婚約破棄の原因は婚約者が妹を気に入ったから ~偽聖女と認定するのは結構ですが、どうなっても知りませんよ?~

岡暁舟

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その6

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この惨状を見届けた王子コートリル、そして妹のメプチン、あるいはその他大勢の貴族たちは次元の違う恐怖に陥った。

「あの最強の軍人たちが……跡形もなく消えてしまった……どこに???」

「ああ、灰になったんだ。あの一瞬の竜巻に飲み込まれて……まるで、最初から存在しなかったかのように消えてしまった……」

「そんなこと……あり得るのか???」

「現に起こっているじゃないか!!!!」

「ひょっとして……次は私たちも???」

「おいおい、そんなことになったら大変だ。早く逃げなくちゃ!!!!!」

「聖女じゃない、悪魔だ!!!!!」

悪魔……確かに、見方によっては悪魔だった。エランはそのまま、王子コートリルとメプチンをまっすぐにらみつけた。

二人は一瞬、呼吸が止まった。蛇に睨まれた蛙……いや、神に睨まれた蛙のように。

「おいおい……バカな冗談はやめてくれ!!!!」

「そうですわ、お姉さま!!!どうして、私たちを殺すおつもりですか????」

「殺すですって???ああ、それもいいかもしれないわね……。とりあえずは、この城でも吹き飛ばしましょうか???私がこのまま地獄に落ちる前に……皆さんを巻き沿いにして……」

エランは冗談で言ったわけではなかった。というよりも、もはや何も言い返すことなんてできなかったのだ……。彼女はもはや人間のなせる業を超えていた。だがそれは、彼女が正真正銘の聖女だったから……まあ、当たり前の話なのだが……。

「おいおい、誰かこの悪魔を止めることはできないのか???」

誰かがそう叫んだ。でも、当然誰もいなかった。

「貴様らは逃げるのか????この私をおいて逃げるのか????王家に対する忠誠心はどこに行ったのだ?????」

王子コートリルはこの期に及んでも、そのメンツにこだわるようだった。エランはこの男がますます嫌いになった。

「お前ら、命がけで私と婚約者のメプチンを守ろうと……そうは思わないのか!!!!!」

威勢のいい王子コートリル……だが、それに従おうとする者は全くいなかった。

「全く……情けないぞ!!!!!」

王子コートリルは威勢だけはよかった。だがしかし、すぐさまエランが睨みを利かすと、おびえてしまったのだった。

「お姉さま!!!!」

何かを懇願するような目をしたメプチン……だが、その視線はエランには届かなかった。

「お姉さま、私が全て悪かったのです!!!!ねえ、全て謝りますから、どうかお許しくださいませ!!!!!」

メプチンの声なんて、もはや全く響いてこなかった。というか、最初から聞くつもりなんて全くなかった。都合のいい女……そんな人間のことなんてもうどうでもいいのだ。

「さようなら……飛べるかしら????」

エランはもう一度目を閉じた。すると、エランははるか高く飛び上がった。鳥のように大きな翼を広げて……どこか遠くの世界に飛び立っていくのだった……。
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