154 / 545
第二章 アリスは不思議の国にて待つ
第十四話 奇妙な再戦(7)
しおりを挟む
◆◆◆
「……」
後方にいるルイスはその戦いの様子を感じ取っていた。
以前よりは接近戦でも戦えている。だが、やはり乱戦ではまだ分が悪いか、ルイスはそんな評価を下していた。
近距離用の武装を真剣に考えてもいいかもしれない。
(そうだな……手をつけるとすればまずは――)
威力と射程を伸ばすために銃身を長くしているが、接近戦が前提ならば切ってしまっていいだろう。こうすれば取り回しも良くなる。
しかし問題は取り回しよりも連射性のほうだ。
前よりはだいぶ短くなったが、それでも装填の間に敵に決定打を与えてしまっていることが多い。
相手に好機を与えないほどの連射性能が必要だ。
そのためには今の形ではダメだ。一発ずつ装填して発射するやり方ではどうにもならないだろう。
やはり複数の弾薬を一度に装填できる形にしなければ。
ナイフのような長さの銃身、手のひらにおさまる大きさ、それでその機構を実現するには――
ルイスがそこまで考えた瞬間、突然周囲がどよめき始めた。
ざわつくのも無理は無かった。
オレグが「太った死神」と称したアレが、ルイスの頭上に降りてきたからだ。
雲のようなそれはある高さで止まり、一本の糸を垂らし始めた。
まるで蜘蛛のように。
そして降りた糸は地上で紡がれ、一つの形を成した。
それは人の形。
その人形は生々しく、ルイスに向かって友人としての表情を作りながら口を開いた。
「……やっぱり落ち着かないねここは。感知能力者が多いから、じろじろ見られて困るよ」
これにルイスは薄い笑みと共に言葉を返した。
「それでもここに来たってことは、お腹が空いて我慢できなくなったからか?」
ルイスは冗談でそう言ったが、人形はその冗談に付き合わず、真剣な表情のまま答えた。
「確かに小腹が空いてるけども、そうじゃないよ。言わなくてもわかるだろう? アレを目にして黙っていられるわけがないじゃないか」
「じゃあ、アレはやっぱりそうなのか」
「……おいおいルイス、まさか、たまたま似てるだけだとでも思っていたのかい? そんなわけないじゃないか。こんな偶然は滅多にも無いよ」
証拠が無ければ断言できないだろう、ルイスはそう言い返そうとしたが、人形は先手を取るように言葉を続けた。
「留守中に縄張りを荒らされたら困るから監視を置いておいたんだけど、そいつから報告があったんだ。だから僕は遠路はるばる戻ってきたのさ」
「監視は他に何か言っていたか? アレは俺達の知り合いの仕業なのか?」
「それを調べるために監視に追跡させたけども帰ってこなかった。それでも相手の縄張りの方向くらいは分かったよ」
「やっぱり南か?」
人形は「うん」と頷いてから答えた。
「そいつは森のほうから来たみたいだ。たぶん相手はあの戦いの生き残りで、今までコツコツコソコソと準備してたんじゃないかな」
ならば理由は復讐か? それともあの戦いの続きをやりたいだけ? ルイスは気になったが、いまはそれよりも聞くべきことがあった。
「アリスの本体と連絡は取れそうか?」
これに人形は難しい顔をして口を開いた。
「……わからない。もう何体も使いを送ってるけども、誰も帰って来ない。周りがガチガチに固められていてね、侵入は難しいかもしれない」
じゃあ直接見に行くしかないか、ルイスがそう思った直後、その心を読み取った人形は口を開いた。
「どうする? すぐに行くかい?」
これに、ルイスは少し考えてから答えた。
「……魔王軍の中に既にやつらの『巣』が出来上がってるかもしれない。だから先にこっちを潰してからにしよう」
これに人形は「そうだね」と同意し、元の糸に戻った。
そして糸はするすると引き上げられ。雲の中に戻った。
周囲の兵士達はその様子を凝視していた。
ルイスも凝視されていた。
ルイスへの評価は変わっていた。
いったいこの人は何者なんだ、そんな思いが全ての視線に含まれていた。
しかしルイスは気にせず、別のことを考えていた。
それはやはりアリスのことだった。
外部に救援の要請が出来ないほどに取り囲まれているのであれば、その状況がどれほど絶望的なものかは簡単に想像できた。
おそらく、アリスはもうやられているだろう、あの木は相手に占拠されているだろうとルイスは思っていた。
ルイスはその前提のもとに、次の相手との戦い方について思考を巡らせ始めていた。
「……」
後方にいるルイスはその戦いの様子を感じ取っていた。
以前よりは接近戦でも戦えている。だが、やはり乱戦ではまだ分が悪いか、ルイスはそんな評価を下していた。
近距離用の武装を真剣に考えてもいいかもしれない。
(そうだな……手をつけるとすればまずは――)
威力と射程を伸ばすために銃身を長くしているが、接近戦が前提ならば切ってしまっていいだろう。こうすれば取り回しも良くなる。
しかし問題は取り回しよりも連射性のほうだ。
前よりはだいぶ短くなったが、それでも装填の間に敵に決定打を与えてしまっていることが多い。
相手に好機を与えないほどの連射性能が必要だ。
そのためには今の形ではダメだ。一発ずつ装填して発射するやり方ではどうにもならないだろう。
やはり複数の弾薬を一度に装填できる形にしなければ。
ナイフのような長さの銃身、手のひらにおさまる大きさ、それでその機構を実現するには――
ルイスがそこまで考えた瞬間、突然周囲がどよめき始めた。
ざわつくのも無理は無かった。
オレグが「太った死神」と称したアレが、ルイスの頭上に降りてきたからだ。
雲のようなそれはある高さで止まり、一本の糸を垂らし始めた。
まるで蜘蛛のように。
そして降りた糸は地上で紡がれ、一つの形を成した。
それは人の形。
その人形は生々しく、ルイスに向かって友人としての表情を作りながら口を開いた。
「……やっぱり落ち着かないねここは。感知能力者が多いから、じろじろ見られて困るよ」
これにルイスは薄い笑みと共に言葉を返した。
「それでもここに来たってことは、お腹が空いて我慢できなくなったからか?」
ルイスは冗談でそう言ったが、人形はその冗談に付き合わず、真剣な表情のまま答えた。
「確かに小腹が空いてるけども、そうじゃないよ。言わなくてもわかるだろう? アレを目にして黙っていられるわけがないじゃないか」
「じゃあ、アレはやっぱりそうなのか」
「……おいおいルイス、まさか、たまたま似てるだけだとでも思っていたのかい? そんなわけないじゃないか。こんな偶然は滅多にも無いよ」
証拠が無ければ断言できないだろう、ルイスはそう言い返そうとしたが、人形は先手を取るように言葉を続けた。
「留守中に縄張りを荒らされたら困るから監視を置いておいたんだけど、そいつから報告があったんだ。だから僕は遠路はるばる戻ってきたのさ」
「監視は他に何か言っていたか? アレは俺達の知り合いの仕業なのか?」
「それを調べるために監視に追跡させたけども帰ってこなかった。それでも相手の縄張りの方向くらいは分かったよ」
「やっぱり南か?」
人形は「うん」と頷いてから答えた。
「そいつは森のほうから来たみたいだ。たぶん相手はあの戦いの生き残りで、今までコツコツコソコソと準備してたんじゃないかな」
ならば理由は復讐か? それともあの戦いの続きをやりたいだけ? ルイスは気になったが、いまはそれよりも聞くべきことがあった。
「アリスの本体と連絡は取れそうか?」
これに人形は難しい顔をして口を開いた。
「……わからない。もう何体も使いを送ってるけども、誰も帰って来ない。周りがガチガチに固められていてね、侵入は難しいかもしれない」
じゃあ直接見に行くしかないか、ルイスがそう思った直後、その心を読み取った人形は口を開いた。
「どうする? すぐに行くかい?」
これに、ルイスは少し考えてから答えた。
「……魔王軍の中に既にやつらの『巣』が出来上がってるかもしれない。だから先にこっちを潰してからにしよう」
これに人形は「そうだね」と同意し、元の糸に戻った。
そして糸はするすると引き上げられ。雲の中に戻った。
周囲の兵士達はその様子を凝視していた。
ルイスも凝視されていた。
ルイスへの評価は変わっていた。
いったいこの人は何者なんだ、そんな思いが全ての視線に含まれていた。
しかしルイスは気にせず、別のことを考えていた。
それはやはりアリスのことだった。
外部に救援の要請が出来ないほどに取り囲まれているのであれば、その状況がどれほど絶望的なものかは簡単に想像できた。
おそらく、アリスはもうやられているだろう、あの木は相手に占拠されているだろうとルイスは思っていた。
ルイスはその前提のもとに、次の相手との戦い方について思考を巡らせ始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】瑠璃色の薬草師
シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。
絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。
持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。
しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。
これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。
婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。
絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。
王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。
最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。
私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。
えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない?
私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。
というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。
小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。
pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。
【改稿版について】
コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。
ですが……改稿する必要はなかったようです。
おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。
なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。
小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。
よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。
※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。
・一人目(ヒロイン)
✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前)
◯リアーナ・ニクラス(変更後)
・二人目(鍛冶屋)
✕デリー(変更前)
◯ドミニク(変更後)
・三人目(お針子)
✕ゲレ(変更前)
◯ゲルダ(変更後)
※下記二人の一人称を変更
へーウィットの一人称→✕僕◯俺
アルドリックの一人称→✕私◯僕
※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。
【完結】黒の花嫁/白の花嫁
あまぞらりゅう
恋愛
秋葉は「千年に一人」の霊力を持つ少女で、幼い頃に龍神――白龍の花嫁として選ばれていた。
だが、双子の妹の春菜の命を救うために、その霊力を代償として失ってしまう。
しかも、秋葉の力は全て春菜へと移り、花嫁の座まで奪われてしまった。
それ以来、家族から「無能」と蔑まれながらも、秋葉は失われた力を取り戻すために静かに鍛錬を続けていた。
そして五年後、白龍と春菜の婚礼の日。
秋葉はついに霊力が戻らず、一縷の望みも消えてしまった。
絶望の淵に立つ彼女の前に、ひとりの青年が現れる。
「余りもの同士、仲良くやろうや」
彼もまた、龍神――黒龍だった。
★ザマァは軽めです!
★後半にバトル描写が若干あります!
★他サイト様にも投稿しています!
【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~
かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。
望んで召喚などしたわけでもない。
ただ、落ちただけ。
異世界から落ちて来た落ち人。
それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。
望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。
だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど……
中に男が混じっている!?
帰りたいと、それだけを望む者も居る。
護衛騎士という名の監視もつけられて……
でも、私はもう大切な人は作らない。
どうせ、無くしてしまうのだから。
異世界に落ちた五人。
五人が五人共、色々な思わくもあり……
だけれど、私はただ流れに流され……
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる