390 / 545
第四章 偽りの象徴。偽りの信仰。そして偽りの神
第二十三話 偶然と気まぐれと運命の収束点(21)
しおりを挟む
それはまさにナチャが予想した通りの攻撃であった。
異常に小さい虫で目標の周りを霧のように包んでおき、仕掛ける時に集結させていたのだ。
そして脳内に侵入したナイアラの虫は目的の位置で合体し、回路を組む。
その攻撃の結果の大半は論理思考の異常という形で表れる。判断が狂うのだ。
しかし攻撃の時間は数瞬。
合体した虫が作る回路自体は見える大きさなので感知できるが、常に脳内の攻撃個所を予測して監視していなければならない。
よって注意していても気づくのは攻撃されたあとになるのが大半。
バークはこの一連の攻撃を集合の段階で感じ取っていた。
そしてバークには予想できていた。
なぜなら、
(やはり、私と同じ小さな虫の使い手だったか)
似たような能力の持ち主であることに気づいていたからだ。
精霊の組み方に同じ特徴があった。
それは、小さな虫では大きなものを押せない、運べないという当たり前の欠点から生じるもの。
運搬や工作能力を有する大きな個体を組めば解決するが、それだと隠密能力が消える。
だから小さいという利点を生かしたまま組もうとすると、最初から終わりまで順番に組むことになる。
その工程は液体がなめらかに盛り上がるように見えるのだ。
ナイアラの精霊の組み方にも同じ特徴があった。だから基本の集合形が液体のような状態だ。
だが、似ていても互角では無かった。
(しかしなんて小ささだ。私の虫からでも砂粒にすら見えない)
だから集合の開始まで反応できなかった。
霧がまとわりついてきた、そんな感じだった。
普段は霧にすら感じられない。今はわからない。
だから常に仕掛けられた時のために備えておく必要がある。
そして、奴はこちらの虫の性能を警戒している様子。
(このままにらみ合いが続いてくれれば良し……!)
そこまで考えた直後、バークの足元から「ポタリ」という音が鳴った。
「っ!」
マズい! バークはそんな心の声を響かせないように隠した。
なぜなら、立っているだけでやっとだからだ。
落ちたのは血であった。
バークの体は海に落ちたゆえに濡れている。それでごまかせていると祈るしか無かった。
まともに戦える状態では無い。
左の二の腕と左胸、そして左わき腹には穴が開いている。それを隠すために右を前に出した真半身の構え。
左の肺は撃ち抜かれている。もう血がたまっている。呼吸の際に血の音がしないように注意しなければならない有様。
他人の家から拝借したコートで穴は隠せているが、血の染みがいつ表面に浮き上がってきてもおかしくない。
さらに左腕と左肩は先の体当たりを仕掛ける際の爆発で折れた。
右の太ももにも穴が開いているが、これは裏側。前からは見えない。
布でしめつけるという簡単な止血はしているが、血は少しずつ失われている。
気を抜くだけで倒れそうな状態。
だからあのとき失敗した。
本当は高所から飛び降りると同時に体当たりを仕掛けるつもりだった。
しかし外した。跳躍を失敗した。だから奴の真後ろに着地するだけになってしまったのだ。
だが、それでも『この頼まれごとくらいはできる』、そう思ってバークはこの場に戻ってきたのだ。
気づくなよ――バークは心の声を抑えながらそう祈り続けていたが、
「貴様、立っているのがやっとだな?」
ナイアラはそれを見逃すほど甘い敵では無かった。
「死ね! このくたばりぞこないがぁっ!」
異常に小さい虫で目標の周りを霧のように包んでおき、仕掛ける時に集結させていたのだ。
そして脳内に侵入したナイアラの虫は目的の位置で合体し、回路を組む。
その攻撃の結果の大半は論理思考の異常という形で表れる。判断が狂うのだ。
しかし攻撃の時間は数瞬。
合体した虫が作る回路自体は見える大きさなので感知できるが、常に脳内の攻撃個所を予測して監視していなければならない。
よって注意していても気づくのは攻撃されたあとになるのが大半。
バークはこの一連の攻撃を集合の段階で感じ取っていた。
そしてバークには予想できていた。
なぜなら、
(やはり、私と同じ小さな虫の使い手だったか)
似たような能力の持ち主であることに気づいていたからだ。
精霊の組み方に同じ特徴があった。
それは、小さな虫では大きなものを押せない、運べないという当たり前の欠点から生じるもの。
運搬や工作能力を有する大きな個体を組めば解決するが、それだと隠密能力が消える。
だから小さいという利点を生かしたまま組もうとすると、最初から終わりまで順番に組むことになる。
その工程は液体がなめらかに盛り上がるように見えるのだ。
ナイアラの精霊の組み方にも同じ特徴があった。だから基本の集合形が液体のような状態だ。
だが、似ていても互角では無かった。
(しかしなんて小ささだ。私の虫からでも砂粒にすら見えない)
だから集合の開始まで反応できなかった。
霧がまとわりついてきた、そんな感じだった。
普段は霧にすら感じられない。今はわからない。
だから常に仕掛けられた時のために備えておく必要がある。
そして、奴はこちらの虫の性能を警戒している様子。
(このままにらみ合いが続いてくれれば良し……!)
そこまで考えた直後、バークの足元から「ポタリ」という音が鳴った。
「っ!」
マズい! バークはそんな心の声を響かせないように隠した。
なぜなら、立っているだけでやっとだからだ。
落ちたのは血であった。
バークの体は海に落ちたゆえに濡れている。それでごまかせていると祈るしか無かった。
まともに戦える状態では無い。
左の二の腕と左胸、そして左わき腹には穴が開いている。それを隠すために右を前に出した真半身の構え。
左の肺は撃ち抜かれている。もう血がたまっている。呼吸の際に血の音がしないように注意しなければならない有様。
他人の家から拝借したコートで穴は隠せているが、血の染みがいつ表面に浮き上がってきてもおかしくない。
さらに左腕と左肩は先の体当たりを仕掛ける際の爆発で折れた。
右の太ももにも穴が開いているが、これは裏側。前からは見えない。
布でしめつけるという簡単な止血はしているが、血は少しずつ失われている。
気を抜くだけで倒れそうな状態。
だからあのとき失敗した。
本当は高所から飛び降りると同時に体当たりを仕掛けるつもりだった。
しかし外した。跳躍を失敗した。だから奴の真後ろに着地するだけになってしまったのだ。
だが、それでも『この頼まれごとくらいはできる』、そう思ってバークはこの場に戻ってきたのだ。
気づくなよ――バークは心の声を抑えながらそう祈り続けていたが、
「貴様、立っているのがやっとだな?」
ナイアラはそれを見逃すほど甘い敵では無かった。
「死ね! このくたばりぞこないがぁっ!」
0
あなたにおすすめの小説
王女と2人の誘拐犯~囚われのセリーナ~
Masa&G
ファンタジー
王女セリーナが連れ去られた。犯人は、貧しい村出身の二人の男。だが、彼らの瞳にあったのは憎しみではなく――痛みだった。
閉ざされた小屋で、セリーナは知る。彼らが抱える“事情”と、王国が見落としてきた現実に。
恐怖、怒り、そして理解。交わるはずのなかった三人の心が、やがて静かに溶け合っていく。
「助けてあげて」。母の残した言葉を胸に、セリーナは自らの“選択”を迫られる。
――これは、王女として生きる前に、人としての答えを、彼女は見つけにいく。
【完結】黒の花嫁/白の花嫁
あまぞらりゅう
恋愛
秋葉は「千年に一人」の霊力を持つ少女で、幼い頃に龍神――白龍の花嫁として選ばれていた。
だが、双子の妹の春菜の命を救うために、その霊力を代償として失ってしまう。
しかも、秋葉の力は全て春菜へと移り、花嫁の座まで奪われてしまった。
それ以来、家族から「無能」と蔑まれながらも、秋葉は失われた力を取り戻すために静かに鍛錬を続けていた。
そして五年後、白龍と春菜の婚礼の日。
秋葉はついに霊力が戻らず、一縷の望みも消えてしまった。
絶望の淵に立つ彼女の前に、ひとりの青年が現れる。
「余りもの同士、仲良くやろうや」
彼もまた、龍神――黒龍だった。
★ザマァは軽めです!
★後半にバトル描写が若干あります!
★他サイト様にも投稿しています!
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました
珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。
そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。
同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる