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その1
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一度足を踏み入れてしまえば、二度と帰ってくることができないと言われている広大な砂漠。その奥地には、莫大な秘宝が眠っていた。
秘宝を手にしたものは、その後、王族と婚約することが確約されていた。つまり、田舎出身の令嬢マリーにとっては、大きな出世チャンスだったのだ。マリーは生まれながらに、相当な野心家だった。自分よりも美しいと崇められる他の令嬢の弱点を見出し、自分が専ら優れているとアピールするために、自らを磨き上げた。
容姿や体つきは、とてもかなわない。自分はどちらかと言うと男っぽい。そんなマリーが、他の令嬢に勝ることと言えば、例えば戦争に参加して、人並外れた成果を上げるだとか、冒険をして、王家の隠された秘宝を手に入れるとか、そういうアウトドアな活動だった。
「いっちょ、やってやろうじゃないか!」
マリーは両親の頑なな説得を拒み、一人、砂漠の冒険を始めた。敵の首を掻き切ることさえ、何とも思わないマリーは、道中、獣が出てきたら素手で殺しまくった。彼らの強さに降参してしまう人間たちが多い中、マリーは怖気づくことなく、道を進んでいった。
「自分が出世するためならば、命を懸けたって平気さ!あのまま、田舎で死んでくくらいなら、荒野で死んだほうがましさ!」
一週間の旅の末、マリーはとうとう、砂漠に眠る秘宝を手に入れた。そして、すぐさま王都に向かった。
「砂漠の秘宝を持ち帰ったのだが……王族の方にお目通り願えないだろうか?」
マリーはいきなり、王の住む城に向かった。見張りをしていた軍人たちは、
「何を言っているんだ?」
と首を傾げた。すると、マリーは一人の腕を強引にねじ伏せて、
「この私、マリー・バークレーが砂漠の秘宝を持ち帰った、と言っておるのだ!約束によれば、この宝を持ち帰った者は王族と婚約することができるのだそうだ!だから、早くお目通りを願いたい!」
マリーの大きな声は、城のてっぺんで執務をこなしていた王と、その息子である第一王子ハリスに届いた。
「お父様……あの女、どこかで見覚えがありますような……」
二人はてっぺんから、少し遠くのマリーを眺めていた。
「ああ、そうですよ!先の大戦に女ながら従軍して、功績を上げたバークレー伯爵の娘マリーですよ!」
それを聞いて、王も、
「ああ、そう言えば、いたな……」
と言った。
「お父様、マリーはきっと、砂漠の宝を手に入れたのですよ!これで私たちの夢がかないましたね!ああ、末永く安泰です!」
ハリスは喜んだ。そして、侍従を呼びつけ、
「今すぐ、令嬢マリーを、ここへ丁重にお連れしろ。すぐにだ」
と、命令した。
ハリスに認められたマリーは、ハリスと王に面会し、砂漠で拾った秘宝を全て披露した。
「素晴らしい……君は大した女だ!気に入ったぞ!」
ハリスは、王に向かって、
「お父様。約束通り、私はマリーと婚約することにいたします!」
と言った。王は、何も言わず、ただ何度か首を縦に振った。
「ありがとうございます!マリー。喜ぶがいい。そなたはこれから、第一王子ハリスの妃となるのだ!」
話がトントン拍子に進んで、マリーも喜んだ。そんな二人の姿を、遥か遠くで眺めている一人の女がいた。
「これで全て計画通りですわ。後は、披露宴の時に王子様を…………」
人一倍敵に敏感だったマリーであったが、この度の敵に気付くことは今のところなかった。
秘宝を手にしたものは、その後、王族と婚約することが確約されていた。つまり、田舎出身の令嬢マリーにとっては、大きな出世チャンスだったのだ。マリーは生まれながらに、相当な野心家だった。自分よりも美しいと崇められる他の令嬢の弱点を見出し、自分が専ら優れているとアピールするために、自らを磨き上げた。
容姿や体つきは、とてもかなわない。自分はどちらかと言うと男っぽい。そんなマリーが、他の令嬢に勝ることと言えば、例えば戦争に参加して、人並外れた成果を上げるだとか、冒険をして、王家の隠された秘宝を手に入れるとか、そういうアウトドアな活動だった。
「いっちょ、やってやろうじゃないか!」
マリーは両親の頑なな説得を拒み、一人、砂漠の冒険を始めた。敵の首を掻き切ることさえ、何とも思わないマリーは、道中、獣が出てきたら素手で殺しまくった。彼らの強さに降参してしまう人間たちが多い中、マリーは怖気づくことなく、道を進んでいった。
「自分が出世するためならば、命を懸けたって平気さ!あのまま、田舎で死んでくくらいなら、荒野で死んだほうがましさ!」
一週間の旅の末、マリーはとうとう、砂漠に眠る秘宝を手に入れた。そして、すぐさま王都に向かった。
「砂漠の秘宝を持ち帰ったのだが……王族の方にお目通り願えないだろうか?」
マリーはいきなり、王の住む城に向かった。見張りをしていた軍人たちは、
「何を言っているんだ?」
と首を傾げた。すると、マリーは一人の腕を強引にねじ伏せて、
「この私、マリー・バークレーが砂漠の秘宝を持ち帰った、と言っておるのだ!約束によれば、この宝を持ち帰った者は王族と婚約することができるのだそうだ!だから、早くお目通りを願いたい!」
マリーの大きな声は、城のてっぺんで執務をこなしていた王と、その息子である第一王子ハリスに届いた。
「お父様……あの女、どこかで見覚えがありますような……」
二人はてっぺんから、少し遠くのマリーを眺めていた。
「ああ、そうですよ!先の大戦に女ながら従軍して、功績を上げたバークレー伯爵の娘マリーですよ!」
それを聞いて、王も、
「ああ、そう言えば、いたな……」
と言った。
「お父様、マリーはきっと、砂漠の宝を手に入れたのですよ!これで私たちの夢がかないましたね!ああ、末永く安泰です!」
ハリスは喜んだ。そして、侍従を呼びつけ、
「今すぐ、令嬢マリーを、ここへ丁重にお連れしろ。すぐにだ」
と、命令した。
ハリスに認められたマリーは、ハリスと王に面会し、砂漠で拾った秘宝を全て披露した。
「素晴らしい……君は大した女だ!気に入ったぞ!」
ハリスは、王に向かって、
「お父様。約束通り、私はマリーと婚約することにいたします!」
と言った。王は、何も言わず、ただ何度か首を縦に振った。
「ありがとうございます!マリー。喜ぶがいい。そなたはこれから、第一王子ハリスの妃となるのだ!」
話がトントン拍子に進んで、マリーも喜んだ。そんな二人の姿を、遥か遠くで眺めている一人の女がいた。
「これで全て計画通りですわ。後は、披露宴の時に王子様を…………」
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