108 / 202
お別れ遠足 ⑦
しおりを挟む
「今後は気を付けて行きます……。教えていただきありがとうございました」
知らなかったとはいえ、千景を不安な気持ちにしてしまっていたことを考えると、胸が痛い。
瑞稀は目を伏せた。
「成瀬さんは、晴人とよりを戻したい……とか、ある?」
「え!?」
唐突に質問され、瑞稀は目を見開き昴を見つめた。
静かに昴は車を路肩に停め、しっかりと瑞稀を見つめた。
「それは……」
本当ははっきりと「もうお付き合いするつもりは、ありません」と瞬時に言い切ることができなかった。だが、
「そのつもりはありませんし、もともと山﨑さんとの間に愛はありませんでした」
気持ちと真反対のことを言った。
そうすることが自分の中で、晴人への思いを断ち切れそうだったから。
「だからヨリを戻すも何も……何もないんです」
気持ちを押し殺し、今度こそ最低な人間になろうとした。
「本当に?」
「はい」
今度ははっきりと答えた。
「もし……もし成瀬さんが晴人とヨリを戻すつもりがないのなら……」
昴は瑞稀の方へ体ごと向け、じっと瑞稀の瞳を見つめた。
「俺を選んでくれない?」
「……え……?」
真っ直ぐに見つめられた昴の瞳が瑞稀を射抜く。
「成瀬さんのことが、好きなんだ」
「!!」
あまりにも唐突な告白に、瑞稀の頭は真っ白になる。
「今まで人を好きになることがなかったのに、成瀬さんと出逢って初めて人を好きになった。一目惚れなんだ。今日成瀬さんと一緒にいて、やっぱり俺は成瀬さんしかいないって確信したんだ」
昴はありったけの勇気を振り絞っての告白した。
本当なら答えを待つ間、期待と不安が入り混じっているはずなのに、昴の瞳からは悲しみしか感じられない。
まるで自分は選んでもらえないとわかっているよう。
「もし俺を選んでくれるなら、俺は君にそんな顔はさせない。ずっと君の隣りにいて、君と千景くんが笑顔でいられることだけを考えられる。だから……」
「ごめんなさい!」
瑞稀は昴の言葉を遮るように言った。
「僕と内藤さんでは身分が違いすぎます。それに僕みたいな人より、内藤さんには素敵な方が…」
「いないよ」
より一層の悲しそうに微笑みながら、今度は昴が瑞稀の言葉を遮った。
「身分なんて関係ないし、俺は成瀬さんと一緒にいたいんだ」
「……」
「成瀬さんに忘れられない人がいて、その人だけを想い続けているように、俺の中では、その人が成瀬さん、君なんだ。すぐに答えが欲しいわけじゃないんだ。いつまでも待ってる。だからじっくり考えて欲しい……」
それだけ言うと、また車を発進させた。
知らなかったとはいえ、千景を不安な気持ちにしてしまっていたことを考えると、胸が痛い。
瑞稀は目を伏せた。
「成瀬さんは、晴人とよりを戻したい……とか、ある?」
「え!?」
唐突に質問され、瑞稀は目を見開き昴を見つめた。
静かに昴は車を路肩に停め、しっかりと瑞稀を見つめた。
「それは……」
本当ははっきりと「もうお付き合いするつもりは、ありません」と瞬時に言い切ることができなかった。だが、
「そのつもりはありませんし、もともと山﨑さんとの間に愛はありませんでした」
気持ちと真反対のことを言った。
そうすることが自分の中で、晴人への思いを断ち切れそうだったから。
「だからヨリを戻すも何も……何もないんです」
気持ちを押し殺し、今度こそ最低な人間になろうとした。
「本当に?」
「はい」
今度ははっきりと答えた。
「もし……もし成瀬さんが晴人とヨリを戻すつもりがないのなら……」
昴は瑞稀の方へ体ごと向け、じっと瑞稀の瞳を見つめた。
「俺を選んでくれない?」
「……え……?」
真っ直ぐに見つめられた昴の瞳が瑞稀を射抜く。
「成瀬さんのことが、好きなんだ」
「!!」
あまりにも唐突な告白に、瑞稀の頭は真っ白になる。
「今まで人を好きになることがなかったのに、成瀬さんと出逢って初めて人を好きになった。一目惚れなんだ。今日成瀬さんと一緒にいて、やっぱり俺は成瀬さんしかいないって確信したんだ」
昴はありったけの勇気を振り絞っての告白した。
本当なら答えを待つ間、期待と不安が入り混じっているはずなのに、昴の瞳からは悲しみしか感じられない。
まるで自分は選んでもらえないとわかっているよう。
「もし俺を選んでくれるなら、俺は君にそんな顔はさせない。ずっと君の隣りにいて、君と千景くんが笑顔でいられることだけを考えられる。だから……」
「ごめんなさい!」
瑞稀は昴の言葉を遮るように言った。
「僕と内藤さんでは身分が違いすぎます。それに僕みたいな人より、内藤さんには素敵な方が…」
「いないよ」
より一層の悲しそうに微笑みながら、今度は昴が瑞稀の言葉を遮った。
「身分なんて関係ないし、俺は成瀬さんと一緒にいたいんだ」
「……」
「成瀬さんに忘れられない人がいて、その人だけを想い続けているように、俺の中では、その人が成瀬さん、君なんだ。すぐに答えが欲しいわけじゃないんだ。いつまでも待ってる。だからじっくり考えて欲しい……」
それだけ言うと、また車を発進させた。
33
あなたにおすすめの小説
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
アルファ王子に嫌われるための十の方法
小池 月
BL
攻め:アローラ国王太子アルファ「カロール」
受け:田舎伯爵家次男オメガ「リン・ジャルル」
アローラ国の田舎伯爵家次男リン・ジャルルは二十歳の男性オメガ。リンは幼馴染の恋人セレスがいる。セレスは隣領地の田舎子爵家次男で男性オメガ。恋人と言ってもオメガ同士でありデートするだけのプラトニックな関係。それでも互いに大切に思える関係であり、将来は二人で結婚するつもりでいた。
田舎だけれど何不自由なく幸せな生活を送っていたリンだが、突然、アローラ国王太子からの求婚状が届く。貴族の立場上、リンから断ることが出来ずに顔も知らないアルファ王子に嫁がなくてはならなくなる。リンは『アルファ王子に嫌われて王子側から婚約解消してもらえば、伯爵家に出戻ってセレスと幸せな結婚ができる!』と考え、セレスと共にアルファに嫌われるための作戦を必死で練り上げる。
セレスと涙の別れをし、王城で「アルファ王子に嫌われる作戦」を実行すべく奮闘するリンだがーー。
王太子α×伯爵家ΩのオメガバースBL
☆すれ違い・両想い・権力争いからの冤罪・絶望と愛・オメガの友情を描いたファンタジーBL☆
性描写の入る話には※をつけます。
11月23日に完結いたしました!!
完結後のショート「セレスの結婚式」を載せていきたいと思っております。また、その後のお話として「番となる」と「リンが妃殿下になる」ストーリーを考えています。ぜひぜひ気長にお待ちいただけると嬉しいです!
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
まばゆいほどに深い闇(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
グラフィックアーティストの佐枝零は長年オメガであることを隠し、ベータに偽装して生活している。学生時代に世間で作品が話題になったこともあるが、今はできるだけ表に出ず、単調で平凡な毎日を送っていた。そんな彼に思ってもみない仕事の打診がもたらされる。依頼人は佐枝が十代のころ知り合った運命のアルファ、藤野谷天藍だった! ――親の世代から続く「運命」に翻弄されるアルファとオメガの物語。
*オメガバース(独自設定あり)エリート実業家(α)×アーティスト(偽装Ω)ハッピーエンド
*全3部+幕間+後日談番外編。こちらに掲載分は幕間や番外編の構成が他サイトと異なります。本編にも若干の改稿修正や加筆あり。ネップリなどであげていた番外編SSも加筆修正の上追加しています。
*同じオメガバースのシリーズに『肩甲骨に薔薇の種』『この庭では誰もが仮面をつけている』『さだめの星が紡ぐ糸』があります。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる