隣国将軍と公爵令嬢の新しい世界

岡暁舟

文字の大きさ
2 / 10

1

しおりを挟む
「私の愛しい恋人さん……やっと見つけることができた……」

「恋人さん……それって、私のことですか???」

「ええ、そうですよ。マリア……私はずっと、あなたのことを探していたのですから……」

私にはいまいちわからなかった。というか、どうしてこれほど美しい男性に愛されるのだろうか……やっぱり、私にはわからなかった。

「そんなことを言われても……あの、どこかで会ったこととかありますでしょうか???」

「ひょっとして……私のことを忘れていますか???」

「忘れてるというか……本当に初めましてって感じなんですが……」

「ああ、やはりそういうことになりますか……」

ピーター将軍なんて……やっぱり、私には見当がつかなかった。

「幼いころ……何度も会っているのですが……お忘れですか???」

「幼いころ……でも、私は隣国に出向いたことなんてありませんよ???」

「ええ、その通りです。でもね、私はもともとこの国に来ていたんですよ。父が外交官でしたから。あの時はまだ、今のような状況にはなっておりませんで……」

「そうなんですか……」

そんなことを言われても、やはり見当がつかなかった。どちらにしても、私にはわからないことだった。

「それで……私をどうするおつもりなんですか???」

私はピーター将軍に質問した。すると、彼はあっさりとこう答えた。

「つまりね、私は君を独占したいんですよ。あなたと私だけの世界を作りたい……そうすれば、一生あなたのことを愛するだけで、私はこれまで馬鹿みたいに戦争をしてきましたが……その罪を全て浄化することができると……まあ、このように考えているわけですよ……」

とても、そんな簡単にいくとは思わないが……少なくとも興味はわいてきた。

「それで……私をこの世界から連れ出そうと……こういうわけですか???」

「私と一緒についてきてくれますか???」

「あの……」

私の視界に一瞬、ザイツ様が入った。彼はぐっすりと寝入っているようだった。そして、その横には少しばかり震え上がったシュード子爵の姿があった。

「あれ……ザイツ様は……ひょっとして……」

「ただ眠っているだけですよ……あんまり夜が遅いものだから……」

ピーター将軍はこう言った。

「夜が遅いから……それだけの理由なんでしょうか???」

絶対に違うと思った。ザイツ様はもう……この世界にはいないのではないか???そんな疑問が膨れる一方だった。

「もう彼は……あなたにとっては他人のような存在でしょう???だからね、始めから気にする必要なんてないんですよ……」

私にはそうは思えなかったが……まあ、彼の言うことも少しは信用できた。だから、私はそのまま彼の言う事を信じた。そうするほど、シュード子爵が余計に緊張した面持ちとなるのがよくわかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます

さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。 パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。 そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。 そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

最後のスチルを完成させたら、詰んだんですけど

mios
恋愛
「これでスチルコンプリートだね?」 愛しのジークフリート殿下に微笑まれ、顔色を変えたヒロイン、モニカ。 「え?スチル?え?」 「今日この日この瞬間が最後のスチルなのだろう?ヒロインとしての感想はいかがかな?」 6話完結+番外編1話

笑わない妻を娶りました

mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。 同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。 彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

侯爵様の懺悔

宇野 肇
恋愛
 女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。  そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。  侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。  その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。  おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。  ――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。

過去に戻った筈の王

基本二度寝
恋愛
王太子は後悔した。 婚約者に婚約破棄を突きつけ、子爵令嬢と結ばれた。 しかし、甘い恋人の時間は終わる。 子爵令嬢は妃という重圧に耐えられなかった。 彼女だったなら、こうはならなかった。 婚約者と結婚し、子爵令嬢を側妃にしていれば。 後悔の日々だった。

処理中です...