31 / 55
Ep2 友人とオーナーの章(10)
しおりを挟む◆◆◆
「!」
そしてその音を聞いたオーナーは驚きに身をすくませた。
携帯の着信音。
二階からだ。
かけてくるやつなんて一人しか思い浮かばない。
あいつが生きている。しかも携帯が通じるところにいる、それはオーナーにとって絶望でしかなかった。
そして状況はオーナーにとってさらに悪い方向に進み始めた。
あなたが立ち上がり、階段を上がり始めたのだ。
(マズい!)
何かしないと、その一心でオーナーも動き始めた。
しかし何をすればいいのか、なにをすべきなのか、思考の整理は出来なかった。
とにかく携帯をなんとかしよう、そう思ったオーナーは雪の坂を登った。
着信音が鳴り響く窓に手をかける。
だが、窓は開かなかった。
鍵がかかっている。当たり前だ。
腕力で開くものでは無い、ならば思いつく手は一つしか無かった。
斧を力任せに叩き付ける。
派手な音と共にガラスが飛び散る。
そしてオーナーは割れたガラスで体を切る危険性も無視して、中に入った。
携帯を掴んで外に出る。
その勢いのまま、オーナーは雪の坂をくだった。
それは本当に勢いだけの行動だった。
いま一階のほうに降りて良いのか、あいつが客室に入ってくるのかどうか耳をすましておくべきなのでは、そんな言葉が脳裏をよぎったが、その結論を出す思考力はいまのオーナーには無かった。
でも何かしなくては、そんな焦りだけがオーナーを突き動かしていた。
いや、もう直接対決するしかないのでは? そんな考えもあった。
オーナーはやけくそになりかけていた。
だからオーナーは窓から確認もせず、開いたままの玄関から中へと入った。
音は立てないほうがいい、鈍った頭でもそれだけは分かった。だからオーナーはそうした。
広間に入ったが誰もいない。
やはりあいつは客室に入ったのか? そんなことを考えながら階段のほうへと歩み寄る。
が、直後、オーナーはあなたを見つけた。
後ろ歩きで客室のドアを凝視しながら、ゆっくりと廊下を進むその背中を下から見つけることが出来た。
このまま背後を突く? いやだめだ。この階段は軋む。
鉢合わせになる前に身を隠さないと。
そう思ったオーナーはカーテンの裏に身を潜めた。
階段が軋む音が近づき、ソファーの上に腰を下ろした気配が耳に伝わる。
やるしかない、オーナーはそう思った。
これ以上のチャンスは無い、そう思ってオーナーは斧を振り上げた。
こうして、あなたと友人の物語は幕を閉じたのであった。
だから思う。
あの時こうしていれば、と。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる