Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第二章 アリスは不思議の国にて待つ

第十四話 奇妙な再戦(7)

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   ◆◆◆

「……」

 後方にいるルイスはその戦いの様子を感じ取っていた。
 以前よりは接近戦でも戦えている。だが、やはり乱戦ではまだ分が悪いか、ルイスはそんな評価を下していた。
 近距離用の武装を真剣に考えてもいいかもしれない。

(そうだな……手をつけるとすればまずは――)

 威力と射程を伸ばすために銃身を長くしているが、接近戦が前提ならば切ってしまっていいだろう。こうすれば取り回しも良くなる。
 しかし問題は取り回しよりも連射性のほうだ。
 前よりはだいぶ短くなったが、それでも装填の間に敵に決定打を与えてしまっていることが多い。
 相手に好機を与えないほどの連射性能が必要だ。
 そのためには今の形ではダメだ。一発ずつ装填して発射するやり方ではどうにもならないだろう。
 やはり複数の弾薬を一度に装填できる形にしなければ。
 ナイフのような長さの銃身、手のひらにおさまる大きさ、それでその機構を実現するには――
 ルイスがそこまで考えた瞬間、突然周囲がどよめき始めた。
 ざわつくのも無理は無かった。
 オレグが「太った死神」と称したアレが、ルイスの頭上に降りてきたからだ。
 雲のようなそれはある高さで止まり、一本の糸を垂らし始めた。
 まるで蜘蛛のように。
 そして降りた糸は地上で紡がれ、一つの形を成した。
 それは人の形。
 その人形は生々しく、ルイスに向かって友人としての表情を作りながら口を開いた。

「……やっぱり落ち着かないねここは。感知能力者が多いから、じろじろ見られて困るよ」

 これにルイスは薄い笑みと共に言葉を返した。

「それでもここに来たってことは、お腹が空いて我慢できなくなったからか?」

 ルイスは冗談でそう言ったが、人形はその冗談に付き合わず、真剣な表情のまま答えた。

「確かに小腹が空いてるけども、そうじゃないよ。言わなくてもわかるだろう? アレを目にして黙っていられるわけがないじゃないか」
「じゃあ、アレはやっぱりそうなのか」
「……おいおいルイス、まさか、たまたま似てるだけだとでも思っていたのかい? そんなわけないじゃないか。こんな偶然は滅多にも無いよ」

 証拠が無ければ断言できないだろう、ルイスはそう言い返そうとしたが、人形は先手を取るように言葉を続けた。

「留守中に縄張りを荒らされたら困るから監視を置いておいたんだけど、そいつから報告があったんだ。だから僕は遠路はるばる戻ってきたのさ」
「監視は他に何か言っていたか? アレは俺達の知り合いの仕業なのか?」
「それを調べるために監視に追跡させたけども帰ってこなかった。それでも相手の縄張りの方向くらいは分かったよ」
「やっぱり南か?」

 人形は「うん」と頷いてから答えた。

「そいつは森のほうから来たみたいだ。たぶん相手はあの戦いの生き残りで、今までコツコツコソコソと準備してたんじゃないかな」

 ならば理由は復讐か? それともあの戦いの続きをやりたいだけ? ルイスは気になったが、いまはそれよりも聞くべきことがあった。

「アリスの本体と連絡は取れそうか?」

 これに人形は難しい顔をして口を開いた。

「……わからない。もう何体も使いを送ってるけども、誰も帰って来ない。周りがガチガチに固められていてね、侵入は難しいかもしれない」

 じゃあ直接見に行くしかないか、ルイスがそう思った直後、その心を読み取った人形は口を開いた。

「どうする? すぐに行くかい?」

 これに、ルイスは少し考えてから答えた。

「……魔王軍の中に既にやつらの『巣』が出来上がってるかもしれない。だから先にこっちを潰してからにしよう」

 これに人形は「そうだね」と同意し、元の糸に戻った。
 そして糸はするすると引き上げられ。雲の中に戻った。
 周囲の兵士達はその様子を凝視していた。
 ルイスも凝視されていた。
 ルイスへの評価は変わっていた。
 いったいこの人は何者なんだ、そんな思いが全ての視線に含まれていた。
 しかしルイスは気にせず、別のことを考えていた。
 それはやはりアリスのことだった。
 外部に救援の要請が出来ないほどに取り囲まれているのであれば、その状況がどれほど絶望的なものかは簡単に想像できた。
 おそらく、アリスはもうやられているだろう、あの木は相手に占拠されているだろうとルイスは思っていた。
 ルイスはその前提のもとに、次の相手との戦い方について思考を巡らせ始めていた。
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