聖女と認定するのは結構ですが、どうなっても知りませんよ?~

岡暁舟

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その3

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「いじめているって……私がどうしてあなたをいじめる必要があるのよ???」

聖女エランはメプチンに尋ねた。すると、メプチンは首を横に振って、

「お姉さまは何もわかっていらっしゃらないようですね。ああ、呆れてしまいますわ……。ねえ、コートリル様???」

「ああ、全くだな……」

コートリルも、そして、メプチンも同じタイミングでため息をついた。

「お待ちなさい!!!」

聖女エランは叫んだ。

「私は何もしていません。どうして、メプチンをいじめる必要があるというの!!!」

誤解であると、聖女エランは声を大にして言いたかった。だが、今自分の置かれている立場が非常に脆弱なものになっていることには薄々気が付いていた。いつから潮目が変わったのか……聖女エランは冷静に考えてみた。

「それでは……この裂けた洋服は何ですの???」

メプチンはおもむろに洋服を取り出した。確かに裂けている……自分で意図的に破いたのだろう、普通に考えれば誰でもわかることだった。

「そして……お姉さまが私の大切な花瓶を割ったことも……これが証拠ですわ!!!」

自分で意図的に落とした……普通に考えれば誰でもわかることだった。


「お姉さま……お姉さまは私を無理やり魔物との戦いに招き、私を殺そうとした!!!」

むしろ守ったのだ。メプチンは一時期、魔物の手段に目をつけられていた。そのことを悟った聖女エランは、メプチンに危害が加わらないように、全力で守り抜いたのだった。それが聖女の役割……何よりも姉として妹を守り抜くという決意の現れだった。確かに、仲たがいすることも時にはあった。だがしかし、聖女エランがその一生をかけて守り抜きたいもの……何よりも大切なものは、自分と同じ血の流れている妹のメプチンだった。

その決意が、この瞬間粉々に崩れ去ってしまった。自分は今まで何をしてきたのだろう。あれだけ命を懸けて戦った意味はなかったのか……そう思うわけだった。

どうして……どうしてこんなことに???私がどこで何を間違えたって言うの???

聖女エランは一人で悩んだ。これはもう、誰にも解決できない問題だった。そのスケールはあまりにも大きすぎて、まさに人間の対処できるボリュームをはるかに凌駕していたのだった。

「ねえ、お姉さま???それほどひどいことをしてきてもなお、自分は聖女だと言い張るおつもりですの???」

メプチンはもう、自分の味方ではなく、敵になった……この時、聖女エランはそう悟ったのだった……。
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