Iron Maiden Queen

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神

第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(21)

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 それはまさにナチャが予想した通りの攻撃であった。
 異常に小さい虫で目標の周りを霧のように包んでおき、仕掛ける時に集結させていたのだ。
 そして脳内に侵入したナイアラの虫は目的の位置で合体し、回路を組む。
 その攻撃の結果の大半は論理思考の異常という形で表れる。判断が狂うのだ。
 しかし攻撃の時間は数瞬。
 合体した虫が作る回路自体は見える大きさなので感知できるが、常に脳内の攻撃個所を予測して監視していなければならない。 
 よって注意していても気づくのは攻撃されたあとになるのが大半。
 バークはこの一連の攻撃を集合の段階で感じ取っていた。
 そしてバークには予想できていた。
 なぜなら、

(やはり、私と同じ小さな虫の使い手だったか)

 似たような能力の持ち主であることに気づいていたからだ。
 精霊の組み方に同じ特徴があった。
 それは、小さな虫では大きなものを押せない、運べないという当たり前の欠点から生じるもの。
 運搬や工作能力を有する大きな個体を組めば解決するが、それだと隠密能力が消える。
 だから小さいという利点を生かしたまま組もうとすると、最初から終わりまで順番に組むことになる。
 その工程は液体がなめらかに盛り上がるように見えるのだ。
 ナイアラの精霊の組み方にも同じ特徴があった。だから基本の集合形が液体のような状態だ。
 だが、似ていても互角では無かった。

(しかしなんて小ささだ。私の虫からでも砂粒にすら見えない)

 だから集合の開始まで反応できなかった。
 霧がまとわりついてきた、そんな感じだった。
 普段は霧にすら感じられない。今はわからない。
 だから常に仕掛けられた時のために備えておく必要がある。
 そして、奴はこちらの虫の性能を警戒している様子。

(このままにらみ合いが続いてくれれば良し……!)

 そこまで考えた直後、バークの足元から「ポタリ」という音が鳴った。

「っ!」

 マズい! バークはそんな心の声を響かせないように隠した。
 なぜなら、立っているだけでやっとだからだ。
 落ちたのは血であった。
 バークの体は海に落ちたゆえに濡れている。それでごまかせていると祈るしか無かった。
 まともに戦える状態では無い。
 左の二の腕と左胸、そして左わき腹には穴が開いている。それを隠すために右を前に出した真半身の構え。
 左の肺は撃ち抜かれている。もう血がたまっている。呼吸の際に血の音がしないように注意しなければならない有様。
 他人の家から拝借したコートで穴は隠せているが、血の染みがいつ表面に浮き上がってきてもおかしくない。
 さらに左腕と左肩は先の体当たりを仕掛ける際の爆発で折れた。
 右の太ももにも穴が開いているが、これは裏側。前からは見えない。
 布でしめつけるという簡単な止血はしているが、血は少しずつ失われている。
 気を抜くだけで倒れそうな状態。
 だからあのとき失敗した。
 本当は高所から飛び降りると同時に体当たりを仕掛けるつもりだった。
 しかし外した。跳躍を失敗した。だから奴の真後ろに着地するだけになってしまったのだ。
 だが、それでも『この頼まれごとくらいはできる』、そう思ってバークはこの場に戻ってきたのだ。
 気づくなよ――バークは心の声を抑えながらそう祈り続けていたが、

「貴様、立っているのがやっとだな?」
 
 ナイアラはそれを見逃すほど甘い敵では無かった。

「死ね! このくたばりぞこないがぁっ!」 
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