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謁見 ②
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「アレキサンドロス様。それはやりすぎです」
先ほどまで聞こえていた声とは違う声が聞こえてきた。
「やりすぎか…」
「はい、おふざけがすぎます。ユベール様、もう大丈夫です。目をお開けください」
震える僕の手を、温かいものが包み込んだ。
恐る恐る目を開けると、そこにはアレキサンドロス様とは別の方が僕のそばで膝をついていた。
「お初にお目にかかります。わたくしはアレキサンドロス様の執事をしています『ヒューゴ』と申します。怖い思いをさせてしまい、申し訳ございません」
そう言いながら、ヒューゴ様は僕の手をとると立ち上がらせた。
「ユベール様はダインズ伯爵家の方ではないとお見受けいたします。どうしてダインズ家の名前を名乗られているのですか?」
ゆっくりと落ち着いた声で話しかけられ、少しずつ落ち着きを取り戻す。
決められたセリフを、間違えることなく言わないと……。
「実は私は身寄りがなく孤児院で暮らしていましたが、ダインズ様のご好意で養子に迎え入れていただいたのです…」
ひとまず要点のひとつは言えた。
このままの調子でしけば、きちんと言えるかも。
肺がいっぱいになるぐらい、空気を吸い込み吐く。
「ご好意……ですか」
僕の気持ちとは裏腹に、ヒューゴ様は何か呆れた顔でアレキサンドロス様の方を見た。
「それでは聞こう。なぜお前はここに来た?俺は『ダインズ家に俺の側室になる娘を連れてこい』と言ったのだが」
少しイラだったアレキサンドロス様が威圧的に僕を見る。
緊張から喉も口の中もカラカラだ。それでも言わないといけない。これを言うために僕は[[rb:宮殿 > ここ]]に来たんだ。
「そ、それは…殿下の元へ側室として招かれたローズ様のことを私は羨ましく思い、私の一存でローズ様の代わりに殿下の元に…やってまいりました…」
何度も練習してきた台詞を、震える声で言った。
きちんと言えたのだろうか…。
自分の出来次第で孤児院の運命が決まり、不安がばがりが募る。
「それで来たのか?」
「はい」
「自分勝手な気持ちだけで、俺を欺いてまでか?俺がそれを許すと思ってのことか?」
「…。それでも私は…どうしても殿下にお会いしたくて…」
ぎろりと睨まれた。
「ま、誠に申し訳ございません!」
とっくに死を覚悟していたのに、アレキサンドロス様に睨まれただけで心底震え上がる。
「謝って済むことか?ダインズ伯爵は知ってのことか?」
「い、いえ!私の一存でしたこと。ダインズ家とは全く関係はございません」
きつく言われていたこと。
なにがあっても『僕の一存でアレキサンドロス様の元へやって来た』『ダインズ家は全く関与していない』を強調するように念押しされている。
「それを信用しろというのか?」
「真実でございます」
「ふ~ん…」
またぎろりと睨まれ、震えあがった。
先ほどまで聞こえていた声とは違う声が聞こえてきた。
「やりすぎか…」
「はい、おふざけがすぎます。ユベール様、もう大丈夫です。目をお開けください」
震える僕の手を、温かいものが包み込んだ。
恐る恐る目を開けると、そこにはアレキサンドロス様とは別の方が僕のそばで膝をついていた。
「お初にお目にかかります。わたくしはアレキサンドロス様の執事をしています『ヒューゴ』と申します。怖い思いをさせてしまい、申し訳ございません」
そう言いながら、ヒューゴ様は僕の手をとると立ち上がらせた。
「ユベール様はダインズ伯爵家の方ではないとお見受けいたします。どうしてダインズ家の名前を名乗られているのですか?」
ゆっくりと落ち着いた声で話しかけられ、少しずつ落ち着きを取り戻す。
決められたセリフを、間違えることなく言わないと……。
「実は私は身寄りがなく孤児院で暮らしていましたが、ダインズ様のご好意で養子に迎え入れていただいたのです…」
ひとまず要点のひとつは言えた。
このままの調子でしけば、きちんと言えるかも。
肺がいっぱいになるぐらい、空気を吸い込み吐く。
「ご好意……ですか」
僕の気持ちとは裏腹に、ヒューゴ様は何か呆れた顔でアレキサンドロス様の方を見た。
「それでは聞こう。なぜお前はここに来た?俺は『ダインズ家に俺の側室になる娘を連れてこい』と言ったのだが」
少しイラだったアレキサンドロス様が威圧的に僕を見る。
緊張から喉も口の中もカラカラだ。それでも言わないといけない。これを言うために僕は[[rb:宮殿 > ここ]]に来たんだ。
「そ、それは…殿下の元へ側室として招かれたローズ様のことを私は羨ましく思い、私の一存でローズ様の代わりに殿下の元に…やってまいりました…」
何度も練習してきた台詞を、震える声で言った。
きちんと言えたのだろうか…。
自分の出来次第で孤児院の運命が決まり、不安がばがりが募る。
「それで来たのか?」
「はい」
「自分勝手な気持ちだけで、俺を欺いてまでか?俺がそれを許すと思ってのことか?」
「…。それでも私は…どうしても殿下にお会いしたくて…」
ぎろりと睨まれた。
「ま、誠に申し訳ございません!」
とっくに死を覚悟していたのに、アレキサンドロス様に睨まれただけで心底震え上がる。
「謝って済むことか?ダインズ伯爵は知ってのことか?」
「い、いえ!私の一存でしたこと。ダインズ家とは全く関係はございません」
きつく言われていたこと。
なにがあっても『僕の一存でアレキサンドロス様の元へやって来た』『ダインズ家は全く関与していない』を強調するように念押しされている。
「それを信用しろというのか?」
「真実でございます」
「ふ~ん…」
またぎろりと睨まれ、震えあがった。
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