群れない僕らの単独記

ぼくと

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片角羊のオルドル

片角羊

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 片角が群れを導く。どこまでも広い草原の、牧場まで連れていく。彼以外の羊達は、能面のように表情を変えることがない。

 片角の横に、見知った小鳥がついてきた。小鳥の中でもひときわ元気な、金髪の少女だ。

「オルドル!今日も群れはまとまってるね。これも全部オルドルのおかげだよ」

 片角の羊の名前はオルドル。もう直ぐ羊を引退する老人だ。

懐っこい少女は、オルドルの片腕にぶら下がった。金色の髪がオルドルの鼻先をくすぐる。

「くすぐったいぞ。イデアル」

 金色の小鳥はイデアル。まだ幼い少女の牧羊犬だ。牧羊犬の中でも、メンタルケアに特化していて、外で移動することはあまりない。

「背中にお乗り、もう疲れているだろう?」

「ありがとう!オルドル大好き」

 本心からの言葉に、思わずほっこりとしてしまうオルドル。イデアルを背中に乗せたまま、オルドルは前に進んでいく。

「もうすぐ牧場につくぞい」

「楽しみだね!」

 オルドル達の視界に入るほど、牧場の位置は近づいてる。近づけば近づくほど、牧場が頑丈な建物だと言うことがわかる。

「私たちは中に入らないの?」

「そうじゃよ。一度入ったら戻れないからのぉ」

 中から音は聞こえてこない。完全なる防音になっているようだ。オルドルは顔を少しの間しかめ、すぐにいつもの笑顔になった。

「そうじゃ、イデアル。牧場の前の花畑を見ていかんか。人間の国にはない花があるかもしれんぞ?」

「行きたい!」

「ほっほっほ。もう少し歩けそうかな?」

 オルドル達は、花畑に向かって移動した。花畑には色とりどりの花が咲いている。

「イデアル。儂は用があるのじゃ。この花畑で遊んだら、馬車で一人で帰るんじゃよ」

「オルドルは一緒に帰らないの?」

「儂にはやる事があるのじゃ。帰ったら一緒にお菓子を食べよう」

「わかった!またね。オルドル」

 オルドルは約束をすると、イデアルを置いて建物へと向かっていく。

 建物の前には、オルドルを待っていた羊達が大勢いる。何年か前の行進と違い、今年は若い羊がたくさん残った。しばらくの間、人手に困る事はないだろう。

「皆、建物の中に入るように。入った後は牧羊犬の言うことをちゃんと聞くんじゃよ。そしていれば、羊以外にもなれるからの」

 オルドルは重い門を一人で開けると、羊達に移動するようにうながした。

 羊達は何も喋らずに、足音だけを鳴らして進んでいく。

 やがて角なし羊が、一人も外にいない状態になった。

 門の前には片角羊のみ。羊の群れを今日も見送った。






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