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足枷
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『実に興味深い。"この状態"で俺の声が聞こえる人間に会ったのは君が初めてだよ。名前は?』
「カルミア・ロビンズ、です」
なんで敬語なんだろう。
「カルミア様、誰と喋ってるんですの?」
どうやら本当にターニャには、この声が聞こえないらしい。こんなにくっきり頭の中に語りかけてくるこの声が。
『よく見れば顔立ちも中々に良い。気に入った、カルミア。ーーお前、俺の伴侶になれ』
カルミアは耳を疑った。
「は、伴侶?」
伴侶ってなんだっけ。
確か一般的には配偶者だったり、結婚相手っていう意味だよな。
「どうしよう、ターニャ」
カルミアは身体中の空気が抜ける程、大きくため息を吐いて、ずるずると力なくしゃがみこんだ。自身の両ひざに顔を埋める。
「僕はてっきり魔族が召還されて、この足枷を解いてくれるとばかり思っていたのに。何故か喋るケット・シーが召還されてしまって、何故か伴侶にされそうになってる」
「カルミア様、意味がわかりませんわ」
『俺の国に招待しようカルミア。そのためにはこの枷が邪魔だな』
どんよりと途方に暮れていると、こちらの様子を伺うように佇んでいたケット・シーが動き出した。ケット・シーは、軽やかな足取りでカルミアに近付くと、カルミアの足枷にちょんっと鼻の先をくっつけた。
「え?」
するとパキリ、パキリ、と足枷の上下に縦ヒビが入り、それはやがて真ん中で繋がる。
足枷が真っ二つに割れ、ゴトッと重たい音を響かせて床に落ちた。
「なんで...」
ケット・シーはとてとてと可愛らしい足音を鳴らしながら、扉の方に歩みだした。
そしてしばらくすると立ち止まり、後ろを振り返った。
『何をしてる?行くぞ』
「...ターニャついていってみよう」
「え?え?」
カルミアは静かに立ち上がると、床に転がっていたリュックを掴み、その中にヨハンからの手紙と、ただの笛に変貌した魔笛を入れた。
そしてベッドの上からシーツを引っ張り出し、それを頭から被ると、勢いよく駆け出す。
ターニャも慌ててその後に続いた。
「カルミア・ロビンズ、です」
なんで敬語なんだろう。
「カルミア様、誰と喋ってるんですの?」
どうやら本当にターニャには、この声が聞こえないらしい。こんなにくっきり頭の中に語りかけてくるこの声が。
『よく見れば顔立ちも中々に良い。気に入った、カルミア。ーーお前、俺の伴侶になれ』
カルミアは耳を疑った。
「は、伴侶?」
伴侶ってなんだっけ。
確か一般的には配偶者だったり、結婚相手っていう意味だよな。
「どうしよう、ターニャ」
カルミアは身体中の空気が抜ける程、大きくため息を吐いて、ずるずると力なくしゃがみこんだ。自身の両ひざに顔を埋める。
「僕はてっきり魔族が召還されて、この足枷を解いてくれるとばかり思っていたのに。何故か喋るケット・シーが召還されてしまって、何故か伴侶にされそうになってる」
「カルミア様、意味がわかりませんわ」
『俺の国に招待しようカルミア。そのためにはこの枷が邪魔だな』
どんよりと途方に暮れていると、こちらの様子を伺うように佇んでいたケット・シーが動き出した。ケット・シーは、軽やかな足取りでカルミアに近付くと、カルミアの足枷にちょんっと鼻の先をくっつけた。
「え?」
するとパキリ、パキリ、と足枷の上下に縦ヒビが入り、それはやがて真ん中で繋がる。
足枷が真っ二つに割れ、ゴトッと重たい音を響かせて床に落ちた。
「なんで...」
ケット・シーはとてとてと可愛らしい足音を鳴らしながら、扉の方に歩みだした。
そしてしばらくすると立ち止まり、後ろを振り返った。
『何をしてる?行くぞ』
「...ターニャついていってみよう」
「え?え?」
カルミアは静かに立ち上がると、床に転がっていたリュックを掴み、その中にヨハンからの手紙と、ただの笛に変貌した魔笛を入れた。
そしてベッドの上からシーツを引っ張り出し、それを頭から被ると、勢いよく駆け出す。
ターニャも慌ててその後に続いた。
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