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深夜のカフェ ①
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梶野は黙ったまま、車を運転する。数時間前に通った道を。そして智樹も黙ったまま、数時間前に見た車窓を眺める。
智樹は幸樹と一緒にいた時の体の不調も、徐々に良くなっていき、目の前の景色も鮮明に見えてきた。そうしていく中、智樹の中の疑問は大きくなっていく。
どうしえ梶野さんは、俺のスマホに自分の携帯番号を登録したんだろう?
どうしてスマホに着信があった時、発信者は『父』と表示されていたのに、かけてきたのは梶野さんだったんだろう?
これは聞いてもいいことだろうか?
日頃、梶野とあまり話さない…と言うか、梶野に話しかけづらい智樹は、何をどう話しかけ、聞いたらいいかわからなかった。
このままだと家に着いてしまう…。
智樹が聞くか聞かないか迷っていると、
「もし智樹さんが大丈夫であれば、私の話に少し付き合ってもらえないかい?」
運転する梶野が智樹に話しかけてきた。
「え?」
「話、少し長くなるから…」
前を向いたまま運転する梶野だったが、その声はいつもより柔らかかった。
梶野は夜遅くまでしているカフェに、車を停めた。
「どうぞ入って」
梶野が店のドアを開け、智樹を招き入れると、
店内もカアンティーク風の作りで、温かみがある。店内に数人いた客も、まばらに座っており、梶野は智樹を窓際の1番奥の席に案内する。
「夜間営業って珍しいでしょ?」
メニューを持ってきた30代前半ぐらいの店員が、智樹と梶野のいるテーブルにやってきた。よくよくみると、どことなく梶野に似ていて…。
「初めまして。梶野涼と言います。そして梶野の兄で、一応、ここのオーナーしてます」
肩下10センチほどあるだろうか、少し長めの髪を後ろにくくり、ぱりっとアイロンがあたりシワひとつない白シャツにジーンズ。腰で結ぶ茶色のサロンエプロンにニコッと笑う笑顔が、とても爽やかだ。
「兄さん、ここ、飲食店なんだから俺はずっと髪切れっていってるだろ?」
「後ろでくくってるから、大丈夫だ。それにこの髪型、評判いいんだぞ」
梶野が呆れ顔で言うが、涼は全く聞く気がない。
「それで、えーっと…」
梶野の事は全く気にも止めず、涼は智樹を見る。
「あ、智樹…、河上智樹と言います」
涼が自己紹介したのに、智樹はまだしていなかった事に気がつき、慌てて自己紹介をした。
「智樹くん、飲み物は何にされますか?」
メニューを手渡された智樹が表紙を捲ると、
「わぁ~」
ドリンクメニューのコーヒーはもちろんハーブティーやノンカフェインドリンク、軽食、ケーキセットの名前が写真付きではなく、色鉛筆で実物そっくりの手書きイラストが全て描かれている。
どのイラストも素敵だ。
俺、こういうの好き。
さっきまで硬っていた智樹の表情が、少し解れる。
「ホットのカフェオレください。あの、できれば少し甘めでお願いします」
「かしこまりました」
智樹が注文すると、涼はメニューを閉じる。
あれ?梶野さん、何も注文していないのに…
チラッと智樹は梶野の方を見たが、特に梶野自身もその行動を止めることなく、涼がキッチンに入るのを見届けて、智樹の方を見た。
「あの…、梶野さんは…注文なさらないんですか?」
「あー、俺だっても智樹くんと同じ、甘めのホットカフェオレってもう決まって、兄さんわかってるから大丈夫」
!!
智樹は少し驚いた。梶野が自分自身のことを|《・》と言ったことと、明らかにブラックコーヒーしか飲まなさそうなのに、カフェオレのしかも甘めを注文したからだ。
「俺、実は甘党なんです。この顔で甘めのカフェオレって意外だよね」
智樹が初めてみた梶野の笑顔は、涼そっくりだった。
智樹は幸樹と一緒にいた時の体の不調も、徐々に良くなっていき、目の前の景色も鮮明に見えてきた。そうしていく中、智樹の中の疑問は大きくなっていく。
どうしえ梶野さんは、俺のスマホに自分の携帯番号を登録したんだろう?
どうしてスマホに着信があった時、発信者は『父』と表示されていたのに、かけてきたのは梶野さんだったんだろう?
これは聞いてもいいことだろうか?
日頃、梶野とあまり話さない…と言うか、梶野に話しかけづらい智樹は、何をどう話しかけ、聞いたらいいかわからなかった。
このままだと家に着いてしまう…。
智樹が聞くか聞かないか迷っていると、
「もし智樹さんが大丈夫であれば、私の話に少し付き合ってもらえないかい?」
運転する梶野が智樹に話しかけてきた。
「え?」
「話、少し長くなるから…」
前を向いたまま運転する梶野だったが、その声はいつもより柔らかかった。
梶野は夜遅くまでしているカフェに、車を停めた。
「どうぞ入って」
梶野が店のドアを開け、智樹を招き入れると、
店内もカアンティーク風の作りで、温かみがある。店内に数人いた客も、まばらに座っており、梶野は智樹を窓際の1番奥の席に案内する。
「夜間営業って珍しいでしょ?」
メニューを持ってきた30代前半ぐらいの店員が、智樹と梶野のいるテーブルにやってきた。よくよくみると、どことなく梶野に似ていて…。
「初めまして。梶野涼と言います。そして梶野の兄で、一応、ここのオーナーしてます」
肩下10センチほどあるだろうか、少し長めの髪を後ろにくくり、ぱりっとアイロンがあたりシワひとつない白シャツにジーンズ。腰で結ぶ茶色のサロンエプロンにニコッと笑う笑顔が、とても爽やかだ。
「兄さん、ここ、飲食店なんだから俺はずっと髪切れっていってるだろ?」
「後ろでくくってるから、大丈夫だ。それにこの髪型、評判いいんだぞ」
梶野が呆れ顔で言うが、涼は全く聞く気がない。
「それで、えーっと…」
梶野の事は全く気にも止めず、涼は智樹を見る。
「あ、智樹…、河上智樹と言います」
涼が自己紹介したのに、智樹はまだしていなかった事に気がつき、慌てて自己紹介をした。
「智樹くん、飲み物は何にされますか?」
メニューを手渡された智樹が表紙を捲ると、
「わぁ~」
ドリンクメニューのコーヒーはもちろんハーブティーやノンカフェインドリンク、軽食、ケーキセットの名前が写真付きではなく、色鉛筆で実物そっくりの手書きイラストが全て描かれている。
どのイラストも素敵だ。
俺、こういうの好き。
さっきまで硬っていた智樹の表情が、少し解れる。
「ホットのカフェオレください。あの、できれば少し甘めでお願いします」
「かしこまりました」
智樹が注文すると、涼はメニューを閉じる。
あれ?梶野さん、何も注文していないのに…
チラッと智樹は梶野の方を見たが、特に梶野自身もその行動を止めることなく、涼がキッチンに入るのを見届けて、智樹の方を見た。
「あの…、梶野さんは…注文なさらないんですか?」
「あー、俺だっても智樹くんと同じ、甘めのホットカフェオレってもう決まって、兄さんわかってるから大丈夫」
!!
智樹は少し驚いた。梶野が自分自身のことを|《・》と言ったことと、明らかにブラックコーヒーしか飲まなさそうなのに、カフェオレのしかも甘めを注文したからだ。
「俺、実は甘党なんです。この顔で甘めのカフェオレって意外だよね」
智樹が初めてみた梶野の笑顔は、涼そっくりだった。
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