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第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第十三話 女王再臨(2)
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◆◆◆
一方、アルフレッド達が目指しているその北では変化が起きていた。
銃という武器の評判と流通によって大陸は盛り上がっていた。
だが、ルイスが積極的に銃を民間におろしたわけでは無かった。
それは魔王軍を排除してからと決めていた。銃はまだ軍用のみであった。
が、現実はそうでは無かった。ヘルハルトが手に入れられたように。特に富裕層にとっては銃の入手はそれほど難しいものでは無かった。
ヘルハルトの場合は脅迫によるものだったが、金目当てに民間に売却する職人は少なくなかった。
しかし銃による市場の活発化とは対照的に、戦線は静かになっていった。
前線にある拠点や要塞の強化は着々と進んでいたが、配属されている兵士の数は双方ともに増えも減りもしていなかった。
前線では激しい戦いは起きていなかった。
大規模な戦闘が起きるときは軍勢が編成されるので確実に予兆がある。感知能力者が相手国内にスパイとして侵入している以上、その察知は難しくない。だからシャロン達は魔王に迎撃された。
感知能力者というエスパーが存在する以上、奇襲を成功させるには一工夫がいる。
キーラとオレグの軍勢である豹と熊の一族はその点で有利であった。
戦闘員のほぼ全員が体内での魔法使用に長けており、機動力に優れるからだ。
キーラとオレグはシャロン達の動きを察知した直後に行動を起こしていた。
シャロン達と魔王軍に付きまとうように、部隊をはりつかせていた。
しかしキーラは決して集団で行動させなかった。部隊を編成すれば高い確率で察知されるからだ。ゆえに単独行動を命じた。
単独行動によるデメリットは豹と熊の一族にはさしたる問題では無かった。機動力で勝るゆえに近づくも離れるも自由自在だからだ。攻撃を仕掛ける時は合図を出すだけでいい。食糧などの補給さえ受けられるのであれば、部隊で動く必要が無いのだ。
キーラはその強みを活かして兵站線の攻撃に注力させた。
ゆえに戦火は前線よりも内部側のほうが多かった。
しかしその戦火も下火になりつつあった。
道路の整備と銃の配備がさらに進んだためだ。
そして道路工事にあてられていた兵士達は再び前線に送られるのかと思っていたが、そうでは無かった。
ほとんどは農作業にあてられることになった。
これに多くの兵士達は肩透かしを食らったが、緊張感が消えることは無かった。
「いつでも前線に戻れるように備えておくべし」と部隊長から指示されたからだ。
決戦の時は確実に近づいているのだろう、その時に備えておくためなのだろう、兵士達はそう考えながら農機具を振るった。
兵士達の動きを見ていたスパイ達もそう思った。
大きな戦いが近づいている、そんな空気が静かな気配の中に充満していた。
それはまさに嵐の前の静けさであった。
一方、アルフレッド達が目指しているその北では変化が起きていた。
銃という武器の評判と流通によって大陸は盛り上がっていた。
だが、ルイスが積極的に銃を民間におろしたわけでは無かった。
それは魔王軍を排除してからと決めていた。銃はまだ軍用のみであった。
が、現実はそうでは無かった。ヘルハルトが手に入れられたように。特に富裕層にとっては銃の入手はそれほど難しいものでは無かった。
ヘルハルトの場合は脅迫によるものだったが、金目当てに民間に売却する職人は少なくなかった。
しかし銃による市場の活発化とは対照的に、戦線は静かになっていった。
前線にある拠点や要塞の強化は着々と進んでいたが、配属されている兵士の数は双方ともに増えも減りもしていなかった。
前線では激しい戦いは起きていなかった。
大規模な戦闘が起きるときは軍勢が編成されるので確実に予兆がある。感知能力者が相手国内にスパイとして侵入している以上、その察知は難しくない。だからシャロン達は魔王に迎撃された。
感知能力者というエスパーが存在する以上、奇襲を成功させるには一工夫がいる。
キーラとオレグの軍勢である豹と熊の一族はその点で有利であった。
戦闘員のほぼ全員が体内での魔法使用に長けており、機動力に優れるからだ。
キーラとオレグはシャロン達の動きを察知した直後に行動を起こしていた。
シャロン達と魔王軍に付きまとうように、部隊をはりつかせていた。
しかしキーラは決して集団で行動させなかった。部隊を編成すれば高い確率で察知されるからだ。ゆえに単独行動を命じた。
単独行動によるデメリットは豹と熊の一族にはさしたる問題では無かった。機動力で勝るゆえに近づくも離れるも自由自在だからだ。攻撃を仕掛ける時は合図を出すだけでいい。食糧などの補給さえ受けられるのであれば、部隊で動く必要が無いのだ。
キーラはその強みを活かして兵站線の攻撃に注力させた。
ゆえに戦火は前線よりも内部側のほうが多かった。
しかしその戦火も下火になりつつあった。
道路の整備と銃の配備がさらに進んだためだ。
そして道路工事にあてられていた兵士達は再び前線に送られるのかと思っていたが、そうでは無かった。
ほとんどは農作業にあてられることになった。
これに多くの兵士達は肩透かしを食らったが、緊張感が消えることは無かった。
「いつでも前線に戻れるように備えておくべし」と部隊長から指示されたからだ。
決戦の時は確実に近づいているのだろう、その時に備えておくためなのだろう、兵士達はそう考えながら農機具を振るった。
兵士達の動きを見ていたスパイ達もそう思った。
大きな戦いが近づいている、そんな空気が静かな気配の中に充満していた。
それはまさに嵐の前の静けさであった。
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